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カテゴリ:教育
世界的に峠を越えた武漢肺炎パンデミックだが、世界各国の社会に深い傷跡を残した。 日本ではまだ検証されていないが、世界最多の感染者を出したアメリカでは、経済に大きな痛手を与えた。そして、その立ち直りが急だったために、今、世界の最大の焦点となっているアメリカ金利の急騰、それに伴うドル独歩高が起こっている。 ◎急速なインフレ その引き金を引いたのが、異常なほどの失業率低下と急激な需要増加であった。武漢肺炎で毎日何十万人もの感染者が出ていた時、人々はひたすら巣ごもりに徹した。バイデン政権も、国民への直接の給付金支給を2度までも行った。また被雇用者への手厚い給付も行った。巣ごもりで、被雇用者への手厚い給付、国民全員の給付金支給となれば、支出が抑えられるから、過剰貯蓄が積み上がる。 武漢肺炎の下火で、この過剰貯蓄が動き出し、需要に火が付いた。そのうえ、被雇用者の労働復帰が遅れた。インフレが起こるのは、しかたがない。 ここに昨年からの原油高・資源高・食料高がシンクロし、インフレが昂進、FRBのハイペースの利上げとなったわけだ。 ◎武漢肺炎で学校が閉鎖され さて、目立たないが、一部の研究者から、不安をもって指摘されているのが、子どもたちの教育面へのしわ寄せである。 2020年秋、政府や各州は、ロックダウンを解除し、人々は職場や酒場に繰り出したのに、多くは学校の対面授業を再開しなかった。 大人たちはバーやレストランに繰り出し、飲食を楽しんだのに、子どもたちはオンライン授業を強いられた。しかし特に低学歴層・低所得層にとって、オンライン授業とは実質、全く授業を受けていない状態だった。彼らには、オンライン授業のバックグラウンドが無かったから、教育の機会から放置されたのである(写真)。 人ごとではない、と僕は思った。赤貧洗うが如しだった母子家庭で育った僕が、今のアメリカに置かれていたら、間違いなく学校教育を閉ざされていただろうからだ。 ◎深刻な学力低下 その結果は、明白な学力低下となって現れた。9月初めに発表された全米学力調査で、9歳児の算数と読解力が劇的に低下していることが分かった。22年の算数の点数は、20年を下回った。学力は社会の努力で年と共に少しずつ伸びていたのに、学力調査の50年の歴史で初めての減少となった。読解力に至っては、最近約30年間の中で最大の減少幅で、いずれも04年の水準を下回った。 そして予想されたように、学校の休校によるオンライン授業で、最も打撃を受けたのが成績の悪い層だった。成績が下位10%の生徒の算数の減少幅は、上位10%の4倍にも達したのだ。読解では、低下幅は5倍になった。成績の悪い生徒とは、すなわち家庭環境が恵まれず、世帯収入も低く、そのためにオンライン授業の基盤の無い家庭の子どもたちだ。将来、この子たちが成人となった時、豊かな世帯、すなわち成績の良かった層との格差は広がるだろう。 ◎将来の収入減も 事実上、学校教育を1~2年受けられなかった貧困家庭の子どもたちは、将来の収入源を甘受せざるを得ない。統計からの推定によると、学校教育を1年間受けられないと、勤労者の収入は10年で少なくとも4万ドル(約580万円)も減少するという。 大学進学者数も減った。ある研究では、武漢肺炎禍でコミュニティカレッジ(日本の短大に相当)に進学した高卒者は16%、4年制大学への進学者は6%減少した。この減少となった多くが、低所得層であることは推定できる。世帯主が非大卒者である家庭の収入は、世帯主が大卒の家庭の収入の約2分の1だからだ(写真=究極の貧困層であるホームレス)。 この災禍を埋めるには、6月からの夏休みを7月からに短縮し、土曜日も開校し、平日の授業時間1~2時間も増やすしかない。 ところが、それが実現できていない。 ◎教職員組合が学力回復の癌 癌となっているのは、日本と同じように教職員組合だ。組合は、新型ワクチンや治療薬が広く普及した後でさえ、公立学校の教師が仕事に復帰するのは危険だと主張し続けた。今は、労働過重を訴えるのだろう。 彼らリベラルはことあるごとに貧困と格差の存在を問題視し、格差是正を主張する。しかし、その舌の根も乾かぬうちに、自らのエゴのために実は貧困と格差を拡大させているのだ。 昨年の今日の日記:「スターリニスト中国が日本の新幹線規格での計画を横取りしたインドネシア高速鉄道計画、大幅建設遅れにコスト膨張の悲惨」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202110210000/
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Last updated
2022.10.21 05:28:28
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