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カテゴリ:食べ物シリーズ
【10月26日・火曜日】 もう、2週間ほど前の13日のことになるが、リハビリの帰りに久々に刺身でも食べようという気になった。クリニックから近い巨大マーケット、レアル・マーザスに寄って魚売り場に行くと、チュプラ(石鯛)のフィレットが3尾分、きれいに皮をむかれてパックに詰められ、ピンクの肉のところどころが銀色に光っているのが見えた。 すでにパックになっているので、これなら手間もかからず切るだけですぐに食べられる、と、迷いもなくそれを買うことにした。 「生で食べても大丈夫でしょうね」と念を押すと、若い店員は「もちろんですとも」と大きく首を振りながら言った。 ところがまもなく、奥から年かさの店員が出てきて、 「お客様、これは朝工場で処理されてパック詰めで来るのですが、保存剤にパックの中にガスを注入するんです。ところがガスが多すぎたのか、ラップが膨らんでいるので取り替えようと思ったら、ガス臭くて食用にふさわしくありません。もしよろしければ、そちらの氷の上のチュプラを捌いてフィレットにしますが、どうでしょうか?」 アッラー(神様)、と私は思った。なんと正直な店員さんだろう。 「よく言ってくれましたね。ではそうしてくださいな」 トルコの魚屋は、捕れたてのイワシや小アジなど新鮮なものを山のようにテプシ(平たい丸桶)に積み上げ、客が買うと下のほうにシャベルを突っ込んで魚を取り出し、袋に詰める。 家でボウルにあけてみると、あれほど新鮮に見えたイワシのほとんどが、目は真っ赤、はらわたが飛び出している、昨日の残りものだったりして、「やられた!」と悔しい思いをさせられることがある。 料理屋をやっていたので魚にはうるさい私は注意深く買うが、それでもしっかり詰めるときに見ていないと、だまされることがあるのだ。 その店員達は正直だったから助かったが、悪気はなくとも気づかずに、パックで買ったお客にはガス臭いのをそのまま袋に詰めて渡してしまうことが十分考えられる。 氷の上に並べられていたチュプラの中から、大きくて目の色がくっきりしているものを選び、下ろして貰うように頼んだ。 家に帰り着くと、先に着いていたレイラが「チュプラの刺身」と聞いて目を輝かせた。 私が夏場のほとんどを留守にしていたし、リハビリをしていてもキュタヒヤだ、エスキシェヒールだと出かけていたので、家で刺身など長いこと出来なかったからだ。 その晩の食事は、正直な店員のおかげで気分もよく、松前漬けを作ったりブロッコリーを茹でたり鯛汁も拵えて豪華版となった。 久々に刺身と副菜も豊かな食卓、レイラはホクホク レイラが私の作ったうどんで腹痛を起こしたのなんのと騒いだのはそれよりもあとの21日のことだった。(実際は自分が持ち込んで私に内緒で食べた激辛韓国ラーメンのせい) ところが、面白いことが起こった。 私がブログに「レイラが一番大きなネコだ。砂箱掃除でも手伝え~」と書いたのを読んだわけでもないはずなのに、どうした風の吹き回しか、あの次の日から、毎晩来ると黙って砂箱の掃除をしたり、食べたあと皿や茶碗を洗ってくれるようになった。 めでたし、めでたし。 「チュクルジュマ猫会」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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