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カテゴリ:エッセイ集
小沢一郎・民主党党首の公設第一秘書が、政治献金疑惑で逮捕され、東京地検特捜部の捜査を受けています。小沢氏は今のところ、「法的、政治的にやましいことは一切していない」と、あくまで徹底抗戦の構えを崩していません。
度重なる政治家の汚職疑惑、「またかよ・・・」と思った人も少なくないでしょう。ですが、私は衆議院解散間近のこのタイミングで、なぜ特捜部が動いたのか、背後でどんな判断、どんな権力が働いていたのか、そちらの方がより興味深い。 特捜部はこれまで、ホリエモン事件、村上ファンド事件に象徴される経済犯罪や、汚職等の政治犯罪など、劇的な案件を、劇的なタイミングで捜査してきたことで知られています。今回の小沢氏の一件も、すわ政権交代かという歴史的瞬間を目前とした、まさに劇的なタイミングで立件されています。 その、あまりにも劇的で、タイミングが絶妙すぎるところに、私はどうしても、「作為」や「恣意」を感じてしまうのです。話がうまくできすぎていて、単なる偶然とは思えない。 たとえば、ホリエモン事件を振り返ってみましょう。彼が東京地検特捜部の捜査を受け始めたのは、2005年1月。彼の運営するライブドア社が時価総額1兆円に迫ろうとする、まさに絶頂期でした。その数ヶ月前、彼はTBSの買収を試みたり、衆院選に立候補したりと、非常に派手な動きを続けていました。私はつねづね、「ホリエモン劇場は、見ていて楽しいけど、敵も多くつくってるんだろうな」と思った、その矢先に強制捜査が入ったのです。 彼の容疑は二つ、株価操作を目的とした偽計・風説の流布と、有価証券の虚偽記載(粉飾決算)。確かに、犯罪は犯罪です。が、世の中で重大な経済犯罪・政治犯罪がたくさん存在するなかで、ホリエモンのやったことは、特捜部が「あのタイミング」で積極的に取り上げるべき事案なのかどうか?無論それが、日本経済全体にとって巨悪で、取り返しのつかない犯罪だったのなら誰にも分かりますが、果たしてそうなのか? 面白いことに、ライブドア社は粉飾決算後も破綻することなく、今も存続しています。ホリエモンは確かに利益を水増しして、投資家を欺きました。でも架空の取引をでっちあげたり、損失を隠蔽したわけではありません。全体としては黒字(会社が存続可能)で、トータルで帳尻はあっていました。その点、巨額の負債と失業者を出して崩壊したエンロンやワールドコムとは、明らかに一線を画します。また、粉飾行為としては、ホリエモンよりもっと悪質なことを行った上に、日本経済全体へのインパクトも大きいと思われる日興コーディアル証券の事件(2006年)は、特捜部の告発さえ受けていません。これは邪推ですが、 「ホリエモンの存在は、日本にとって望ましくない」と考える一部の権力者が、特捜部を背後で動かしたとは考えられないか?あるいは、ホリエモン事件で名を上げたい、出る杭は打ちたいという意思が働いたのか?いずれにせよ、透明ではないかたちで、人間の恣意が働き、それがホリエモン事件の告発・強制捜査に至ったように思えるのです。 今回の小沢氏の一件も、何となく、それと似たような匂いを感じてしまいます。日本において、政治権力の濫用をチェックする司法権力は絶対に必要ですが、特捜部が世の中の全ての政治経済犯罪を告発できない以上、彼らがどの事案を、どのタイミングで立件するのか?そこにどんな判断や意志が働いているのか?それは、私たち一般国民には(おそらく特捜部の現場レベルの人間にさえも)見えない領域の話です。そこに、ウォルフレン氏が指摘したような、「アカウンタビリティ(説明責任)のない権力」が、背後で暗躍しているのかもしれません。 これが、単なる杞憂であって欲しいのですが・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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