中高年の生涯学習

​​「無意識」とは意識できないものなので、どうしようもないと思っていないだろうか。ここでいう「無意識」とは意識がない、死んでいる状態、という意味ではないので誤解しないでほしい。心理学を学んだ人は、「無意識」を発見したのは、ジグムント・フロイトだということで、フロイトの業績が紹介されているのを読んだことがあるだろう。フロイトは人間の心は、意識、前意識、無意識の三層構造になっているという理論が特徴的だ。フロイトと並んで、有名なのがカール・ユングだ。ユングは無意識を「個人的無意識」と「普遍的無意識」の二層構造になっているという理論を発表している。個人的無意識には個人が体験したすべての状況、事象が記憶されているとする。ここに前世の記憶もあるとするのでオカルト的に感じる。普遍的無意識というのは人類一般に普遍的な無意識で、神話的モチーフが共有されているとする。フロイト、ユングには膨大な著作があるので、興味を持った方はアプローチしてみてほしい。

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​​​​NHKラジオの「こころをよむ」で現在、放送中なのが「無意識との対話」で講師は町田宗鳳（そうほう）というお坊さん。町田さんは１４歳で京都の禅寺に入り、托鉢と作務（さむ・掃除など寺の管理するための作業）と座禅を２０年間行ってきた。もっと広い視野を得ようと寺の生活をストップ、アメリカのハーバード大学神学部に留学、ここで神学修士号、ペンシルバニア大学で哲学博士号を取得、プリンストン大学で助教授になった。アジアの宗教を研究するためシンガポール大学でも助教授をされ、現在は広島大学の名誉教授であるが、本来の仕事と思われているのだろう、静岡で「ありがとう寺」という奇妙な名前の寺の住職をされて、「ありがとう禅」という瞑想を提唱している。

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​​​町田さんによると、無意識を発見したのが、西洋のフロイト、ユングとされているが、仏教では３世紀ころ、唯識学という人間の心理構造が追究する学問があった。奈良興福寺の北円（ほくえん）堂に無著（むぢゃく）・世親（せしん）の仏像がある。日本肖像彫刻の最高傑作といわれ、国宝に指定されている。無著・世親は北インドで唯識学を大成した人物である。現代の健康法であるヨガももともと唯識学の実践方法だった。唯識学では人間の意識を八段階に区分している。最初の五段階は五感のことで、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚で、前五識と呼ばれている。第六識が意識で、前五識から送られてくる情報を似も続いて判断を下す自我意識のことである。次の第七識がマナ識で潜在意識に根差し、あらゆることに執着する、煩悩の発生源である。仏教は人生は苦と考え、マナ識をクリーンにするために様々な行をおこなう実践といえるだろう。第八識がアラヤ識で、町田さんは、これが無意識の本体といえるもので、ユング心理学の個人的無意識と普遍的無意識の双方を含むものという。今生で体験したことばかりでなく、過去世の体験も先祖の体験もすべての記憶が保存されている。コンピュータでいえば、メモリの容量制限がないハードディスクのようなものである。

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​唯識学では、このマナ識、アラヤ識に保存された過去からの記憶の集積が人間の運命を決めると考えている。自我意識で、こうしようと考えても、どうしようもない。うわべだけの信仰心や教科書的な道徳などは、こうした無意識の前では全く無力で、そんなものに納得したつもりでいると、晩年に取り返しのつかない虚無感を覚えることになると唯識学では教える。

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​唯識学では第八識のさらに奥に、第九識であるアマラ識を想定する。アマラは無垢という意味である。アマラ識とは「汚れなき意識」を意味する。仏教修業の究極の目的をこのアマラ識に到達することとかんがえたのだろう。仏教修業などは専門のお坊さんのやることだが、普通の俗人が、この無意識との対話をどうしたらできるであろうか。町田宗鳳さんは、この無意識をコントロールして、人生を作り上げている人物として、作家の村上春樹、アメリカ大リーグのイチロー選手のテクニックを取り上げている。詳しくはテキストを参照してほしい。町田さんのライブ授業、瞑想、座禅を経験されたい人は下記のホームページに案内がある。全国各地で行っている。「ありがとう」は母音で構成されたフレーズで、人を幸福に導く周波数を出すという。

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自宅で座禅をするには座布団を二枚折りにして腰にすえる。専門店に「座葡（ざぶ）」というものもある。ネットでも「座禅用座葡」で検索してください。４～５千円。

ありがとう寺
​http://www.arigatozen.com/​