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2023.05.26
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カテゴリ:旅行紀行
 外国人墓地は、実は函館以外にも、横浜と軽井沢で訪れたことがある。

​◎開港直後はキリスト教は禁教​
​ 横浜に外国人墓地があるのは、明治期の開港地だったから、当然だ。軽井沢は、冷房の無い時代の東京で、冷涼な地で育った外国人外交官・商人たちが避暑地に軽井沢を選んだから、それもまた当然かもしれない。船便もろくにない明治期、死者の遺体を祖国になかなか送還できなかったから、死没地に埋葬するしかなかった(写真=軽井沢の外国人墓地、2010年8月撮影)。



 各国との和親条約締結で下田と並んで開港地となった箱館にも、外国人墓地が設けられた。明治初期までキリスト教は禁教だったから、既存の仏教寺院には墓を作れなかったのだ。

​◎青い海が望め永遠の眠りにつくのに最適の一等地​
​ ロシア人墓地の次は、プロテスタント墓地だ(写真)。​



 安政元年(1854年)のペリーの箱館来港時に船上で亡くなって葬られたアメリカ軍水兵だという。その後、アメリカ人ばかりでなく、ドイツ人、デンマーク人、イギリス人の墓など、40基あるという。
 でも、青い函館湾を望める墓地は、永遠の眠りの場としては一等地だ。僕は、電チャリを置いて、しばしプロテスタント墓地を眺めていた。

​◎北辺の警備に動員された南部藩兵​
​ プロテスタント墓地の脇には、外国人ではない、「南部藩士の墓地」もあった(写真)。​



 南部藩は、前に5月10日付日記「函館の旅(7):山野草の花と杉並木の函館山の登山」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305100000/でも触れたが、蝦夷地が近いということもあって、津軽藩とともに寛政11年(1799年)から幕府より蝦夷地警備の任を命じられた。一時は、600人もの藩兵が蝦夷地に派遣されていた。その派遣地は、根室といった道東ばかりか、遠く国後、択捉の南千島にまで及んだ。
 文化4(1807)年4月には、津軽藩と共に南部藩兵の守備・駐屯していた択捉島のシャナに、ロシア艦の襲撃があり(シャナ事件と呼ばれる)、火器で劣る守備隊はなすところなく敗退している。文化露寇(ぶんかろこう)である(20年1月5日付日記:「樺太紀行(番外編);幕末の樺太探検家で世界で最初に間宮海峡を発見し、樺太地図を制作した間宮林蔵①:択捉島の屈辱」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202001050000/を参照)。

​◎厳冬の地で死者が続出​
 ロシア兵との戦闘では、争って逃げたから大した死傷者は出さなかったと思うが、敵は南部藩領(今の岩手県が主体)よりはるかに厳しい冬の寒さであった。
 ろくな防寒服も持たず、また耐寒設備もない小屋程度の兵舎で、北辺警備を命じられた藩兵に大量の死者が出た。
 こうした悲劇は、戊辰戦争が東北地方にまで及び、国元警備のため帰藩した明治元年(1868年)まで続く。この間、異境の地の蝦夷地で無くなった藩兵は、それぞれの死地で簡単に葬られたが、1937年(昭和12年)に盛岡出身の函館在住者有志がここに墓を集めて葬り、慰霊碑を建てたという。それでもここに葬られている藩兵の墓は、12基しかない。蝦夷地で没した藩兵の数%だろう。
 墓地は、手入れが行き届かないのか、プロテスタント墓地と対照的に草が伸びていた。
(この項、続く)

昨年の今日の日記:「ロシアの在ジュネーブ国連外交官がプーチンを名指しでウクライナ侵略を非難して辞職・亡命」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202205260000/​





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Last updated  2023.05.26 04:12:15



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