『地図になかった世界』
エドワード・P・ジョーンズ(小澤英実訳)『地図になかった世界』白水社、2011年。 歴史を題材にした小説。史書ではない。もっとも、(史実に基づく)史書と言われる著作物でも、創作物である。それを言い出したら、話はややこしいことになる。やめよう。 淡々と、多くのひとびとの日々が描かれる。「起こったこと」に対する判断を、作者は記さない。判断は、読み手の役割として残される。 この作品に対してネット上には、かなり好意的な評があるが、私の、今回―初めて―読んだ後の感想は、「ふつう(五段階評価の三)」である。ピューリッツァー賞受賞という評判(情報)があったから入手したのであったが、期待外れであった。 なお、本書とは関係ない話であるが、かの『ジミーの世界』が、フィクションとして公刊されていたならば、賞の返上という事態にはならなかったのではないかな、とも思った。