黒いアリバイ
ウイリアム=アイリッシュの『黒いアリバイ』を読みました。舞台はラテン・アメリカに存在する架空の都市。そこに、ヒョウが連れられてきます。そのヒョウは逃げだし、のちに、ヒョウが「犯人」と思われる殺人事件が起こります。警察はヒョウの仕業とみなしますが、ヒョウを連れてきた男は、それはヒョウではなく人間の仕業と推理します。真相はどちらか?男が真相を見抜くために取った作戦とその顛末は?この作品の注目は、やはりまず、被害者たちの描写といってよいでしょう。被害者たちの生活がまず描かれ、破滅に向かっていく様子がじわじわと描かれていきます。被害者はそれぞれ基本的に接点のない人ですが、それぞれ夜の墓地やトンネルを抜けた暗い道などの場所で事件に出会います(ぞっとしますね)。それぞれの人は、お買い物に行かされる女子や、愛する人と会いに行く女性など、まさに様々です。また、ところどころに見られる言葉遣いも雰囲気を出しています。「セニョール」とか。また、時折顔を出す「それが都会というものである。お互いに知りもしない人間たちが螺旋の相を描いているのが、そのありようなのだ」などの地の文も魅力的です。タイトルの「アリバイ」というわりには・・・・ですね。ちなみに、登場人物リストにあるセヴァーンさんが見つからない。