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2024.09.16
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カテゴリ:人類学


​​ 今ではラパ・ヌイと言うようだが、モアイ像で有名なイースター島は絶海の孤島だ(下の上の写真=モアイ像、下の下の写真=イースター島衛星画像)。ここに北西のマルケサス諸島から人類が渡ってきたのは紀元1200年頃だ。​​





​◎エコサイド仮説の検証と南米大陸との遺伝子交流の是非​
 今、イースター島には森が全く無い。花粉分析では、ヨーロッパ人到達以前には深い森林があったことが推定されているが、そこには放置されたり倒壊したりするモアイ像が残るだけだ。17世紀を最後に、モアイ像は建造されなくなったのだ。
 有名な博物学者ジャレッド・ダイアモンドは、巨大石造モアイ像を製造し、海岸に運搬するため大量の木材を消費してしまい、島全体から森が消え、つれて食料となる野生動物もいなくなり、やがて部族抗争が起きて人口が激減、人肉食が起きるほど文明は後退したと述べている(20年11月29日付日記:「イースター島原住民はモアイ像を運ぶためにヤシの木を過剰伐採し、文明崩壊に至ったのか:ダイアモンド博士への反説」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202011290000/を参照)。
 これが、有名な「エコサイド(深刻な環境破壊をもたらした人類の大規模な不法・違法行為)」説だ。著名なダイヤモンドの提唱もあり、環境破壊を警告する有力な提言として有名になった。

​◎人類遺伝学者らが古代ラパ・ヌイ人ゲノムを解析​
 しかしその後、島を覆っていたチリサケヤシの木が、イースターへの先住民の植民に伴い、故意か意図せざるかは分からないが連れてきたネズミがチリサケヤシの実を食害して森が無くなったという反論も出された。
 イースター島の人類史については、これまで2つの大きな論争が交わされてきた。1つは、上述の深刻な環境破壊を示す「エコサイド」説、2つめが18世紀のヨーロッパ人との接触以前に南米大陸から太平洋を越えての人類移動があったかどうかだ。
​ デンマーク、コペンハーゲン大の J.ヴィクトル・モレノ=メイヤー(Víctor Moreno-Mayar)ら国際研究チームは、1670年~1950年と推定されるラパ・ヌイ人15個体の古代全ゲノムを解析し、その成果を英科学誌『ネイチャー』24年9月12日号(写真)で報告した。


​◎白人到来以前の人口崩壊はなく、米先住民と交配していた​
 研究の結果、通説にあるような一時1万5000人にも膨張したラパ・ヌイ人口は、森林伐採や動物相の破壊といった「エコサイド」や部族間戦争、カニバリズムなどによる人口崩壊は起こらず、緩やかな人口増が維持されていたという。1722年のヨーロッパ人の到来、そして1860年代のペルー人による島民の大規模な「奴隷狩り」(一説に1500人もペルーに拉致されたという)で、人口は初めて減少した、と推定している。
 また2つめの問題について、研究チームは、1850年以降のヨーロッパ人との混血前にラパ・ヌイ人がヨーロッパ人到来以前の1250〜1430年に、アメリカ先住民と交配していた証拠も発見している。東ポリネシアと南米大陸の間に、先史時代、遺伝的交流のあったもう1つの証拠である(23年10月15日付日記:「広大な太平洋を縦横に舟で駆け抜けたポリネシア人は南米にも到達していた」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202310150000/を参照)

昨年の今日の日記:「新大陸文明を支えた唯一の主食トウモロコシ、その巨大パワー(後編):逆移入のメソアメリカで大巨石建造物建設を支える」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202309160000/​






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Last updated  2024.09.16 05:01:28



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