Oops! Wrong Planet
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34年の生涯で三篇、うち一篇はゲーム・シリーズのノベライズなので、正真正銘のオリジナル長篇は二篇しか残さなかった、夭逝作家の処女長篇。各方面で絶賛されただけのことはあり、第7回小松左京賞を逃したのが不思議なほど。ちなみに遺作となった第二長篇「ハーモニー」は、星雲賞、日本SF大賞、ベストSFの三冠を達成している。小松賞の選考過程では、「虐殺器官」が何なのかはっきりしない点で評価を下げたらしいが、このあたりは、現在の日本SFがジャンル内で凝り固まって、従前の柔軟性を失っていることを象徴しているようでおもしろい。明らかに近未来SFでありながらミステリーとしても高く評価されたのは、現在の日本SFとは逆に、ホラーだろうがSFだろうが中間小説だろうが、所謂ミステリーとしての結構を備えていなくとも、出来がよければすべてミステリーとして受け入れる、現在の日本ミステリーの懐の深さを物語っている。実に、SFプロパーの狭量さには、呆れるばかり。数少ない、SFプロパーの良心ともいうべき、大森望の解説は、非常に的確である。ああ、この終末観は、なるほどバラードだ。
2010/07/12
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元ネタは、乱歩が初読時に絶賛した、ロージャー・スカーレット「エンジェル家の殺人事件」。ただし、後に乱歩は、少なくとも絶賛から賛辞を贈る程度には、その評価を下げている。三角館の特異な構造がぜんぜん活かされていない。後期乱歩の凡作群の中ですら埋もれる、これといった特徴のない凡作中の凡作。
2010/06/29
捕物帖に超能力を持ち込むという力業は、名手、宮部を以ってしても困難なことであったのか、死人憑きの前半と忠臣蔵異聞の後半が乖離している。それでも、稀代のストーリー・テラーである宮部のこと、決して途中で退屈はさせない。お初と右京之介、それぞれのキャラクター設定と二人の関係性は、いつものステロタイプで、これは現代物でも時代物でも変わらない。
2010/06/28
意図的に集団幻覚を招来せしめる、と書けば容易いが、事はそう簡単ではない。これに、精神科医に見えている方が実は精神患者で、自分は気が狂っていないと主張している患者こそが医者なのではないかという、気違いはどっちだのテーゼが絡む。東京都民のほぼ全員が疎開することになる、一種のパニック状態を描いておきながら、その語り口には深刻さが微塵も感じられない。稀有な文体だ。
2010/06/14
「欲しがりません、勝つまでは」の戦時下、当然のことながら乱歩は断筆を余儀なくされていたが、その中にあって奇跡的に発表することができたのが今作。今の世に読むと赤面するくらに、必死に国威発揚小説足らんとしている。それでも、なんとか探偵小説の体裁を保っているところは、乱歩の面目躍如たるものがある。ただし、探偵役はお馴染みの明智小五郎ではなく、憲兵大佐が務める。この時期、乱歩の盟友、正史は捕物帖で糊口を凌いでいたのであり、戦時中、如何に探偵小説が不遇をかこっていたかが窺われる。日本の敗戦が決まった瞬間、正史が「さあ、これからだ」と叫んだのも肯なるかな。
2010/06/07
広瀬正の代表作であると同時に、タイム・マシンものの傑作。タイム・パラドックスもなんのその、二重三重の円環構造の輪が一瞬にして見事に閉じる最後のシーンには、快哉を叫ぶこと必至。構成上は、主人公が取り残された昭和九年、章でいえば「マイナス31」に筆の多くが割かれており、この部分はほとんど時間旅行とは関係がない、敢えて云うならSFですらないのだが、この時代の描写がまた絶妙で、ここだけとっても中間小説として立派に成立しているほど。日大工学部を出てジャズ・バンドを結成、プロのミュージシャンとして活躍していたという前歴が存分に活かされ、決して巧い文章ではないものの、そのスタイリッシュな文体は読む者を選ばない。円環の鍵となる部分が記憶喪失で処理されているのだけは、今の時代からするとやや残念に思われる。
2010/06/06
現代のマルキ・ド・サドとでもいおうか。じめじめした女流ポルノ、あるいは、ケータイ小説まがいの安っぽい雑文を想像していたら、いい意味で予想を裏切られた。骨太なエロスと雅な文体は、ケータイ小説どころか河野多恵子を思わすほど。しかし、この惹句では、ぜんぜん内容紹介になっていない。
2010/05/30
解説を読むまでもなく、すぐに宮部みゆきと京極夏彦が思い浮かぶ。ただし、大流行作家となったこの両者とは異なり、今作品の作者はいまだブレイクしていない。それは何故か。答えは簡単、キャラが立っていないから。後の「屍鬼」はまだしも、若書きといってもいい今作では特にそれが顕著で、ここまで凝った設定にしておきながら、そこで動くキャラはすべて記号でしかない。この構造は、実写と見紛う背景の前面で、旧来の二次元キャラが動いて違和感を撒き散らす、近年の押井作品に似る。舞台が平行世界であることを示唆しつつ妖怪譚から入り、グリーン家起源、犬神家経由の、すでにこの世にない者の意志による、血で血を洗う遺産相続争い(これ自体は、さしていい出来ではないが)にシフト、最後に陰陽道で落とす入籠構造は、なかなかのものなのだが、処理能力が追いついていない。ある意味、この頃の小野不由美にこの設定は、家賃が高かった。つくづく、小野不由美はアレンジ勝負の人なのだと思う。
2010/05/24
表題作外、次の四篇所収。紅き唇十三年目の子守唄ピエロ私の叔父さんいずれ劣らぬ出来で、手練の技を堪能できる。心底、巧い作家だと思う。解説はシナリオライターの荒井晴彦。彼は「神田川」の詩、特に「ただ貴方の優しさが怖かった」の部分に触れて、「ピエロ」を解説している。正鵠を射ている。
2010/04/18
姫路城、熊本城ときて、第3巻は大坂城。当然の順序だと思うが、遺構の多い前二城とは違って大坂城の評価は難しい。豊臣の大坂城は地中深く埋められ、現在われわれが目にする大坂城の遺構はすべて、徳川の大坂城のそれである。にもかかわらず、昭和になって復興された天守の外観は、おおよそ豊臣時代のものであり、さらに分かりにくいのは、豊臣時代を再現したはずのその天守が載る天守台の位置は、徳川時代のものなのだ。築城の名手、秀吉が精魂傾けて築いた天下の名城の痕跡を、この世から消し去った家康の暴挙は、腹立たしい限り。秀吉の死後、家康が本丸南に築いた四層天守のあるミニチュアの写真を見ると、家康への憎悪がいや増す。ひいては、大筒一発に怯えて徳川方と和議を結び、結局、あたら大坂城を灰燼に帰しせしめる結果を招いた茶々への憎悪も。
2010/04/17
噂どおり、美しい日本語。科学指南書でありながら、立派に文学足り得ている。世に蔓延る理系文筆家は、本書を読んで大いに反省して欲しい。やつらの文章は、なぜ下手な翻訳文のようなものばかりなのだろう。読後味わう爽快な気分は、橋爪大三郎「はじめての構造主義」の読後感に似る。「はじめての構造主義」でソシュール言語学がわかった気になったように、ここでは二重螺旋構造がわかったような気になった。その実ぜんぜんわかってないところまで同じ。
2010/03/23
熊本城の第1巻同様、新書版ながらビジュアルに優れる。去年敢行した姫路城攻略の復習にうってつけだった。次巻は大坂城。
2010/03/12
