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カテゴリ:生物学
ニュージーランド沖の深海で、幽霊のようなサメの新種が発見された。 幽霊のようなサメとは、世界中の海に生息する原始的な魚ギンザメのことで、「ラットフィッシュ(ネズミ魚)」、「エレファントフィッシュ(ゾウ魚)」、「ラビットフィッシュ(ウサギ魚)」など、様々な別名を持つ。 今回発見された新種は、英語では「オーストララシア・ナロー・ノーズ・スプークフィッシュ」と名付けられた。論文は、今年8月の学術誌「Environmental Biology of Fishes」に発表された。 ◎「キモ可愛い」魚 大きな丸い目、とがった鼻、翼のようなひれを持つギンザメ(写真)は、幽霊というより「キモ可愛い」魚だが、深海に暮らしているため、ほとんど解明が進んでいない。 しかし無人潜水機(ROV)などの新技術のおかげで過去20年間に、既知のギンザメ59種のうち27種もが発見されている。そのうち3種は2024年に発見されたばかりで、前記のスプークフィッシュはその1つだ。 今回の研究を率いたの1人は、見つかったニュージーランド周辺に生息するギンザメ(写真)は世界中に広く分布しているとされる種ではなく、固有種ではないかと考えていた。 そして標本を詳しく調べ、DNA解析した結果、やはり新種で、ハリオッタ・アヴィア(Harriotta avia)と命名された。ハリオッタはラテン語でアズマギンザメ属、アヴィアは祖母を意味する。 ◎ギリシャ神話に登場する怪獣「キメラ」の異名も 確かにギンザメは、「生きた化石」とも呼ぶべき古い魚類だ。約3億7500万年前の石炭紀に登場したいう。石炭紀は、軟骨魚類のサメが進化した時代でもある。 そして当時の化石は、現存するギンザメとそっくりなのだ。 ただその名と裏腹に、ギンザメは普通のサメとは遠い関係にある。しかし滑らかな皮膚や軟骨の骨格はサメとの共通点だ。オスはクラスパー(交尾器)でメスの体内に精子を送り込み、メスは卵嚢を産み付ける。 奇妙な外見から、ギンザメはキメラとも呼ばれている。キメラはギリシャ神話に登場する怪物で、ライオンの頭とヤギの胴体、ヘビの尾を持つ(写真=アレッツォのキメラ、青銅製、紀元前400年頃)。 ◎ほとんど分かっていない生態 ギンザメは、深海に生息しているため、生態はほとんど分かっていない。 ギンザメについて分かっていることは、今回の発見のきっかけとなった深海底でのROVの映像と飼育下にある3種の観察で得られた情報だけだという。現在飼育中なのは、スポッテドラットフィッシュ(Hydrolagus colliei)、ゾウギンザメ(Callorhinchus milii)、ケープエレファントフィッシュ(Callorhinchus capensis)だ。 ◎背びれの前方に鋭いとげ、人に刺さった報告も ギンザメは海底の食物連鎖では主要な種である可能性が高い。捕食者として彼らは、カニや軟体動物、タコといった海底の生物をくちばしのような歯で狩っている。また、ヒョウアザラシなどの大型動物にとっては獲物でもある。 ただし、ギンザメは簡単に捕食できる獲物ではない。背びれの前方に、大きく鋭いとげがあるためだ。 捕食者がとげに刺されたという記録がいくつかあり、それには人間も含まれている。 ただギンザメは、ふだんは深海にいるから、人間と接触する機会はあまり無いことが救いだ。 昨年の今日の日記:「福井の旅(8):恐竜博物館の壮大な恐竜骨格群、その数50体!」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202311140000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.11.14 05:34:51
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