昔から季節の変わり目に体調を崩す事が有る。

春の目新しく清々しい空気の中蕁麻疹が出たり、

秋の涼しくて鮮やかな景色を背に肌が痒くなったり。

わたしは体は丈夫な方だが、体力がまるで無い。

体育のマラソンなんて、チャイムが鳴っても泣きそうな気分で一人走っていた。

持久力が無いのだ。

短距離なら早く走れたので、運動会なんて、リレーばっかりで、

しかも「あんまり待たせたら疲れちゃうから」との級友の計らいでスタートばっかりだった。


ひ弱な訳では無いので旅行や引越しでも荷物を運ぶ事は出来るが、

腕に痣が出来たり肩に紐の痕が中々消えなかったり、

どうも、昔から皮膚が一番弱かった。


一寸喘息気味だったり、頭痛持ちだったり、人には色々事情が有るだろうが、

わたしの場合、疲れたりストレスを溜めるとすぐに蕁麻疹が出た。

面の皮が厚いのと肌の弱いのは関係無いらしい。


それも、筋肉の強さに反して痣が出来るのを同じで、

自分では大丈夫これくらい！と思っていても少ししたら蕁麻疹が出て、

「やっぱり無理をしていたんだろうか？」なんて初めて気付き、

それ故に自分の可能性やら許容範囲を疑ってばかりで、

それがまた新たなストレスになったりして、本当に悪循環極まりない。


帯状疱疹もやったし、エレファントマンかと思うくらい蕁麻疹が腫れ上がった事も有る。

耳の裏が腫れて耳が立ち上がり服に頭を通すのが困難な位で、

目も両方お岩さん、このまま治らなかったら？なんて不安がよぎる程であった。


病院でも結局原因は判らず、それが蕁麻疹の厄介な所なのであるが、

お薬でなだめて引いた頃には普通の生活に戻るのである。


思えば、全部、春先が秋口の頃の経験だ。


アメリカへ来てから巨大なエレファントマン蕁麻疹ではなく、

子供の頃お風呂上りに一寸出たような蕁麻疹がまた出た。

９－１１後ブルルがレイオフされた後だったのでストレスのせいに思われたが

敢えて病院でアレルギーテストをした。

背中に幾つものアレルゲンを点毎に実験され、

今まで分かっていた青魚、銀、猫以外にも、埃やら芝生やらにアレルギーだと分かった。

（因みに青魚のテストはアメリカでは無かった）


アレルギーが分かっても、埃だらけの家に住んで居る訳ではないし、

芝生に触る習慣も無いし、「これを止めれば大丈夫」と言う特攻策は無く、

お薬を処方され、次第に様子を見てそれも止め、釈然としないままだった。


それが、先々週からお水で手を洗う度に指先がじんじんするなあ、と思っていたら、

或る日突然腫れて真っ赤になり、普段は隙間だらけの貧乏臭いわたしの手が、

ルネサンスの女性のようにふくよかになり、細かい作業が出来ない程腫れた。


石鹸もハンドクリームも変えていないが、指先だけなので色々疑った。

その内、大体一時間程で引く度に気にならなくなったが、

腫れてじんじんする頻度が増え、それがいつも冷たい物に触った後だと気付いた。

冷蔵庫から出したトマトやお豆腐を切ったり、

冷凍していたブル之助のご飯をお皿に出したり、外で冷たいコーヒーを飲んだり。

冷たい物にアレルギー？そんなの有るの？と思っていたら、

先日少し涼しい日に家族でモールへ出掛け、

ブルルがブル之助を乳母車に乗せるのを横で見ていてデパートの中に歩いて入ったら（ものの3分）

両耳がじんじんして来た。


諦めの悪いわたしは、嫌な予感がしながらもそれから暫く余り考えないようにして、

耳から出来るだけ神経を逸らせて歩いていたが、ついに、

「ねえ、わたしの耳、赤い？」とブルルに訊いてみた。


ブルルは実は今月手術をして一週間仕事を休んだ。

首の後ろに脂肪のかたまりが出来て、（モーパッサンみたい？）それを除去したのだ。

昔一度やったのだがまた出来たらしい。

油っ濃い物ばかり食べてるからよ。（鬼）


それでも一応麻酔をして、運転が出来ないので、

わたしはダウンタウンの病院まで車で迎えに行ったりした。（大冒険）



彼はわたしの耳を一瞥するなり、

「ああ、わたしの神様！君の耳は炎上している！（直訳）」


・・・やっぱりね、と、化粧品売り場の鏡で見てみたら、真っ赤に腫れていた。

これだけ蕁麻疹関連をやっていると、「出るな。」と「引くな。」とが分かるので、

暖かい店内でだんだん落ち着いて来ているのを感じながら、その日は取り敢えず暖かく過ごした。


家に帰ってブルルがＷｅｂＭＤなどで調べたら、寒冷アレルギーと言うものが有るらしい。

初耳だ。

それを診断するのは極簡単で、腕に氷を一分間くっつけて、そこが腫れたらポジティブ。

ばーん！と長細い氷の形がサイズは二倍くらいになって腫れた。

ぶつぶつではなく、輪郭のはっきりした、皮膚移植の失敗例みたいな腫れ方だった。

それは、なんと跡形無くなるまで20時間程掛かった。


寒冷アレルギー？？？

主婦なのに。ママなのに。

・・・ミシガンなのに。



先週の木曜日にはファミリードクターへ行って来た。

ミシガンへ来てからわたしは歯科と産婦人科しか行った事が無いので初診だ。

この辺では大変権威のある先生で、新しい患者を募集していない中を、幸運にも入り込んだのだが、

今まではブルルしかお世話になっていない。


結局、血液検査もアレルギーテストも（この場合はアレルギー科へ紹介と言う形になる）無く、

来院時点では蕁麻疹は無かったので口頭で説明のみ、

鼻の中をちょっちょと診られただけで、お薬を処方された。がっくり。

わたしはかなりこの際だから食い下がってしっかり見て欲しい、とか、

他の内臓疾患等の初期症状である可能性は？とか訊いてみたのだが、

珍しい事は珍しいけれど、ただのアレルギーでしょう、と言う事だった。

いきなり発症したのだから、いきなり治る事も十分に考えられます、とも。


素人には釈然としない理論だが、偉い先生のお言葉なので、様子を見ている。


一日に何十回と手を洗う度にお湯が出て来るのをじーっと待ち、

郵便受けに行くにも手袋（ポストが鉄製なので冷たい）、

本格的に冬になったら本当に強盗みたいなマスクを被らなきゃいけないのかしらん・・・？


気が滅入っては治る物も治らない、とは分かっていながら、

ミシガンの冬が刻一刻と迫って来るのを感じながら、滅入っている。