「怖い絵」のシリーズが当たった中野京子が、二匹目のドジョウを狙って(?)放つ絵画シリーズのターゲットは、ハプスブルク。年代順に以下の12点。デューラー「マクシミリアン1世」プラディーリャ「狂女フアナ」ティツィアーノ「カール5世騎馬像」ティツィアーノ「軍服姿のフェリペ皇太子」エル・グレコ「オルガス伯の埋葬」ベラスケス「ラス・メニーナス」アルチンボルド「ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世」アドルフ・メンツェル「ルリードリヒ大王のフルート・コンサート」エリザベート・ヴィジェ・ルブラン「マリー・アントワネットと子どもたち」トーマス・ローレンス「ローマ王(ライヒシュタット公)」フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター「エリザベート皇后」マネ「マクシミリアンの処刑」「狂女フアナ」のフアナは、カスティーリャ女王にしてフィリップ美公(マクシミリアン1世の嫡男)の妃たるフアナ。「軍服姿のフェリペ皇太子」のフェリペ皇太子は、スペイン黄金時代を築いたフェリペ2世。「オルガス伯の埋葬」のオルガス伯は、トレドのサン・トメ教会の修復に尽力した善行により、その死に際し天使が墓所まで運んだとされるオルガス伯爵。13世紀の伝説的人物。グレコはこの絵に、こっそりフェリペ2世を描き込んでいる。「ラス・メニーナス」の主役は、云わずと知れたマルガリータ王女。父はフェリペ4世。「ローマ王(ライヒシュタット公)」のローマ王は、ナポレオン・ボナパルトとマリー・ルイーズの間に生まれたナポレオン2世。「マクシミリアンの処刑」のマクシミリアンは、ナポレオン3世に騙されてメキシコ皇帝となったマクシミリアン。ハプスブルク最後の皇帝フランツ・ヨーゼフの弟。
2010/03/08
織田、浅井、豊臣、宇喜多、武田、今川、北条、尼子、毛利、徳川、各家の婚姻戦略について述べる。多少なりとも瞠目できたのは尼子と出雲大社の関係くらいで、あとは既知の事柄のみ。軽い読み物。
2010/03/07
「ジョジョの奇妙な冒険」としてカウントすると、これが100巻目になるらしい。一スタンド、一能力の原則はどこへやら、大統領のスタンド能力に限界はないようだ。大団円が近づいて、またしても大掛かりになってきた。
2010/03/06
小学館のプログレッシブ・シリーズは定評があるが、これは変り種。大学の同じクラスに、仏和は使わず、仏英と英英でまかなっていたやつがいた。当時これがあったら、便利だったろう。しかし、価格(1,800円)が価格なだけに仕方ないとはいえ、見出し語は約4,000。さすがにこれでは実用に耐えない。白水社の基本語辞典ですら、5,000語だ。少々値が張ってもかまわないから、三省堂のクラウン仏和と同じくらいの語数があるといいのに。
2010/03/04
ビジュアル文庫と銘打っているだけあって、写真をふんだんに使って目に訴える新書となっている。来月の熊本城攻めにうってつけ。第二巻は姫路城。
2010/02/28
表題作外、次の七編所収。かどわかし敵持ち十六夜髑髏お墓の下まで謀りごとてんびんばかり砂村新田解説は脚本家の金子成人。どれも宮部らしい、ほろっとさせられる掌編。佳作揃い。
冒頭に、小谷真理によるグイン・サーガ論「異形たちの青春」を掲げ、あとは既存のハンドブック同様、大事典とストーリー紹介に費やされる。小谷の評論は、これまで語り尽くされてきたことをまとめただけのようで、特に目新しい部分はない。むしろ、食い足りない。ボーイズ・ラブに言及するのなら、そこからグイン・サーガはヒロイック・ファンタジーの路線から脱落したのだと、はっきり書いて欲しい。
一年戦争におけるジオン軍の敗因を、モビルスーツ開発に絞って解析する。と書くと、なにやら戦史もの、戦記もののように聞こえるが、もちろんジオン軍なる軍隊もジオンなる国家も存在しないし、モビルスーツも実在しない。あくまで架空の話。とはいえ、あたかもそれらの兵器が存在したかのような錯覚すら覚えるほどに、その解析は真に迫っている。なかなかおもしろい切り口だ。名機ザクといえども、誤った成功体験のくびきから脱することはできなかった。大東亜戦争時の零戦を想起する。
2010/02/22
キャスバル誕生の瞬間を描いた、書き下ろしを含む。純粋なガイドブックとしては、目新しいものはない。ジオン・ダイクンとデギン・ザビは同じ大学の教授職にあり、デギンは学部長。過激派の学生運動を煽動しているとして治安当局にマークされているダイクンを、デギンは大学の時計塔に匿っている。ダイクンはアストライアとともに時計塔の最上階にあって、アストライアは臨月を迎えていた。腹の子こそ、キャスバルである。ドズルはヤンキー学生で、キシリアは小学生。ギレンとサスロは、デギンの意を受けて武装し、大学の防衛の任務に当たっていた。
2010/02/15
ギレンとキシリアによる政治的駆け引きの狭間で見殺しにされたソロモンは、連邦軍のソーラー・システムにより壊滅的打撃を受けた。ドズルはソロモンを放棄し、玉砕する覚悟を固める。巨大モビルスーツ、ビグ・ザムで出撃するドズル。ボールで出撃していたハヤトは被弾し、重傷を負ってホワイト・ベースに帰還した。介抱するフラウに、アムロに勝ちたいと訴えるハヤト。そのハヤトに対し、フラウは遠くを見る眼差しで優しく云う。アムロはちがうわ。あの人は…わたしたちとはちがうのよ。悔し涙を流すハヤト。ドズルはソロモン放棄を宣言し、部下たちを避難させた。ひとりビグ・ザムに残ったドズルは、その圧倒的火力で連邦軍のモビルスーツ隊をなぎ倒していく。電磁シールドで防御し、ビーム砲を受け付けないビグ・ザムに対し、連邦軍はなす術がない。遂に、ティアンムの旗艦までもが撃墜された。これを見たコア・ブースターのスレッガーは、ガンダムと組んでビグ・ザムの死角から砲撃。しかし、コア・ブースターはビグ・ザムの足に握り潰され、スレッガーは機外に放り出された。ガンダムはビーム・サーベルで、ビグ・ザムの操縦席を破壊する。機関銃を手に外に出たドズルは、蟷螂の斧よろしくガンダムを射撃。やらせはせんぞおお。ドズルの執念に戦慄するアムロ。ここにきてスレッガーの一撃が効いたビグ・ザムは、爆発。ドズル、戦死。ゼナとミネバを乗せたザンジバルでは、シャアがソロモン陥落を見届けていた。ゼナとミネバはシャアの手により、キシリアの元へ送り届けられることになった。アムロからスレッガー戦死の報告を受けたミライは、ショックを受ける。ジオン本国では、ソーラ・レイ作戦が進行していた。デギンに作戦を進講するギレン。デギンはギレンを、ヒトラーの尻尾であると喝破する。デギンとギレンの確執は、いよいよのっぴきならぬものとなってきた。ドロスのキシリアの元へ、シャアがララァを連れてやって来た。キシリアはズム・シティへ赴くのに、自らの乗艦であるチベ、パープル・ウイドウでは目立ちすぎるとして、シャアからいっときザンジバルを借用する。生残性向上テストを受けるアムロは、スレッガーの死が目に焼きついて身が入らない。アムロ、ミライ、セイラの頭に響く、「ララァ」の音。ララァが、エルメスで初の出撃を果たしていたのだ。シャアはゲルググでサポート。作戦会議のため、ソロモン改めコンペイ島へやって来た、レビル総司令官。ブライトも招集されていた。連邦軍はア・バオア・クーを牽制しつつ、ジオン本国を叩く。今次の大戦の趨勢を決することになるであろう、この作戦は、レビルにより「星一号作戦」と名づけられた。