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カテゴリ:米国いなか暮らし
いよいよ明後日の早朝、米国ノースカロライナ州を後にして、中国・大連に帰ることになりました。3月21日以来、2ヶ月余りお世話になったこの地とも、いよいよお別れです。
今日、地元セントラル・カロライナ銀行の銀行口座も解約したし、明日は職場のお別れパーティーもあるし、中国へ帰るフライトもホテルも全て予約したし・・・一つまた一つと、私がこの地で暮らしていた痕跡が消えていく今日この頃です。今後、この地を再び訪れる可能性もあまり高くないと思うので、感慨もひとしおです。 大連の同僚で、米国に25年以上住んでいた男がいるのですが、彼がこう言ってました。「カロライナは、アメリカ東海岸で一番美しい地方だ」、「中国に戻ったら、カロライナのことが絶対に懐かしくなるはずだ・・・」と。 「本当にそうなのかなあ?」、というのが、いまの私の正直な感想です。カロライナというところは、確かに気候が良くて自然も豊か、のんびりしたいい所です。物価も安くファミリーには暮らしやすいです。でも、「要は、それだけじゃないか?」、という気もするのです。私はこの地に、人を惹きつけな強烈な魅力というものを感じないのです。 なぜそう思うのか?・・・その前に、カロライナがどういう所なのか、簡単に説明しますね。 カロライナは、米国東部の田舎州です。地味で目立たないけど、「そんなに悪くない」田舎です。ここは、ニューヨークとかロサンゼルスみたいな大都会ではないし、テキサスやフロリダのようなインパクトの強い州でもないから、知名度は高くありません。その代わり、それほど貧困でもないし、厳しい人種差別や凶悪犯罪も比較的少ないとされています。 ここは田舎とはいえ、経済は結構いいんですね。ノースカロライナ州についていえば、最大の都市・シャーロットは金融の中心地で大きなハブ空港もあるし、第二の都市でかつ州都・ローリー(私のいる所)は、全米トップクラスの大学がいくつもある文教都市で、かつハイテク企業が集中し「東部のシリコンバレー」ともよばれるRTP(Research Triangle Park)を擁しています。また、州が別になるとはいえ、シャーロットは南部最大の都市アトランタに近く、ローリーは首都ワシントンに近い。だから、そう僻地でもないんですね。おかげで人口も順調に増え続けています。 気候はいいです。東京と同じくらいか、もう少し暖かい気候で、雪もそれほど降りません。曇天が多いのが玉に瑕ですが、晴れ渡った日、新緑の森林に囲まれたカロライナ平原は美しく、そこに立っているだけで「暖かくていい所だなあ」という幸福感に包まれます。この州の東側は海岸地帯、西側はアパラチアの山岳地帯で、州都から東に3時間のドライブで海へ、西へ3時間のドライブで山へ到達できます。ゴルフ場やスポーツ施設も非常に多い。 気候が暖かく自然に恵まれている。都会というよりは田舎だけど、それなりに便利で栄えている・・・日本でいえば、静岡県みたいな感覚でしょうか。刺激は少なくともそれなりに満ち足りて、住民が皆、ボケーッとしてしまうような所・・・カロライナはそんな所です。 「いい所じゃないか!」と、皆さんは思われたかもしれません。そうです、確かにいい所です。でも、ここは私の居るべきところじゃないと思うんですよね。1年くらい住むならいいだろう。でも2年、3年と住んだら、私などは絶対に退屈してしまう。たとえ子供連れであっても、大都会に移住したくてウズウズしてしまうことでしょう。 カロライナに何が足りないのか?・・・それは、街の賑わいです。私の育った東京郊外の街はとても賑やかな所だったし、私が好きな都市、例えば福岡とか台北とか、シドニーなどは、どこも街の賑わいがあり、エネルギーが溢れています。私は数日後に中国・大連に行くわけですが、この街も賑やかで、活気があります。 一方、カロライナの都市は、どこも完全なクルマ社会です。商業施設が家から何十kmも離れているのが普通で、とてもじゃないが歩けない。公共交通機関も皆無に等しい。縦横に張り巡らされたフリーウェイを時速70マイルで飛ばして買い物に行き、職場に行き、学校に行くのが、カロライナのライフスタイルです。 「歩けない都市」・・・そもそも、クルマ主体につくられた街だから、道路にしたって歩行者のことなど全く考慮していません。両側5車線の広い道路を、信号もなしで渡るのは大変ですから、たとえ徒歩5分の距離でも、みんなクルマに乗る。そして、誰も歩かないから、街の賑わいは生まれない。ローリーやダーラムのダウンタウンなんて、ゴーストタウンのようです。あるのは巨大なショッピングセンターと巨大な駐車場と、それらを結ぶフリーウェイ網だけ・・・ 誰もが歩き、徒歩圏内で買い物も食事も映画鑑賞も何でもできる街に育った者にとって、巨大ショッピングセンターとフリーウェイばかりの風景というのは、恐ろしいほど寂しく見えます。人の顔が見えず、クルマばかりが疾走する街というのは、とても物悲しく見えます。これは、私の感じ方ですけど・・・ さらばカロライナ。私は、この地にさほど未練を感じることなく、この地を去っていきます。あと三日後には、賑やかで活気ある大連の土を踏みます。それが、とても楽しみです。歩く人々の表情が見える街こそが、私の本来居るべき所だと思うから・・・ とはいえ、カロライナはいい所です! カロライナ西部・山岳地帯の快適なドライブ カロライナ中部・賑わう大学町Chapel Hill カロライナ東部・大西洋がみえるレストラン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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