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2010.10.16
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カテゴリ:教育

kawanobu日記/「理系が収入が低くて出世が遅い」という定説は間違いだった! 理系への勧め 画像1

 

kawanobu日記/「理系が収入が低くて出世が遅い」という定説は間違いだった! 理系への勧め 画像2

 世の中で広く信じられている定説とは、実際には当てにならないものだ。例えば「理系学部卒業者は文系学部卒業者よりも収入が低くて損だ」というのも、その例の1つだ。これは、根拠のない俗説だった。経済学者で、教育と経済に関心の深い西村和雄・京大経済研究所特任教授(写真上)が、理系と文系の卒業者の年収を実際に調べ、通説に反して実際は理系学部卒業者の方が高年収だったことを確認したのだ。

◎バブル経済時代、金融業界では35歳で年収1000万円ほどだった
 4年前、「工学部が不人気?」というテーマでブログ日記を書き、理系は文系より待遇面で恵まれず、大学院修了者も製造業にエンジニアとして勤めるよりは金融機関に就職した方がずっといいと書いた者として、不明を恥じるとともに、本日記で俗説荷担した内容の一部を訂正するものとしたい。
 西村氏の調査結果は、9月20日付日経新聞朝刊「教育」欄で読んだのだが、そもそもなぜそのような「定説」が出来たのかの謎解きから始まる。その「定説」は、私も抱いていた印象と同じである。
 西村氏によると、80年代後半のバブル経済期、絶好調に沸く金融業界で35歳で平均年収1000万円程度だったのに対し、製造業界は600万円程度だったという。これが一般化して、「文系卒は理系卒より得」という認識が広く広がったという。実際、私もそう感じていた。

◎「定説」き業種の格差を誤解したもの
 ここで脇道に逸れて、個人的体験を書く。薬学部出身の私は、学部で終えて大学院に進学せず、他業界に就職した。女子学生はほとんど進学しなかったが、男子学生は7割方、大学院に進学した中で、はっきり言えば私は落ちこぼれに近い。
 数年後、大学院修士課程を修了して製薬企業の研究職に就いた友人と給料を比較したら、学部卒の私の方が多かった。
 そうした個人的体験からも、「定説」を疑わなかったのだが、西村氏によると、どうやらそれは理系、文系の差ではなく、金融業界と製造業、私の業界と製薬業界という業種間の格差なのだという。
 また大企業の社長などの経営陣に理系出身者が少ない(から出世の点でも損)というのも、業種の違いによるらしい。IT関連では理系出身者が多数を占めるという。

◎理系卒の年収は全年齢で文系を上回る
 さて西村氏と共同研究者は、その「定説」を確かめるべく、08年6月に大学卒業者を無作為抽出して調べたという。手法は、インターネットを使って予備調査で約9万人のサンプルに配信した上で、大卒者6870人を無作為に選び、うち2152人から有効回答を得た。さらに分析には、回答に欠損がない1632人に絞り込んだ。
 その結果は、文系学部卒業者(平均41.11歳)の平均年収が583万円だったのに対し、理系学部卒業者(同41.05歳)のそれは681万円だった(写真下。理系卒の方が約100万円も多かったのだ。
 なお西村氏らは、以前、私立3大学の文系学部卒業者のうち入試で数学を選択したか否かで平均年収を調査し、数学選択者の方が有意に高収入だったことを示した。データの信頼性を確認するために、今回も文系学部卒業者のうち数学選択の有無でも年収を調べると、今回も数学選択者の方が100万円以上も多かった。したがって上記の結果も、信頼性に問題はないことになる。

◎入学難易度が低くても理系は優位
 さらに今回の調査では、出身大学を入学難易度の高い順にA、B、Cと3グループに分け、理系、文系の差も分析してみた。
 すると、当然ながら入学難易度の高いAグループが高年収となったが、同一グループ内でも年収ではやはり理系優位であったのだ。つまりグループAの理系学部卒業者が最も高年収で、グループBの理系はグループAの文系数学未受験者を全年齢で上回った。60歳の定年時点では、入試で数学を受験したグループAの文系卒業者すら上回ったという。
 難易度の最も低いグループCですら同傾向で、やはり理系卒の年収はグループBの数学未受験者を55歳以下の全年齢で上回った。
 ノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北大名誉教授は、受賞の弁で最近の若者の理系離れを憂えたが、この結果を知れば、そして全国の高校生に周知されれば、杞憂ということになる(問題は、そのことが知られておらず、相変わらず理系は低収入で出世も遅いと思われていることなのだが)。

◎理系卒は就職先に限らず人生の幅が広がる
 もちろん大学進学は、収入だけが目的ではない。しかし将来、どれだけ窮乏しない暮らしができるかは進学選びの大きなインセンティブになる。
 それに西村氏らの調査が明示した結果は、理系の方が選択肢が広く就職口が得やすいこと(文系出身者は製造業の研究職には絶対に就けないが、理系なら相対的高収入の金融機関でも重宝されるなど)、より高い収入を目指して転職もしやすいことなどの要因があると分析している。
 入試で数学受験者の方が未受験者より全面的に高収入だったのは、やはり就職先の選択の幅が広がることと教養面でのフィールドの広さの結果なのだろう。
 理系出身者として、この調査結果を読んで実に壮快な読後感を感じた。中・高校生の理科離れは、将来の職業の選択の幅を狭め、超円高のもと企業の海外移転の進む中、就職口さえ得られないリスクを高め、就職できても低収入に甘んじる愚かな逃避なのである。
 これから進学先を考える中学生、高校生を身内・親類に持つ方は、この日記を手掛かりに日経新聞の当該記事を図書館で探し出し、コピーしてぜひ読んでいただきたい
 未来の幅が広くなることは、人生において絶対に有利であるのは論を俟たない。理系進学しても、文学や歴史、政治、経済は独学で学べる!(西村氏自身、農学部卒である)





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Last updated  2010.10.16 05:36:20



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