ニュータイプの時代に言及するレビル。ララァのエルメスはビットを繰り出して、次々に連邦軍の艦隊を落としていた。ガンダムで出るアムロ。ガンダムのアムロ、エルメスのララァ、ゲルググのシャア、三者が出会う。アムロに、同志になれと誘うシャア。そのシャアに、あなたはニュータイプではないと言い放つアムロ。怯むシャア。シャアとララァは帰還する。シャアのザンジバルで、秘密裏にジオンに入ったキシリア。変装してデギンに謁見する。キシリアに即時停戦の必要性と、ギレン排除を訴えるデギン。レビルと接触するのなら、レビル艦隊牽制のためにドロスがゲルドルバ線上にある、今この時を措いてないと、デギンに慫慂するキシリア。デギンはグレート・デギンに乗艦し、ゲルドルバに向かった。ア・バオア・クーのギレンに、デギンがゲルドルバ照準に向かったと打電するキシリア。アニメでは、ゼナとミネバをジオンに送り届ける役目はマ・クベが負っていたが、ここではすでに戦死しているマ・クベにそれを望むべくもなく、その役目はシャアが負う。士官学校では同級生だったシャアとゼナ、なんと立場の違ってしまったことか。この展開だと、デギンがソーラ・レイの餌食になるのは、ギレンとキシリアの共同作業になりそうだ。だとすれば、キシリアはギレンの一枚上手を行く。
2010/01/29
全六巻の第一巻。新訳。ハワードの原典を初めて集大成した「ミレニアム版」を基にする。梗概や未完の草稿は資料編としてそのまま収録し、ハワードの死後、ディ・キャンプやリン・カーターらが加筆、改作したものは排除している。収録作品は次の通り。キンメリア(詩)氷神の娘象の塔石棺のなかの神館のうちの凶漢たち黒い海岸の女王消え失せた女たちの谷資料編死の広間(梗概)ネルガルの手(断片)闇のなかの怪(梗概)闇のなかの怪(草稿)R・E・ハワードからP・S・ミラーへの手紙ハイボリア時代
2010/01/11
ソロモンに援軍を差し向けようとしないギレンとキシリアに、ドズルは苛立っていた。サイド6で父の変わり果てた姿を見て、また、テキサス・コロニーでシャアのゲルググに敗れて以来、アムロは様子が変だった。そのアムロの下へ、連邦科学局技術開発部の主任、モスク・ハン博士がやって来た。ガンダムの駆動系を電磁気で包んで抵抗をなくし、反応を速くする、マグネット・コーティング技術を試すためだった。ソロモン攻略の先鋒を務めるため、ルナツーからワッケインの第三艦隊が出撃。ティアンムの第二艦隊も、グラナダを牽制しつつソロモンを標的としていた。ソロモンにはワッケイン艦隊をティアンムの主力艦隊と思わせて、その間にソーラー・システムを準備する作戦が進行中。ドズルはギレンとキシリアがソロモンを見捨てる気でいることを知り、ゼナとミネバの処遇を考える。キシリアの乗艦、空母ドロスに収容される、シャアのザンジバル。連邦の星一号作戦について対策を練る、キシリアとシャア。その実それは、シャアがキャスバルであることを自分は知っていると仄めかすキシリアと、それを承知の上でとぼける風のシャア、二人の「仮面と覆面のかけひき」なのであった。改良が成功したガンダムは、ホワイト・ベースから迎えに来たスレッガーのコアブースターに乗って、浮きドックからホワイト・ベースに帰還。初めて見るRB-79、通称ボールにアムロは驚く。反応が速くなったおかげでガンダムは、強力な拡散ビーム砲を備えた、デミトリー軍曹のモビルアーマー、ザクレロも撃破した。ドズルはティアンム艦隊を発見し、戦艦グワランとムサイ艦隊の出撃を命じるが、そのとき、連邦軍のソーラー・システムが照射された。システムは絶大な威力を発揮して、ソロモンは炎に包まれ、ドズルは艦隊の殆どを失った。ドズルは妻子をジオン本国に送った。ミライはスレッガーに愛の告白。スレッガーは戸惑うが、出撃前に母親の形見の指輪をミライに託す。なぜかモスク・ハン博士が大々的にフィーチャーされている。対照的に、デミトリーのことはあまり触れられていない。ゼナとミネバは、アニメではマ・クベの艦に収容されたが、すでにマ・クベはオデッサ作戦で命を落としている。直接ジオン本国に行けるのか?
2010/01/07
シャアのザンジバルは、かつてキャスバルとアルテイシアが暮らしていたテキサス・コロニーに入港。ホワイト・ベースは、テキサス・コロニー内で進行中のジオンのプロジェクトを叩く任務を与えられ、やはりテキサス・コロニーに入港。ジオンのプロジェクトとはフラナガン機関によるものであり、また、ニュータイプ、シャリア・ブル大尉が搭乗するモビルアーマー、ブラウ・ブロの開発でもあった。ニュータイプ部隊の同僚となるララァ少尉をシャアから紹介されたシャリア・ブルは、自分はこんな小娘と同じ扱いを受けるのかと、内心憤る。木馬入港の報を聞いたシャアは、ブラウ・ブロを試すいい機会であると、シャリア・ブルに出撃を命じる。コロニー内の戦闘にはコアブースターは使えないので、スレッガーはガンキャノンで出撃することにし、セイラの出番はなかったはずだが、昔テキサス・コロニーに住んでいたことがあるから役に立つはずであると、セイラは自ら出撃を志願。そこで、スレッガーはガンタンクで出撃することにし、ハヤトが砲撃手を務め、セイラも内部に乗り込む。サイド3から脱出するために、ハモンのガンタンクにキャスバルと乗り込んだことを思い出し、感傷に浸るセイラ。シャリア・ブル、出撃。シャアもゲルググで様子を見に出る。スレッガー、カイらのモビルスーツ隊は、シャリア・ブルのブラウ・ブロに翻弄された。アムロも苦戦を強いられたが、ニュータイプ同士の戦いが、かえって彼のニュータイプとしての能力を引き出すことになり、シャリア・ブルを撃破。シャアがゲルググで、ガンダムに襲い掛かる。ブラウ・ブロ戦でエネルギーを消耗したガンダムは、遂に性能でガンダムに追いついたジオンの最新モビルスーツ、ゲルググに苦戦する。また、ニュータイプとして覚醒したアムロには、ガンダムの反応が遅く感じられた。ガンダムはゲルググのビーム薙刀に左腕を切断され、地雷原に落ちてしまった。ゲルググとララァの収容を部下に託したシャアは、野生化した馬の群れの一頭に飛び乗り、かつて自分が住んでいたアズナブル家へと向かう。セイラもまた、スレッガーの許可を得てアズナブル家へ向かっていた。抜け目のないスレッガーは、カイにセイラの後をつけさせていた。エドワウの墓碑銘の前で涙に暮れるセイラ。その面前に、シャアが現れた。母の仇討ちをしにテキサス・コロニーに出て行ったはずなのに、ザビ家の手先となっているのは筋違いであるとシャアを詰るセイラ。ニュータイプを知ったとき、考えが変わったと打ち明けるシャア。セイラは、ガンダムのパイロットがアムロであることを思わず漏らしてしまった。これらのやりとりを、すべて聞いていたカイ。実はジオン・ズム・ダイクンの娘、アルテイシアであり、シャアは実兄であると、ブライトやミライに知られたセイラは、謹慎処分となった。アニメでは割愛されていたシャリア・ブルの内面描写が、かなり詳しくなされている。
2010/01/05
