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どのくらい寝ていたのだろう?
私は、ベッドから起き上がり薄暗い部屋の中で電灯のスイッチを探し歩いた。 部屋の入口の横にスイッチがあったのでつけてみた。 電灯を点けたときの最初の印象は、なんだか薄暗くボヤッとした明るさなのでなんとなく頼りなく感じた。 日本で蛍光灯に慣れている自分の目には、ヨーロッパの電球の文化が初めはなんとなく馴染めなかった。 今思えば、蛍光灯は確かに強い光で全てがはっきりと見えて便利なのだが、余りにも刺激が強すぎて目が疲れてしまう。 ヨーロッパでもオフィスやデパートは蛍光灯だが、自宅に蛍光灯をつけている家はあったとしても数が少ないと思われる。 取りあえず、フローレンが帰ってくるまでお茶でも飲もうと台所に行ってみた。 お湯を沸かすのは電気やかん(ケトル)があり、お水を入れてスイッチを入れると中にある電熱器が異常なスピードでお湯を沸かしてくれる。 このケトルがあるので、イギリスでは魔法瓶などを使用しなくても、短時間で必要なだけのお湯がすぐ沸く。 これは誰に教わったのか今になってみると定かではないが、イギリスでは殆どの人は紅茶を入れるのにティーバッグを使う。 このティーバッグがハンパな大きさではなく、多分日本の日東紅茶のティーバッグの3倍はあると思われるほど大きい。 このティーバッグを背の高いカップに入れてお湯を注ぎ、お湯がかなり黒くなるまで(コーヒーかと見間違えるほどである)お茶を出しティーバッグを引き上げた後、紅茶が濃いベージュ色になるぐらいミルクをたっぷりと入れ、好みによって砂糖を入れて飲むのである。 この紅茶の入れ方は初めてだがなかなかおいしく紅茶がいただけるので、それまでは珈琲派だった私が紅茶党に大変身したのだった。(しかし本当の理由は、この頃のイギリスでは珈琲といえば喫茶店のようなところでも、インスタント珈琲が出てくるのでおいしい珈琲はなかなか飲むことができなかった為である)。 フローレンが仕事から帰ってきて、外に食事に誘ってくれた。 全てがはじめての経験である私には、もちろん「YES!」である。 今思い返すと、その時フローレンが連れて行ってくれた場所はフルハムロードのピッツア・エクスプレスだったと思う。 ピッツア屋さんのチェーン店にしてはちょっと高級感を感じさせる店構えで、ピッツアもイタリア感覚の薄い生地のピザでとてもおいしい。 私たちは、地下鉄でフルハム・ロードまで行きそこからお店まで歩いていったのだが、その途中で歩いていた2~3人の老婦人の一人が私に話しかけてきたらしい。 私は、立ち止まり後ろを振り返ると、フローレンが立ち止まってその老婦人たちに何か説明をしていた。 英語ができない私は、その会話に入っても仕方ないと思い、少しはなれたところで話が終わるのを待っていた。 話が終わりフローレンは私のところに戻ると、先ほどの老婦人は私に道を聞きたかったらしいが、私が素通りしてしまったのでとてもびっくりしていたらしい。 彼女は「彼は日本から着いたばかりで、まだ何も分からない。あなたをびっくりさせたことを許してあげてください」と弁護してくれたらしい。 これは知らなかったにせよ、私がロンドンに着いて最初の思いもかけない失礼をしてしまったようだった。 私はこの後レストランでどんな会話をしたのか全く覚えていないが、このときの日本の夏祭りの縁日を思い出させるフルハムロードの人ごみは、あの時食べたピッツアの味と共に約30年経った今でもはっきりと覚えている。 家に帰るとフローレンは「今夜、私は友達のところに泊まるから、あなたはこの部屋に泊まりなさい。」と言って出て行ってしまった。 私はロンドンでの最初の夜をこの素敵な部屋で過ごせる自分のラッキーさをフローレンに感謝して眠りに着いた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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