「赤い砂塵を巻き上げてヘッドスライディングだ！赤い砂塵を巻き上げて２塁ベースに!」これは元巨人で足のスペシャリストして主に守備走塁要因として在籍していた栄村忠弘外野手の応援テーマである。

札幌ドームが出来る前の札幌円山球場で球界に激震が走る大事件が起きてから早いものでもう３０年の月日が経っている。当時開催されていたのは巨人ＶＳ中日の札幌シリーズで事件は８回表の中日の攻撃中に起こった。

当時中日の捕手だった中尾孝義（後に西本聖・加茂川との交換トレードで巨人に移籍）の打ち上げた左中間への打球を補給しようとダイビングキャッチを試みた吉村禎章と栄村忠広の両外野手が激突して両者とも斃れ込んで担架で病院に搬送された吉村は脚の靱帯損傷の大怪我で再起不能かとも思われた。

札幌の悲劇と言われた吉村と栄村の外野フライを追っての激突は主軸打者へと期待されていた吉村が起き上がれずに担架で病院に搬送されて、一方の控えで代走守備要員だった栄村は軽傷でその試合終了まで守備をこなした。

この不運な激突事故に付いて巨人ファンの中からもクリーンアップを期待された吉村を控え守備要員の栄村が・・・等の吉村は被害者・栄村は加害者といった間違った論調で栄村に非を押し付けてまるで罪人扱いの様に世間の声は栄村を責め立ててその結果彼は巨人を離れてオリックスへ移籍する事となってしまった。

確かに主軸打者として期待された吉村が再起不能と思われた重症を負ってしまった無念の気持ちは同じ巨人ファンとして理解は出来るのだが、だからと言ってもう一人の当事者である栄村を罪人扱いするのはおかしいと思うし間違っていると思う。

一部の感情に任せた吉村は被害者というiish意識が捻じ曲がって栄村を悪者扱いした人達に言いたい！「栄村のどこが悪いんや！一所懸命な努力で１郡で使ってもらえる戦力になった栄村の積み上げた苦労を知らんのに一方的に罪人扱いするな！」「栄村がどれだけ頑張って這い上がって来たんかあんた等知ってんのか！」

ＰＬ学園からドラフトで指名を受けて将来の主軸打者との期待があった吉村に比べてテスト生から足の速さをウリに「足のスペシャリスト」として頭角を現してスイッチヒッターに転向して、当初の守備走塁要員だったのが打撃面でも向上してようやく1軍の試合にも起用されるようになって、この日の試合でも守備固めで起用されてたまたま左中間に上がった打球を自分の守備範囲と思って一所懸命に捕球しようとダイビングしたところが同じ打球を補給しようと追っていた吉村と激突したのである。

激突して重傷を負ったのが主軸打者として期待されていた吉村であった為に一部の心無い輩によって栄村を誹謗中傷する暴言が横行したが、この激突に付いては後に当事者である吉村が栄村と再会した折に「気にするな。」と言葉を掛けていて当人は恨み言の一言も言っていないというのに、個人的に許せないのは（最近そういう事をやっていたのを知って）４コマ漫画で知られワイドショー等でコメンテーターも務める眼鏡の某漫画家が当時、栄村の背番号６６をもじって「オーメン」だのと茶化す様なコメントを発していたと知ってその某漫画家を軽蔑する様になった。

もし激突で吉村が軽傷で栄村が重症だったら一体どうだったのか？多分吉村が軽傷で良かったとなって栄村には不運な控え選手という風に扱われたのかと疑問に思う。共に自分の守備範囲と判断して打球を捕ろうと一所懸命にダイビングキャッチを試みた栄村を加害者扱いして攻め立てるのは間違っているし彼を酷評した者達は一度でも栄村の立場に自らを置き換えて「もし自分自身が栄村の立場だったら」と考えるべきである。

巨人を追われる様な形で対談となった栄村は当時巨人OBだった土井正三が監督だったオリックスへ移ったものの、レフトの守備でスタメン出場が１度あっただけで１シーズンで退団して以降はひっそりと暮らしていた様である。長い年月を経て昨年になってテレビ局の仲介もあって再会を果たして吉村に謝罪の言葉を述べた栄村に対して吉村は気にしなくていいと応じていたのを観てホッとしたと共に、今迄散々栄村を罪人扱いして罵倒していた連中に一言言いたい！「必死になって打球を捕ろうと一所懸命やった栄村を悪者扱いするのは止めろ！彼もプレイに真剣やったんや！」

「主軸打者の期待が大きかった吉村に激突して負傷させたという理由で栄村を悪者扱いするのは大間違いや！栄村は打球を捕ろうと一所懸命になってただけや！」