地球から宇宙へ上がったホワイト・ベースを追跡する、シャア大佐のザンジバル。シャアは、ホワイト・ベースの前方に位置するキャメル、スワメル、トクメルのムサイ艦隊と連係し、ホワイト・ベースを挟撃する作戦に出る。ムサイ艦隊を指揮するのは、ファルメルでシャアの副官だったドレン大尉。木馬を捉えたドレンは、リック・ドム部隊を展開。ホワイト・ベースは、アムロがガンダムで、スレッガーとセイラがコアブースターで出撃。カイ、ハヤトらは、ガンキャノンで対空砲の役目を負う。ザンジバルが追いつく間もなく、ムサイ艦隊は全滅。ドレンのキャメルは、ガンダムに落とされた。ホワイト・ベースはグラナダへ行くと見せかけて、サイド6へ入港した。サイド6は中立を標榜してはいるが、政権はジオン派だった。サイド6の入国審査官、カムラン・ブルームが臨検にやって来た。カムランはミライの婚約者であり、二人は思わぬ形で再会を果たす。親しげにミライに接するカムランを見て、おもしろくないブライト。ミライは、自分自身が汗をかこうとしないカムランのことを気に入っていない。しつこくミライに迫るカムランを軽く小突くスレッガー。街に出たアムロは、偶然、父のテムを見かける。アムロは父を追いかけ、サイド7で生き別れになって以来の再会を果たした。父が住み込みをしているというジャンク屋に行くと、そこはガラクタだらけだった。テムはアムロに、ガンダムのパーツを開発したといって、古い機械を渡す。テムはサイド7で宇宙に放り出された所為で、酸素欠乏症にかかっていたのだった。衝撃を受けるアムロ。ブライトの制服を繕うミライ。ミライとカムランのことが気になるブライト。ミライは、自分が好きなのはカムランではなくブライトなのだと、ブライトにサインを送っているのだが、不器用なブライトは、自分の気持ちとは裏腹なことを云ってしまう。父親に別れを告げたアムロが、帰路、雨宿りをしていると、そこには白鳥を見つめるララァがいた。運命的な出会いを果たした、二人のニュータイプ。サイド6は、厄介な存在のホワイト・ベースに出港を促していた。しかし、宙港の外にはコンスコン少将の艦隊が待ち構えており、ホワイト・ベースは出るに出られない。カムランは、サイド6の艦が随伴すれば、少なくともサイド6の領域内ではコンスコンは手を出せないだろうから、自分が水先案内人を務めると申し出る。いまさら機嫌をとろうとしても迷惑だと、カムランを拒絶するミライ。カムランは本気だと、ミライを平手打ちするスレッガー。ララァと出会った家を訪れるアムロ。ララァは居なかった。アムロが帰り道で泥にタイヤをとられて立ち往生していると、ララァとシャアが通りかかり、シャアはアムロの車をロープで繋いで引いてくれた。初めて顔を合わすアムロとシャア。シャアは、アムロがガンダムのパイロットであることを、まだ知らない。ホワイト・ベースは、カムランが随伴してサイド6を出港。カムランが離脱すると同時に、コンスコン艦隊が攻撃を開始。この戦闘の模様はサイド6のテレビ・クルーが撮影し、サイドで放送していた。それを見るシャアとララァ。コンスコン艦隊は、12機のリック・ドムと2隻のムサイをあっという間に屠られた。残るはコンスコンのチベのみ。7機のリック・ドムを落としたガンダムが、コンスコンのチベに迫る。コンスコン艦隊全滅。ガンダムの戦いぶりを見て、そのパイロットがニュータイプとして覚醒しつつあると確信するシャア。テレビ中継に興奮して階段を踏み外し、後頭部を打ったテム。ジャブローとオデッサの順序を変えて齟齬が生じていた部分も終わって、再びアニメに忠実となった。軌道が元に戻った感じ。スレッガーもジムではなく、いつの間にかコアブースターのパイロットに納まっている。
2010/01/04
ジブラルタルは連邦軍に制圧されたが、一機のみ残ったザクが、連邦のモビルスーツを次々と屠っていた。スレッガーはジム隊でザク退治に向かう。セイラはコアファイターのパイロット候補となり、通信士はフラウが務めることになった。スレッガー隊はスレッガーを残して全滅。ガンダムで救援に出たアムロは、シャアに遭遇。一機だけ残ってモビルスーツを狩っていたのは、シャアだった。シャアは、ガンダムと一騎討ちをするために、敢えて殿を務めていたのだった。更に出来るようになったな、ガンダム。飛躍的に成長するアムロは、シャアと互角に渡り合う。もはやザクでは、シャアはガンダムを破ることは出来ない。救援に来たマリガン中尉のドダイに気をとられ、一瞬油断したシャアのザクは、ガンダムに首をはねられた。ドダイに逃れたシャアは、マッドアングラー隊解散を宣言。シャアはオデッサ作戦には参加せず、マ・クベやギレン、キシリアの動きを見るつもりである。訓練飛行を兼ねてコアファイターで偵察に出たセイラとスレッガーは、ドップの編隊の攻撃を受ける。セイラ機は撃たれて、湖に不時着。スレッガーが助けを求めにホワイト・ベースへ戻った間に、セイラはドムの二個中隊を目撃。中隊の指揮官はガイアだった。アムロのガンダムは、スレッガーのコアブースターに乗って、セイラ救出に向かう。ガンダムを発見したガイアとオルテガは、マッシュの仇を討てると狂喜。しかし、ニュータイプとして覚醒し始め、シャアのザクをも撃破したアムロにとって、もはやガイアもオルテガも敵ではなかった。ドム二個中隊は全滅。マ・クベのダブデ隊はオデッサに進軍。オデッサ作戦が開始された。迎え撃つレビル大将は、「後世の戦史研究家達は、宇宙世紀におけるアウステルリッツ、あるいは日本海海戦と呼ぶかもしれない」とエルラン中将に述べる。マ・クベはギレンの指令を受け、核爆弾の用意をしていた。エルランはレビルの旗艦に核が撃ち込まれることを知っており、離艦命令を求めていたが、それを不自然と感じたレビルは、エルランこそがスパイであると察知した。ジャブロー戦以来、機密漏洩がはなはだしいため、レビルは高官に内通者がいることを疑ってはいたが、それが誰であるかは特定できていなかったのだ。邪悪な気配を感じたアムロは、逆方向に急行。二つの核爆弾の信管だけを破壊することに成功する。逃亡しようとしていたジュダック中佐をも、ガンダムで拘束した。核攻撃にも失敗したマ・クベは、グフの中隊を従えて、自らギャンで出撃。連邦のジムを次々と撃破するも、オデッサ作戦はジオンの敗色が濃厚となっていた。敗戦を覚悟したマ・クベは、キシリアへの壺をウラガンに託し、海中で自爆。ウラガン、あの壺は間違いなくキシリア様に届けてくれよ、あれはいいものだ。アニメでは、マ・クベの鉱山基地でガンダムとギャンの戦いが行われるが、ここではマ・クベのギャンはガンダムと戦うことなく、散ってしまう。ジャブロー戦とオデッサ作戦の順序を逆にした歪みが、ここで一気に出た感がある。その割には、ガンダムが核爆弾の信管だけを破壊するエピソードはそのまま使っており、取捨選択を間違っているような気もする。アムロがニュータイプとして覚醒しつつあることを伝えるために必要と思ったのかもしれないが、あれはさすがに無理があるだろう。
2010/01/03
