平熱の高さ
直感が鋭いのか、考えるのが面倒なのか、よ~く一目惚れするタイプである。人に限らず、本(作家)、映画(監督、俳優)、音楽、土地、ファッション、スタイル、言語・・・それぞれのジャンルで少なくとも5つは一目惚れした名を挙げられる。そんな私の「一目惚れリスト」に一番新しく加わったのが、バンド「相対性理論」。シフォン主義 / 相対性理論ネットで見かけて「どれどれ?」と調べてみたらズボッとはまった。まるで罠にかけられたウサギかキツネかイノシシか。バンドのHP(即、音が出ます)で「Loveずっきゅん」視聴版を聞いてから、あの独特な脱力ロリータボイスとそれに絡むようなちょっと固めのエレキギター、巧みに計算された言葉遊びが忘れられず、中毒状態。全部聴きたい、今すぐ聴きたい。とYoutubeに飛び込み、3曲をヘビーローテーション。元々自分の好きな音楽に関しては偏狭的に「ヘビロテ」をする偏食家なので、一人でいる昼間に何百回も聴いた。もしこの音が漏れ聞こえた近所の人は、気が狂ったに違いないほど。今のところ、苦情も気が狂いそうな気配の人もいないので、たぶん聞こえていなかったのだろう。ハイファイ新書/相対性理論アマゾンからの発送を待っている間に、Youtubeでその前身ボーイズバンドの解散コンサートまで見てしまうほどの入れ込みよう。これ、一般の個人が相手ならかなりストーキング入ってる。ネットって便利だけど、怖いよね。でも、相手がバンドという複数人の集合体なので、それほどヤバイ事にならずに、むしろ「ヘタウマと言われるが、本当は素晴らしい表現者」といわれる、やくしまるえつこをボーカルに据えたことであのバンドが成功したことを実感するまで理解が深まった。彼女のボーカルは椎名林檎(彼女も気になっていたけど、あまり知らないので、一緒に買ってみた)と比べられることが多い。これ買ってみた。東京事変(椎名林檎) CD【大人(アダルト)】通常盤どちらも数曲しか知らないまま言っているので誤解があるかもしれないが、温度が違う。断然、椎名林檎の方が熱い。これはStudio Voice7月号に誰かが書いていたけど、歌を作る人と表現者が同一人物であるか、別人であるかというのが違いも確かにあるかもしれないが、それだけではないような気がする。単純に人種と言うか性格の違いが、このアツさの違いなのだと思う。相対性理論は掴みどころのない高校生ぐらいの熱。バブルの頃、マラカスを振りながら♪ここ、ここ、ここがいいのよ~、あなたのそばが~♪とやる気なさそうに歌っていた家電製品のCMがかなり近いアツさというか冷め方だと思う。ちなみに家族からはそれを歌う若い女性が私と似てると評判だった。そんなに人生、気だるく感じていた訳ではないのだが、時代か、流行か、その年齢に特有の症状なのかもしれない。相対性理論には、「平熱36.2度」という歌詞がある。とすると椎名林檎の平熱は36.7分位だろうか。違いを引き立たせているのは温度だけではなく、粘度。椎名林檎の「二人の間にもし何かあったら化けてでてやるぜ」という、いわば六条御息所的ネットリ感と相対性理論の「それは残念だけど、仕方ないよね」という明石の上的スンナリ感。それはまるで、内田春菊の「波乱万丈繁殖系」VS酒井順子の「サラサラ少子系」ぐらい違う。世代の違いか、作り手の意識の違いか、シチュエーションの違いか、いや、きっと年代の違い。1978年生まれ、30代の椎名と、たぶん20代前半、多めに見積もっても半ばのやくしまるせつこ。そして椎名と同列にさえ出来ない私はそんなにアンニュイにして世をはかないでも、もうカッコつく年じゃないのだろう。まだ相対性理論の全部の曲を聴き込んでいないが、私が一番好きな曲は「地獄先生」に違いないと思われる。このすっとぼけた言葉遊び、PVの訳わかんない萌え具合、そしてシチュエーション。ずっきゅんというよりはズッドンと入ってきた。でも、PVの面白さは「Loveずっきゅん」の方が数段上だ。「私、まだ女子高生でいたいよ~」という気持ちは20年たった今でも持っているし、あの頃のことを思い出したり、その設定の夢を見たりするだけで、簡単に心だけは時を超えている。でもカラダは時間も空間も越えられずに、岡村靖幸に「今夜君のヒップが何で出来ているか、パパやママや皆に教えてあげる」なんて囁かれて、反射的に「きゃー、ヤメテ!!」と叫ぶのは、みずみずしい恥じらいではなく、アンタに言われなくてもセルライトが主成分を占めることぐらい、既にもう知っているから。そんな自分を鏡に映して冷静に見つめて、今日もため息とともに絶望的な現実をつぶやく。「私、まだ女子高生でいたかったよ」そんな私のリアルな平熱は36.50分。奇しくも及川光博が歌う「かけがえのない36度5分のぬくもり」にドンピシャ。そうか、ミッチー、やっぱりあなたが一番近いんだね。お手数をおかけしますが、コメント・感想は目次ブログにお願いします。