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2023.07.09
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カテゴリ:現代史



 昨今、はやりのSDGs(持続可能な開発目標)、聞こえが良いせいか、企業、大学、研究所などで高く目標に掲げられる。

​◎厳しい自然人の生活、文明との接触は大きな悲劇を生んだ​
 それ自体、いいことだから、文句のつけようがないが、中には自然状態で暮らしてきた先史人を理想化した言い方が、僕には気になる。もし先史人が、冒頭のSDGsを言い立てる人たちに何か言えるとしたら、「とんでもない」、「買いかぶりもいいとこ」と言い切るだろう。
 自然状態で暮らしていくことは厳しく、実際に先史時代さながらの生活をしていた自然民族が文明社会と接触すると、時には文明社会から暴力的に攻撃され、あるいは文明社会のもたらした伝染病に感染し(野生人は免疫を持たない)、大きく人口を減らしたり絶滅したりしたが、辛うじて生き残った人たちは、文明社会に取り込まれて暮らすようになる。ただ、文明社会で生きていく術の教育も技術も持たないから、ほとんど「保護」されて生きることになるが。

​◎「獲り過ぎない」、「余すところなく使う」は本当か​
 最近、ある文で、野生人が「食糧資源を獲り過ぎない」、「得た食物は余すところなく使う」と理想化されて書かれていたが、書いた人は民族誌や生態人類学、考古学を知らない人なのだろう。
 現代世界には、氷河期を生きた多様な大型動物(マンモス、マストドン、ケサイ、オオツノジカ、オオナマケモノなどなど)は悉く絶滅して見られない。イエローストーン国立公園を中心にバイソンが生き残っているが、旧石器時代には、さらにこれとし別に大型2種のバイソンもいた。
 これらは、氷河期末の環境変動が原因の1つと考えられるが、この頃、北米大平原に姿を現した人類=クロヴィスハンターが絶滅に追いやったというのが、最も有力な仮説だ。

​◎北米のあちこちに大量のバイソンを追い落とした遺跡​
​ 北米大平原には、群れで爆走するバイソンの生態を利用し、先史インディアンが断崖上からバイソンを追い落とした遺跡がいくつもある。例えば、世界遺産にもなっているカナダ・アルバータ州の「ヘッド・スマッシュト・イン・バッファロー・ジャンプ」(写真)は有名だ。崖から追い落とされたバイソンは、脚を折ったりしてほとんど助からなかった。



 あまりに大量のバイソンを一挙に捕獲する「追い落とし」作戦では、多くの肉は利用されず、腐敗するにまかされるか、オオカミ、コヨーテなどの死肉動物漁り屋の食物になった。

​◎ウマの追い落とし猟、旧石器フランスのソリュートレ遺跡​
 こうした追い落とし猟は、フランスでも2万年前頃のソリュートレ遺跡(ソリュートレ文化のタイプサイト)でも行われた。ここでの標的はウマで、群れを追い落としたため、累々とした骨が残された(想像図)。​



 その数から、ソリュートレ人が資源を無駄なく使い切ったとはとうてい思われない。ちなみにウマは、北米では氷河期末の大型動物大絶滅期に、ユーラシアでももう少し後に大半が絶滅し、現生のウマは、その中から家畜化されて辛うじて生き残った個体の子孫である。
 かつての平原インディアンのように、狩ったバイソンの肉を「ペミカン」という保存食に利用した例はあるが、それはずっと後世の話だ。

​◎エピオルニス、モアを絶滅させた島に渡来した人類​
 さらに、これもずっと後世の話だが、マダガスカル島にかつて棲んだ巨鳥エピオルニス(走鳥類)も、1500年前にボルネオ島南部から渡ってきた人類集団が島に植民すると、瞬く間に絶滅した。巨大なキツネザルも、同じ運命をたどった(17年10月8日付日記:「絶滅した巨鳥の悲哀(上);史上最大の鳥、その名も象鳥、マダガスカル島のエピオルニスは巨鳥ゆえに滅ぶ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710080000/を参照)。
 ニュージーランドの別の巨鳥モア(走鳥類)も、やって来た最初の植民者のマオリによって絶滅させられた。マオリは、そこにいた多種多様のモアを狩り、彼らが到来した700年前頃から150年から200年で悉く狩り尽くして絶滅させた(17年10月9日付日記:「絶滅した巨鳥の悲哀(下);ニュージーランドの巨大モア、観たのは剥製のみ;生きたジャイアントモアを観たかった」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710090000/を参照;写真と絵写真は南島クイーンズタウン、ワカティプ湖畔に建つモアの像)。​​







​◎飢餓に瀕すれば人肉嗜食も​
 そもそも旧石器人や後世の自然人は、環境収容力の範囲でしか人口を増やせなかった。それ以上増えれば、あぶれた者たちは新天地に向けで出て行くか、嬰児を殺して人口調節が行われた。
 それでも、時には獲物が捕れず、飢饉に瀕したこともある。アメリカ中西部、Mancos Valley に暮らしていた900年頃の先史インディアンのアナサジ文化人は、飢餓の時にカニバリズム(人肉嗜食)を行っていた。遺跡から出る20数体分の人骨は、他の獣骨と同じような割られ方をしていた。
 つい最近も、科学誌で145万年前のヒト族が人肉嗜食をしていた痕の検出が報告された(7月7日付日記:「人類が人間を食べた最古の痕跡確認、半世紀以上前にトゥルカナ湖東岸で発見のオコテ層出土ヒト族脛骨で」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202307070000/)。

​◎自然人には絶対になりたくない!​
 ちなみにSDGsで理想化される自然人と僕が暮らすか、と問われたら、「絶対に嫌!」と拒否する。文明社会の怠惰な生活に慣れきってしまっているから、狩猟採集で生計を得るなんて、とうてい無理と確信するからだ。

昨年の今日の日記:「追悼、安倍元首相の急逝を心から悼んで」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207090000/​







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Last updated  2023.07.09 05:16:36



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