英国沖、ブリストル湾付近。シャアのマッドアングラー隊が連邦軍の空母艦隊を発見。シャアはマリガン中尉に指示し、艦隊を攻撃。アイルランド北部、ベルファスト港。連邦の大型艦がドックに入るのを見たジオンの諜報員、ミハルは、その旨をジオン軍に知らせる。情報を受けたシャアは、大型艦が木馬ではないかと目星をつけ、自らシーランスを駆ってブーンの潜水艦へと向かう。密かにベルファースト入りしたレビル大将は、ホワイト・ベースのクルーに訓示。軍の歯車になるのを嫌ったカイは、艦から降りる。カイはミハルの家に厄介になる。ブーンの潜水艦からは、カラハ軍曹がゴッグで出撃。抜群の操縦技術を誇るものの、狂ったように奇声を発するカラハを「バカではないか」と疑うシャア。カラハは独断専行で木馬を攻撃した。残るモビルスーツは、重モビルスーツのゾックのみ。シャアは、ガンダムが出てくれば自分がゾックで出ると宣言する。スレッガーは潜水艦をコアファイターで叩くことを進言するが、ブライトは一蹴、定石通りジムで出るように命令する。臨機応変に命令を出せないブライトを、不安げに見るミライ。ガンダムではない、ジムが出てきたので、シャアは出撃せず、ゾックには本来のパイロットが搭乗した。ミハルは新たな指令を受け、連邦軍の制服を支給されてホワイト・ベースに潜入。カイはホワイト・ベースのまずい戦い方に業を煮やして、再び乗艦した。私服のままガンキャノンで出撃したカイは、カラハのゴッグを撃破。ゾックは撤収。艦長室に潜入したミハルは、カイに発見される。カイは自室にミハルを連れ込むが、それをアムロに目撃され、恋人を連れ込んだことにしてごまかした。ホワイト・ベースはジブラルタルに向かう。ブーンが誤射された民間機を装って、ホワイト・ベースに着艦。無線でミハルと連絡をとる。ブーンは補給を受け、離艦。気づいたカイは指摘するが、すでに時遅し。ホワイト・ベースは、モビルアーマー、グラブロの攻撃を受ける。さらに、ズゴックとゾックも迫る。スレッガーはコアファイターでの出撃を進言。ベルファストでスレッガーの進言を退けて失敗したことがわかっているブライトは、スレッガーの云うとおりにさせた。アムロはガンダムをガンペリーに乗せて出撃。ガンペリーはカイが操縦するが、密かにミハルも乗せている。ミハルが空に放り出されたのと同時に、ガンダムはグラブロを撃破。スレッガーの絡み以外は、アニメに忠実。オデッサ作戦の前に、ホワイト・ベースをジャブローに到着させたので、いろいろと変更を余儀なくされている。
2010/01/02
偵察機で索敵中のリュウ軍曹はドズル艦隊を発見、レビル艦隊に通報するが、ティアンム中将から何も云ってきていないのならガセであると握りつぶされる。しかし、その直後、レビル艦隊の目の前にドズル艦隊が出現し、レビル艦隊は横腹に一斉射撃を受ける。連邦軍は、ジオン軍の陽動にまんまとひっかかったのだった。艦隊戦が終わると、ドズル艦隊の後方にいたモビルスーツ隊がレビル艦隊に襲い掛かる。ザクの圧倒的な機動力の前に、なすすべもないレビル艦隊。ザクに搭乗機を撃たれたリュウは宇宙に放り出された。レビルの旗艦、アナンケはオルテガに落とされ、レビルはジオン軍の捕虜となった。レビルの指示により、ルウムのティアンム艦隊を救援に行ったワッケインは、艦隊ではなくモビルスーツに包囲された。シャアのザクは容赦なく艦を攻撃し、次々と落としていく。大勝利の祝いにギレンの下を訪れたキシリアだが、デギンの座乗艦、グワジンのみが前線にあるのを不審に思う。ギレンがあわよくばデギンを亡き者にしようとしているのではないかと。早期講和を求めようとするデギンと、徹底抗戦を貫くつもりのギレン。ギレンの蛮行が国を滅ぼすことになると、キシリアに訴えるデギン。戦勝パーティーには、それぞれ大尉、中尉、中尉に昇進したガイア、オルテガ、マッシュの黒い三連星や、少佐となったシャアが列席。シャアとガルマの再会。自分と同じ少佐となったシャアに対抗心を燃やすガルマ。マ・クベ中将を休戦協定全権に任命するキシリア。キシリアの目的は戦争の早期終結ではなく、戦争の続行であり、それには、ジオンきっての地球文明愛好者、マ・クベが適任なのであった。そして、キシリアはマ・クベに、自分はギレンを好かぬと告げる。捕虜となったレビルと、デギンが会見した。戦争の早期終結を願うデギンの考えに呼応したレビルは、自分を虜囚の身から開放すればそれが可能であると暗に臭わす。その後、レビルは、おそらくはエルラン中将の手の者と見られる隊により密かに移送され、ジオンを脱出。マ・クベは好かんと豪語するドズルから、連邦のモビルスーツ開発計画「V作戦」を探る任務を命令され、特別仕様のムサイ巡洋艦、ファルメルを受領するシャア。シャアの副官にはドレン中尉。自分は艦に縛られない宇宙の戦士なのであるから、艦長はきみだとシャアに云われ、意気に感じるドレン。ジオンの内庭ともいうべき空域で連邦の巡洋艦を発見したシャアは、ザクで出撃し、艦内に侵入する。レビルを発見したシャアは、一瞬にして状況を把握、巡洋艦を開放する。南極大陸、国際共同観測都市、スコット・シティ。レビル大将が演説する。現時点での休戦は休戦にあらず、降伏である。ジオンに兵なし、我々は必ず勝利する。レビルに裏切られたデギンは激怒し、地球人を徹底的に叩きのめすと宣言。キシリアの思惑通りになった。ルウム掃討作戦の功が認められたガルマは大佐に昇進し、北米方面軍西部地区軍司令官として地球に降りることになった。ここから第一巻に繋がる。
2009/12/31
サイド2(ハッテ)のコロニーのひとつ、アイランド・イフッシュに外部エンジンを取り付け、住民を毒ガスで皆殺しにした上で軌道をはずし、地球の引力圏へと導いてジャブローの真上に落とすという作戦(ブリティッシュ作戦)を、ギレンが考案した。ドズルはそれに乗った。作戦の実行部隊として、自らのモビルスーツ隊をドズルに指名されたランバ・ラル大尉は、悪魔の所業であると拒否し、軍を去った。ティアンム中将の艦隊はアイランド・イフッシュを砲撃したが、コロニーは三つに割れて地球に落下した。ジャブローのあるギアナ高地直撃はならなかったものの、ジオンのコロニー落としは二次被害まで含めると、地球の総人口の約半数を失わしめるものとなった。開戦から一週間でハッテは制圧された。次にギレンが狙うのは、いまだどちらに与するか旗幟を鮮明にしないサイド5(ルウム)であった。緒戦の勝利をもって優位に和平交渉を進めるつもりのデギンと、ルウム制圧を画策するギレンの軋轢は、さらに深まる。キシリアは父親を蔑ろにするギレンに対し、冷ややかな態度で接する。愛妻ゼナとの間に授かった一粒種、ミネバを溺愛するドズル。ドズルは、兄姉間でいがみ合う現在のザビ家を快く思っていない。大量の死を招く戦争自体にも疑問を抱くが、ミネバを護るためであると自身に言い聞かせる。ルウムの病院で医療ボランティアをしているセイラの下へ、密かにタチ中尉が訪ねて来る。タチは、士官学校を退学になったシャアがモビルスーツ乗りの一兵卒として軍に復帰し、勲功を挙げて現在は中尉であること、「赤い彗星」の異名をとって、ジオンのエースパイロットとなっていることをセイラに告げる。また、キャスバルが生きていると確信しているとも告げ、セイラは衝撃を受ける。そこへ、ロジェ・アズナブルから、テアボロが心臓発作で倒れたと知らせが入る。テキサス・コロニーに戻ったセイラに、シャアがキャスバルであることを知らないロジェは、息子シャアに会いにジオンに行くと話す。ジオンの戦艦、グワジン内で開かれている御前会議では、艦隊司令であるドズル中将が作戦を説明していた。ルウムに張り付いているティアンム艦隊は全勢力を傾けて叩くが、じきにやって来るであろうレビル本隊には、それぞれガイア中尉とシャア中尉を中隊長とする特別機動大隊を当てる。それがキャスバルであるとも知らずシャアを見つめる、デギン以下のザビ家の面々。またしてもエデンで管を巻くランバ・ラルの下に、コズン曹長が挨拶にやって来た。コズンはクランプとともに、ルウム戦線に出動する。セイラはテキサス・コロニーでデアボロの看病をしていた。そこへ、暴徒が焼き討ちに来る。セイラは住人に銃を取らせ、自らも銃を手にして抵抗する。その最中、テアボロは息を引き取った。自分たち兄妹のために、しなくてもいい苦労をしたテアボロに心から感謝し、涙を流すセイラ。すばらしいお父さんでした…本当に…ほんとうに…。暴徒の焼き討ちが治まると、上空が光った。シャアのザクがコロニーを攻撃したのだった。全勢力をティアンム艦隊に当て、レビル本隊を別働隊で叩くという御前会議の内容をリークして、策士ギレンは裏をかいた。この攻撃により、アズナブル夫妻の乗ったシャトルは爆発、夫妻は命を落とした。シャアの母艦では、ドレン少尉が指示を出していた。常識はずれの向こう見ずな出撃をするシャアに手を焼くドレンだったが、デニム、スレンダー、コズンら部下の心配をするところを見て、どうせ嫌なやつだろうと思っていたが、案外いいところもあると感想を述べる。シャアはシャアで、叩き上げのドレンは使えそうだと感じるのだった。コロニーに立つ赤いザクを見たセイラの脳裏には、「赤い彗星」の文字が。連邦軍の主力、レビル艦隊と、ジオン軍の特別強襲大隊は、艦隊戦に突入する。
