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テーマ:最近観た映画。(39365)
カテゴリ:その他
アカデミー賞の候補に上がってからずっと映画Oppenheimerを観たいと思っていた。最近ようやくまとまった時間が確保できて映画を観ることができた。鬼才Christopher Nolan氏の最高傑作とも噂されるOppenheimerは期待を裏切らない作品に仕上がっていた。原爆被害の描写が現実と離れすぎているという批判がすでに出ているが、これは原爆の生みの親であるOppenheimerの半生に迫る作品である。マンハッタン計画(Manhattan Project)の舞台裏とその後の開発者たちを取り巻く人間模様が主に描かれているため、原爆被害に関する過度な演出をあえて避けたのではないかと思われる。私は地球上で唯一原爆の被害に遭っている「日本人」だからこそアメリカの視点でどのように原爆が作られて、どのような経緯で日本に投下されたのかその一端を知るべきだと思う。原爆被害を受けた日本の立場からすると勿論ショッキングなシーンも含まれているが、戦後80年が経ち戦争の記憶が薄れていく中でそこから目を背けてはいけないような気がする。 Nolan監督が指揮を務めたInception(2010)、Instersteller(2014)といった作品は全てストーリープロットが複雑で非常に難解なイメージがある。今回も3時間近くの超大作ととなっていて正直1度見ただけでは何が起きているのか把握しきれなかった。日本公開が3月29日でまだ約三週間ほど時間がある。このブログでは「予習編」、「あらすじと個人的な評価」の2本だけでお届けしたい。ちなみに「あらすじと個人的な評価」はネタバレも含まれているため、是非映画を視聴するまではご覧いただかないようにしてほしい。オチを知ってしまうと当日の感動が半減してしまうからだ。 まずこの映画はOppenheimerという物理化学者の伝記である。予めお伝えしておきたいのはこの映画は”Fission(分裂)”と”Fusion(融合)”という2部で構成されていることだ。Fissionではカラー映像で描かれ主人公Oppenheimerの一人称的な視点で描かれる。原爆開発後に浮上した共産主義思想に基づくスパイ疑惑に対する取り調べの様子が描かれる。それに対しFusionはLewis Strauss(原爆開発後のAtomic Energy Comissionの所長でOppenheimerをアドバイザーに任命する)の視点から上院での聴取の様子が描かれている。白黒映像とカラー映像で複雑に状況や時系列が変化するのでここについていかないと話についていけなくなってしまう。 あと、もう一つ大前提として押さえておいてほしいのはこの主人公であるOppenheimerはユダヤ系アメリカ人であるということだ。そして第二次世界大戦中にユダヤ人を厳しく弾圧したナチス政権とその主導者であるヒトラーがアメリカの敵であったという構図である。Oppenheimerがハーバード大学、イギリスのケンブリッジ大学で学んだ後にドイツの大学で量子物理学を学んでいることもポイントだ。ドイツが最初から嫌いだったらわざわざ博士課程をドイツで取得しないだろう。第二次世界大戦とナチス政権による支配によってドイツや共産主義に対する考えが変化していったと思われる。第二次大戦時、日本は日独伊三国同盟を組んでいたため、Oppenheimerの視点からすれば日本もドイツ同様敵対国となる。常に居場所を追いやられ世界各地で弾圧され続けてきたユダヤ人の歴史を踏まえないとこの映画はいまいち理解できない。 第二次世界大戦と資本主義と共産主義の対立構造、アインシュタインの相対性理論及び量子物理学がFusion(融合)した結果、宇宙を巻き込んだ壮大なスケールで描かれる究極の文理融合映画が誕生した。 天才的科学者アルバートアインシュタインと映画中にも登場するサンスクリットで書かれたインドの聖典「バガバッド・ギーター」の一節も映画の鍵を握る。是非以下のリンクを一読の上で映画館に足を運んでほしい。映画に深みが出ることは間違いない。 ↓リンク↓ American Center Japan: 核兵器のない世界ーはじめに この映画は世界を滅ぼすほどの兵器を持った人類が核と今後どう向き合うべきか問い続けている。衝撃の話題作が3月29日以降日本でどう受け入れられるかが気になる。オッペンハイマーは第二次世界大戦をテーマにした映画部門、自伝映画部門で歴代最高興行収入を記録しているという。Christopher Nolan監督のファンであればきっと心に刺さるはずだ。大迫力のテクノミュージックと映像を劇場でご覧いただきたい。
画像引用元:オッペンハイマーオフィシャルサイト お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.11 14:11:53
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