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カテゴリ:イスタンブール日々新たなり
【3月14日・火曜日】 毎年巡ってくる渡航記念日。去年は、と言えば3月13日夕方、アンカラの中心地とも言うべきクズライの公園のそばで、軍隊の送迎車をねらい、38人死亡、120人以上の負傷者の出る大規模なテロリストの襲撃事件が起こったのだった。 その前の、1月12日にはイスタンブールのスルタンアフメットにあるヒポドローム公園で、ツーリストがシリア人の自爆テロリストに襲われ、ドイツ人の観光客10人が死亡、そのほか大勢の負傷者が出た上、1ヵ月余り過ぎた2月17日には、アンカラの政治の中心地に近いチャンカヤ地区でトルコ軍の参謀本部の間近で、軍部の送迎車や官舎を狙った襲撃で29人が犠牲に、負傷者多数となっていたのである。 トルコを代表するこの2都市で交互に繰り返されるテロ事件、世間はすっかり怖気づいてしまっていた。とんでもない時代に突入して行こうとしているのが感じられた。 トルコ在住の日本人社会にも深刻な影響がはっきりと出始めた。日本人ツーリストのみならず、世界中からたくさんの人々を集めていた旅行関係業、土産物業、ホテル・ペンション業を筆頭に軒並み倒産、閉店、廃業という憂き目を見る人々が続出したのである。 私の周囲からもたくさんの友人、知り合いの日本人やトルコ人の業者、日本語ガイドさん、こういう人達が被害をこうむり、従業員を解雇したり、あるいは自分が転職せざるをえなくなったのだった。 自分の記念日など考えているどころではなくなった。実際アンカラで起きた昨年2度目のクズライのテロの後、1週間もしない3月19日には、うちのすぐ近くの、タキシム広場からテュネルへの2キロ弱のイスティクラール通りの中央付近で、これも自爆テロが起こり、4人の犠牲者とともに、付近にいた人々が重軽傷を負った。 その日のこと 2016年3月19日 犠牲者の数云々と言う話ではない。旧市街のスルタンアフメットと、新市街のイスティクラール通りは、イスタンブール観光のメッカであり、そこでたとえ一人でも犠牲者の出るテロが行われた、と言うことになれば、世界有数の観光立国トルコにとって、大打撃になるのである。 無論、テロ集団、ISやPKKという極悪組織はトルコに痛手を負わせる目的でそうしているのだから、テロとして大きく報道されれば世界中にニュースが飛び、観光客は来なくなり、トルコが経済的に大打撃を受ける。それが相手の思うつぼなのだった。 そして昨年は、とうとう渡航記念日には何も出来なかったが、3月22日、今度はベルギーのブリュッセルの空港で大きなテロ事件が発生した。 「それ見ろ、トルコだけが危ないんじゃない、トルコは悪いことをしているから狙われるんだ、とヨーロッパの連中は口を揃えて言っていたが、あいつらも今後は人のことは言えないね」などと男の井戸端会議場のようなおやじカフェで息まいている人もいる。 よそで起こったテロ事件をいい気味だ、などと思わないでほしい。トルコでもそのあとまだ、これでもか、これでもかと、6月7日にはイスタンブール大学の近くで大勢が犠牲になり、3週間後にはとうとうアタテュルク空港もテロに襲撃されたし、あろうことか、7月15日にはクーデター未遂まで。 今年も元旦から衝撃的なナイトクラブの銃撃事件、5日にはイズミールでも、とトルコの人々にとっては果てしない不安なスタートを切った2017年。 特にアメリカで、大金持ちで無教養丸出し、みたいなイメージの、泡沫候補だったトランプ氏が自信たっぷりだったヒラリー・クリントン候補を破り、メキシコの国境に高い壁を築く、と言いだしてからは、やりたい放題、嘘もつけば公金をくすねる、というような国家元首が続々と出現、時代は変わった、と今までの良識を覆す言動をする大統領や首相なども多くなった。 そんなときに、友達の一人が2~3日前に私にメッセージを送ってくれた。 「加瀬さんの渡航記念日と、お誕生日と、その他もろもろのお礼を兼ねて、ささやかなお祝いをさせて下さい」と言ってくれたのだった。 友達(匿名希望)も、テロのせいで苦境に陥ったたくさんの日本人と同じ境遇に居ながらも、決して他人に甘え寄りかかって安穏に暮そう、などと考えない人なので、まだこうしてお祝いが出来ること自体、幸せだと思うようにしよう、と暗黙の了解で久々に時を忘れてたくさんの話が出来た。 仕事の都合で今日は一緒に過ごせなかったそのほかの友達ともまた、いつかゆっくり集まってお喋りもしたいし、好物の食べ物もほおばりたい。 寿司ランチ、とても美味しいです、ご馳走さま。 満足しきった顔で、目じりが下がってしまいます。 みんなが、私に自分の歳も考えて、もう人ごとばかり手伝って歩き回らないように、と忠告してくれる。 「分かっているから大丈夫よ」と答えつつ実は分かっていない私を心配してくれる、周囲の友人の声をよく聞き入れなければいけない、と改めて思った。 それが今年の渡航記念日だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年03月17日 15時03分01秒
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