2009/12/30
南米マナウスのマフィアから、ララァを奪う筋者。ララァは、その桁違いの読心能力を闇組織に利用されていた。工事現場で働くシャア。彼は工事用モビルワーカーを巧みに操るようになっていた。カジノでララァとの運命的な出会いを果たすシャア。シャアは筋者からララァを奪い、ララァを奪還しに来たマフィアをモビルワーカーで一掃した。ララァを連れてジオンに戻る決意をするシャア。宇宙世紀0078年、月面都市グラナダ。諜報部のベルクマン少佐と偽夫婦を装い、変装の上キャサリンと名乗ってホテルに投宿したキシリア。目的はミノフスキー博士の亡命阻止と、グラナダへのジオン軍駐屯交渉。連邦がジオニック社との契約を考えていることで揉めているアナハイム社。テはRX-77の開発に成功していたが、ジオンのMS-05(旧ザク)に性能で劣るのではないかと懸念していた。ミノフスキー博士奪還の実働部隊は、ランバ・ラル大尉が指揮するモビルスーツ小隊。ラルが搭乗するのはMS-04で、MS-05に搭乗するのは黒い三連星。先乗りしているのは、モビルスーツ乗りとしてジオン軍に復帰したシャア。ミノフスキー博士はジオニック社に向かわず、亡命すべくフォン・ブラウンを目指していた。察知したジオニック社とジオンが追跡するのは必至であると、連邦のモビルスーツ隊を出すことを進言するテム。ランバ・ラル、ガイア、オルテガ、マッシュ、シャアのモビルスーツ五機は、数で圧倒する連邦のモビルスーツ隊を問題にしなかった。彼我の性能差は明らかであり、テオの懸念は現実のものとなったのである。ミノフスキー博士は大破したモビルスーツの下敷きとなって、死亡した。ジオンのモビルスーツの威力を見せつけた上で、グラナダの市長と軍駐屯を交渉するキシリア。不注意で情報を漏らしたベルクマン少佐をキシリアは誅殺し、軍駐屯を肯なかった市長は、交通事故で不審な死を遂げた。ジオンのモビルスーツの圧倒的な力をまざまざと見せつけられたテムは、サイド7での次期モビルスーツ開発を実現させるべく、アナハイム社で熱弁を揮う。次期モビルスーツはRX-78。コード名はガンダム。サイド7の学校に転校したアムロ。同級生のフラウやハヤト、留年して同級のカイらと出会う。宇宙世紀0079年、ジオン公国は地球連邦に対して宣戦布告。同日、ドズル艦隊は連邦宇宙軍巡航艦隊を撃破。同日、キシリア少将指揮の強襲部隊がグラナダを制圧。さらに、フォン・ブラウンも奪取。同日、サイド2(ハッテ)にも宣戦布告。
2009/12/29
士官学校で抜群の成績を誇るシャアと、学科は優秀ながら実技では平凡な成績に甘んじているガルマ。取り巻きに囲まれるガルマは、すべてにおいて自分を上回り、孤高の存在を貫くシャアを、目の上の瘤のように思っている。ダークコロニーでのモビルスーツ開発計画は、すでに丸二年が経過しようとしていた。成果の挙がらないことに業を煮やしたギレンは視察に訪れ、剥き出しのエンジンを背負った2号機を見て失望し、計画の中止をドズルに命じる。しかし、技術顧問のミノフスキー博士から、動力系は新システムを導入予定であるし、ミノフスキー粒子の影響下ではモビルスーツこそが最も有効な兵器となると説明を受けたギレンは、年内に3号機を開発することを条件に、計画続行を指示した。士官学校の重装行軍訓練で、シャアを負かそうと無理したガルマは遭難。それをシャアは助ける。一転して、良い友達でいてくれとシャアに頼むガルマ。卒業成績の重要な考査材料となる模擬線において、シャアとガルマは見事な連係プレーを見せた。講評の場で、シャアはスペースノイド独立を臭わす質問を連邦軍の軍監に浴びせた。気分を害した軍監はシャアのサンバイザーを問題視し、平手打ちする。ガルマは、シャアは色素異常によりバイザーの装着を許可されているのであり、何ら校規に違反するところはないと軍監に抗議する。士官候補生たちの無言の圧力に屈した軍監は、渋々バイザーを拾った。セイラは医学校へ進もうとしていた。どこかで兄は生きている気がすると、墓前で思うセイラ。士官学校の卒業成績はトップがガルマで、次席がシャアだった。バイザー事件が影響して、シャアは二番になったのではないかと噂する生徒たち。ガルマは得意気に成績をシャアに報告するが、ガルマがトップであることも自分が二番であることも意に介していないシャアは、小天体がサイドに衝突する可能性を口にする。士官学校卒業式。ドズル校長の訓示の最中、シャアの予測したとおり、小天体がサイド3に衝突した。これは、警告を出しそびれた連邦観測局の失態である。掃海任務で小天体の集塵作業に駆り出されたシャアは、そこで初めてモビルワーカーを目にする。ジオニック社が開発中のモビルワーカーは、軍事に転用可能であるとガルマに知らされるシャア。連邦の失態により小天体の衝突を招いたことに憤る民衆は、ジオン共和国独立を叫ぶ。連邦との戦争だけは避けるべきであると考えるデギンと、むしろ独立戦争を仕掛けたがっているギレンは、意見を異にしていた。父親をあからさまに軽視する態度のギレンに苛立つデギン。ジオンと連邦は一触即発の危機にあり、いつ連邦の駐屯部隊が治安出動してもおかしくない状態にあった。治安出動があれば、ズムシティは血の弾圧を受けることになる。それを避けるため、シャアは連邦軍の兵営を奇襲攻撃して、武装解除する計画をガルマに持ち出す。計画はまとまり、士官候補生らの指揮を執ることになったガルマ。以前同室だったムラタから、手製のヘッドギアを贈呈されるシャア。ムラタは直後、戦死。事を知れば鎮圧に向かうであろうドズル校長を足止めする役目を負った、ゼナ・ミア。ゼナの卒業席次は八番目。士官候補生の蜂起は成功し、ガルマの成長に感涙するドズル。一躍、救国の英雄となったガルマ。連邦との交渉に尊大な態度で臨むギレン。連邦側はドズル将軍。デギンの裁定により、連邦軍の撤収を条件に、ジオン側が責任者を厳正に処罰することで交渉は決した。シャアは詰め腹を切らされる形で、一兵卒に降格の上除隊。校長をクビになったドズルは、ゼナに求婚する。南米ブラジリア、連邦のジャブロー計画推進司令本部。推進担当部長のゴップ大将に呼び出された、アナハイム社のテム・レイ。彼は以前、ヤシマ・カンパニーに勤めていたこともある。テオは、ジオンのモビルスーツの映像を見せられる。これは、ジオンから連邦に亡命を考えているらしいミノフスキー博士からもたらされたものだった。ジオンのモビルスーツは4号機まで開発されていた。連邦のモビルスーツ開発計画の技術担当トップに任命されるテオ。地球へ降りるシャア。父親のテオから、再びの宇宙行きを告げられるアムロ。アニメではテオは大尉だったはずだが、ここではアナハイム社の社員となっている。一年戦争開戦のきっかけを作ったのは、デギンでもギレンでもなく、シャアだった。ゼナが士官候補生だったとは!
