|
カテゴリ:チュクルジュマ界隈のこと、または猫ばなし
【5月17日・土曜日】 わが家のあるチュクルジュマ48番地のウルガズ・アパルトマンの入り口階の右手には、ブラック・ウスタのショウルームがある。このショウルームは、数年前までおよそ25年間、持ち主が住むでもなく、貸すでもなく、シャッターを下ろしたまま、ネズミやいたちの巣になっていたのだった。 ブラック・ウスタは10年あまり前から、改築のためにイスタンブールの古い木造の民家が解体され、太い梁や柱、天井の飾り板、彫刻のある扉などが薪にされるのを、あまりにもったいないと思い、これを生かした家具を拵えようと考えていたようだ。 ショウルームの外見。チュクルジュマ通り48番地、うちと同じです。 ショウルームの中。古木材を生かした家具がいっぱい 椅子やテーブルや種々の商品が出番を待っています。 古木材の再利用は、同じ頃トルコでもエコロジカルな意識が高まってきたこともあり、次第に注目を集めるようになって、去年チュクルジュマ通りに続くボアズケセン通りでも1軒店開きした。あちらこちらで天然木の再利用をみんなが真剣に考え出したと言うことになる。 トルコでは何かがはやるとたちまち同業者が増え、共倒れになりそうな気がするが、やはり最初に手掛けたところにパイオニアの利があり、インターネットの普及とも相まって、かなり遠方からも注文が入って来るようになったそうである。 この月曜日(5月12日)、外猫の餌を早めに配ろうと下に下りてゆくと、ブラック・ウスタがショウルームの前で、長いテーブル状の板にせっせとニスを塗っているところだった。通りを挟んだアトリエの脇の道路にはもう2つ3つのテーブルに助手の大工見習い達がやすりをかけているところだった。 長いテーブル状の板は、バーのカウンターになるのだそうだ。 高いカウンターの前に腰かけるには、こんな椅子です。 低いテーブル、四角い柱をそのまま切ったのを腰かけ椅子にする。 とてもカラフルなので、ボドルムにぴったり 「ウスタ、いま大急ぎで餌を配ったらデジカメを持ってくるから写真を撮らせてよ」と言うと、ウスタは顔の下半分を覆う濃いひげに覆われた口元をほころばせて、「どうぞ、加瀬ハヌム」と答えた。 いま手掛けているのは、地中海沿いのリゾート地、ボドルムにこの6月からオープンするバーのカウンターやテーブルで、20日くらいまでに納品するのだそうだ。 既に看板も出来上がっていて、店の名前は「Şaşkın シャシュクン(おどろき)」、これも分厚い板にアルファベットを書き、それを1センチくらいの深さにくり抜いてあるのだった。 おしゃれな看板。とてもセンスがいいと思う。 ブラック・ウスタのお父さんが築いた木工所。4人くらい弟子がいます。 ウスタの刷毛捌きもベテランらしく早いこと早いこと。 所狭しと並べられた沢山の腰掛け。 黒海地方の古い民家から出た木材を、2~3年前に買い取ったウスタが温存していたものらしく、一枚板ではないが、きっちりと接着されたカウンターの表面は、真っ平らにかんなをかけてつるつるにしたものではなく、荒削りにチョウナで削ったままだった。 味わい深い自然の木目。なにかを語りかけてくるような。 この木目には、エブルで描いたようなような雰囲気がある。 ところがそれが得も言われぬ味わいがあり、ウスタはそうした手法で、昔の姿のままを生かして創作家具に仕立てるのである。 ブラック・ウスタの作品集 こちらから こんないい才能を持ちながら、喧嘩っ早いウスタが母親のギュルセレンさんをいつも嘆かせているのを残念に思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[チュクルジュマ界隈のこと、または猫ばなし] カテゴリの最新記事
|