2009/12/27
シャアの部隊がサイド7を偵察する、かの有名なガンダム冒頭部分の直前を描いた、安彦良和特別描き下ろし「その前夜」を収録。あとは普通にガイドブック。時折挿入される、安彦良和の裏話が興味深い。
2009/12/23
ジンバ・ラルとダイクンの遺児二人は、ラルとは旧知の間柄であるドン・テアポロを頼って地球に下った。キャスバルとアルテイシアはテアボロの養子となり、それぞれエドワウ・マス、セイラ・マスと名乗る。ザビ家の監視下、何事もなく三年余りを過ごした彼らだったが、ザビ家打倒を画策するジンバ・ラルが、アナハイム社のチェルシー副社長と接触したことにより、静穏が破られた。キシリアの刺客がマス邸に侵入し、ジンバ・ラルは惨殺され、テアボロは重傷を負った。キャスバルとアルテイシアにも、甲冑に身を潜めた刺客の手が伸びたが、キャスバルの奮闘により、二人は辛くも逃れることが出来た。包帯だらけのテアボロを見舞いに来た、ヤシマ財閥のシュウ・ヤシマと、その娘のミライ・ヤシマ。ミライ、このとき15歳。ヤシマはテアボロの旧友であり、自分が所有するテキサス・コロニーに遺児二人を移すことを提案する。テキサス・コロニーのあるルウム(サイド5)は、サイド3に最も近い位置にあり、敢えてザビ家が監視しやすい場所に移ることで、ザビ家に対する恭順の意を示す狙いだった。マス邸からの帰り際、窓から覗く遺児二人と目が合うミライ。サイド3。ムンバ自治共和国は、ジオン共和国と名を改めている。ギレンは国民運動部長となり、キシリアは私兵である保安隊の隊長から、正規の軍機関、親衛隊の隊長となっていた。ランバ・ラルはハモンとクランプのナイト・クラブ“エデン”で管を巻いており、連邦の兵士と乱闘騒ぎを起こしていた。そこに、ドズル大佐が現れる。ドズルはランバ・ラルを、サイド3のエキストラ・バンチ、通称ダーク・コロニーへ連れて行く。そこは、連邦のガンタンクを撃滅すべくザビ家が開発中の、モビルワーカーの実験場となっていた。実験パイロットは、ラルがかつて軍曹として知るガイア少尉。そして、同じく伍長だったオルテガ准尉。地球からルウムへ旅立つ、キャスバルとアルテイシア。同じ宙港では、ハロを買ってもらったばかりのアムロと父親が、サイド7へ旅立っていった。塔に幽閉され、一切の情報をシャットアウトされていたアストライアの下へ、ハモンがやって来た。アストライアはハモンの口から、ローゼルシアが死んだことや、子供たちがマス家の養子となって元気でいることなどを聞く。アルテイシアの書いた手紙は、一通もアストライアの下へは届いていない。ランバ・ラルは自らモビルワーカーに乗り込み、マッシュ軍曹とデータ収集のための模擬戦を行う。ラルはマッシュを負かすが、実戦さながらの殺し合いとなって双方とも負傷する。傷を負った体で、相変わらずタチ少尉がボランティアで警備する“エデン”に赴くランバ・ラル。ハモンから、アストライアに会ったこと、それはドズルの計らいであろうことなどを聞く。キャスバルとアルテイシアは、テキサス・ビレッジのマネージャー、ロジェとミシェルのアズナブル夫妻の厄介になることになった。アズナブル家には、キャスバルと瓜二つの息子、シャアがいた。同い年の二人は、たちまち意気投合する。キャスバルの下へ、母、アストライアの訃報が届く。絶叫するアルテイシア。母親の死を境に、二人は変わる。優しかったアルテイシアは、からんできた不良を平手打ちをする強さを身につけ、キャスバルは剥き出しのナイフのような危険な香りを放っていた。あまりに才気走って、田舎の学校の枠には収まりきらないキャスバルを持て余す校長。キャスバルはルウムの学校に行くことになった。ジオンの士官学校に合格し、ジオン・ダイクンの思想を借りるギレンの演説にどっぷりはまったシャア・アズナブル。それを冷ややかに見つめるキャスバル。テアボロにはルウムへ行くと云って出てきたキャスバルは、士官学校宿舎に行くシャアとともにジオンに向かう。キャスバルがテキサス・コロニーを出たことを知ったキシリアは、キャスバル抹殺命令を出す。自分がテキサス・コロニーを出れば、ザビ家が放っておくはずはないと知っているキャスバルは、巧みにシャアと入れ替わり、無事に宙港を出た。シャアはキャスバルの身代わりとなって爆死し、キシリアの下へはキャスバル死亡の報告がもたらされた。士官学校入校式。演説するギレンと、校長のドズル。来賓には、連邦宇宙軍総司令、レビル中将。シャア・アズナブルとなって士官学校に入校したキャスバルは、同期のガルマとともに出席。丸ごと安彦良和のオリジナル。やはり安彦良和にとっての主人公はアムロではなく、キャスバルとアルテイシアの兄妹なのだろう。15歳のミライは、地球のマス邸でキャスバルとアルテイシアの二人と顔を合わせていたし、建設中のサイド7へ父親と行くアムロを、アルテイシアは宙港で目撃していた。また、後に「黒い三連星」と渾名されて連邦に恐れられる、ガイア、オルテガ、マッシュの三人は、ジオンのモビルスーツ開発の最初期からパイロットを務めていたことが明かされ、しかも、ランバ・ラルとも関わっていた。キャスバルがエドワウから、どうやってシャアとなったのか、これでよくわかった。
2009/12/22
これまで、いろんな“名”探偵に接したきたが、ここまで無能、というより非道な探偵にお目にかかるのは初めて。過去最低の探偵だ、ロジャー・シェリンガムは。このバカ探偵、自殺に見える事件が実は殺人であると目星をつけたまではいいが、あろうことか、これを自殺で片付けようとする。そのためには手段を選ばず、証拠は隠滅するわ捏造するわ、自ら偽証するのみならず、周囲にも偽証を強要して口裏を合わそうとするわ、もう、やりたい放題。で、結局自殺で片付けられたものの、彼の努力はまったく実っておらず、結果オーライ。ただかき回しただけ。ある意味、メタ・ミステリー。
2009/12/21
シャアが戻ってきたと報告するアムロ。それを聞いてナーバスになるセイラ。スレッガー中尉以下4名のスレッガー隊が、ホワイト・ベースに転属してくる。男のことで悩んでいる相が出ているとスレッガーに指摘され、兄、シャアのことを思うセイラ。セイラの回想から、舞台は宇宙世紀0063年、サイド3のムンゾ共和国(後のジオン公国)へと移る。ジオン・ズム・ダイクン議長は演説中に心臓発作で倒れ、手当ての甲斐なく死去。キャスバルとアルテイシアを連れ、夫の死の床に駆けつけるアストライア・トア・ダイクン。アストライアにダイクンの死を報告するデギン。ジンバ・ラルは、ダイクンはザビ家に暗殺されたと憤る。アストライアと二人の子は、暴徒のいる自宅を避け、ジンバ・ラルの息子、ランバ・ラル大尉に護衛されてラル邸に行こうとするが、暴徒に阻まれて先を進めない。そこへ騎馬隊を率いて現れたのが、キシリア保安隊隊長。キシリアは暴徒を一蹴し、アストライアらは無事にラル邸に着く。ザビ家の次兄、サスロ国民運動部長に事の次第を報告したキシリアは、ダイクンの遺児をみすみすラル家に渡すとは何事かと平手打ちを喰らう。ダイクンの葬儀。自分と同世代のキャスバルが気になる様子の、ザビ家の末弟、ガルマ。サスロとドズルの乗った車が爆破され、サスロは死亡。ドズルは大怪我を負った。ドズルの顔の縫い傷は、このときのもの。この爆破は、サスロに侮辱されたキシリアの手になるものだったが、マスコミはラル家による暗殺であるかのように報道した。ザビ家はこれを奇禍とし、マスコミの報じるままに捨て置く。暴徒に取り囲まれるラル邸。単細胞のドズル少佐は、サスロはラル家に殺されたと信じているが、ランバ・ラルを買ってもいた。ザビ家独裁の布石を敷くデキンは、まだまだ陰謀家としては未熟の長兄、ギレンを窘める。変装してナイト・クラブ“エデン”に忍び込むランバ・ラル。このクラブのママは、ランバ・ラルとは昔馴染みのクラウレ・ハモンであった。バーテンダーはクランプ。ハモンに憧れ、警備のボランティアを買って出ているのは、タチ少尉。商売柄お偉いさんに顔の利くハモンに、ランバ・ラルは父親とダイクン一家の地球亡命の手助けを頼む。デギン新議長の代理としてキャスバルと話に来たと、ラル邸に乗り込んできたキシリア。キシリアはキャスバルを子供と侮り、手錠をかけて脅す。そのキシリアに対して一歩も引かず、毅然とした態度で見下す、11歳のキャスバル。キャスバル・レム・ダイクンが命令する!これをはずせ!!キャスバルを亡き者にするか、サイド3から放逐するかのいずれかの処置を取るべきであると、ギレンに提案するキシリア。ダイクン家の処遇は考えてあるから、お前に忠告されるいわれはないと、冷たく言い放つギレン。似たもの同士のこの兄妹の確執は、この時期からすでに始まっていた。アストライア母子がダイクン邸に戻ると、そこには、ジオン・ダイクンの先妻、ローゼルシアがいた。石女のローゼルシアは、ダイクン家のために已む無く、ダイクンがクラブ歌手にすぎないアストライアと結婚することを認めたが、いまだに自分こそが正統なダイクンの妻であると認識しており、ことさらアストライアを弄るのだった。アストライアを屋敷の塔に幽閉するつもりのローゼルシア。子供たちとの最後の一夜を塔で過ごすアストライア。何も知らないアルテイシアは、新しい家を気に入ったと御機嫌だった。連邦駐屯軍の特別任務と称し、偽将校を騙ってガンタンクに乗り込むハモン。狙うは、ダイクンの遺児二人の身柄。遺児を奪われたと知って、保安隊を出動するキシリア。進路を塞ごうとするガンタンク部隊に発砲するキャスバル。かわいそうだからやめてと兄に懇願する、心優しいアルテイシア。ガンタンクを捨てた三人を拾ったランバ・ラルは、ゲートに向かう。タチ少尉の手引きで、遺児とジンバ・ラルはコンテナに入って脱出することになっていた。コンテナを載せたカーゴが出発するところで、キシリアがゲートに到着。キシリアは遺児を見逃し、ランバ・ラルに恩を売る。ほぼ丸ごと、アニメにはない話。安彦良和の真骨頂。一年戦争どころか、ジオン公国がまだムンゾ自治共和国だった頃の話で、当然ガンダムは登場しない。アニメでは、ジオン公国の前身はジオン共和国だったはずだが、ここではムンゾ自治共和国。ザビ家の五兄姉弟のうち、ギレンの地位は不明。サスロが国民運動部長。デギンはムンゾ防衛隊首都バンチ司令部少佐。キシリアは保安隊隊長。ガルマはまだ子供。一年戦争時には「父上も老いた」とギレンを嘆息させたデギンが、ここでは陰謀家として全盛期を迎えつつあり、いまだ未熟なギレンを窘めたり、そのギレンとキシリアの確執がすでに始まっていたり、ザビ家の人間関係はなかなかおもしろいものがある。ランバ・ラルはこの時点ですでに大尉で、してみると、この後まったく昇進しなかったのか。キャスバルとアルテイシアの生母、アストライアと、ランバ・ラルの愛人、クラウレ・ハモンが、同じクラブの歌手だったことや、ジオン・ダイクンには先妻があって、それが石女だったことなど、新たな事実が次々と明かされる。猫と戯れる、幼き日のアルテイシア。これだけで飯が食える。
2009/12/20
遂にホワイト・ベースは、ジャブローに到着。ホワイト・ベースのバックアップ・チームの主任は、故マチルダ中尉の婚約者だった、ウッディ大尉。これまで、対外的には補給艦、内実は強襲揚陸艦として中途半端な位置にあったホワイト・ベースは、宇宙戦艦に改修され、ペガサス級一番艦となる。ゴップ大将の口から、ミライに婚約者があることを知るブライト。ニュータイプの被験者として検査漬けにされるアムロ。軍属となったホワイト・ベース乗組員は、それぞれ辞令を受ける。ブライトは中尉から大尉へ、ミライとアムロは准尉、セイラとジョブ・ジョンは曹長、カイは伍長、ハヤトは兵長にそれぞれ任官。戦死したリュウは、曹長から少尉に三階級特進。フラウは医療ボランティアとして、準軍属となった。原住民の協力を得て、ジャブローに侵入するシャア少佐。シャアはズゴック、赤鼻らはアッガイに搭乗。シャアの傍らには、右腕のドレンがひかえる。ガンダムには、パイロット脱出用のコア・パーツを搭載することになった。シミュレーションを受けるアムロ。保育施設を脱走したカツ、レツ、キッカは、連邦軍の量産型新モビルスーツ、ジムに爆弾を仕掛けている赤鼻らに見つかった。縛り上げられて放置された彼らだったが、自力で縄を解いて爆弾を除去。ガルシア少将によるジャブロー総攻撃が始まった。ガルシアは移動要塞アッザムに搭乗。スレッガー中尉率いる小隊は、ジムで出撃。赤鼻のアッガイは、ジムに撃破された。ジムの白い機体に、すでにジオン軍には勇名が轟いているガンダムを連想するザク隊は、浮き足立つ。レビルの陽動作戦にまんまとはまったガルシアは、工事地区に誘き出されて全滅。アムロはジムで出撃。シャアのズゴックとまみえる。ガンダムに数段劣る性能のジムでは、シャアと互角に渡り合えることはできず、アムロは危地に陥る。そこにウッディ大尉のファンファンが現れ、シャアのズゴックに体当たりした。リュウ、マチルダに続き、ウッディ大尉も身を挺してガンダムを守ることになった。基地内でシャアと遭遇するセイラ。互いにキャスバル、アルテイシアと認識する二人。シャアはセイラに、艦から降りるよう命じる。ブライトらの階級は、整合性を求めてアニメとはまったく異なる。シャアも、アニメとは違って少佐のまま。ドレンもシャアの副官のまま。スレッガーがこのタイミングで、しかもジムのパイロット・チームとして登場するとは予想外。さらに驚くべきはアッザムの使われ方で、アニメではマ・クベの鉱山でガンダムを苦しめたはずだが、まさかジャブロー総攻撃で登場するとは。ゾックの代役か。ズゴックのデザインがアニメとは微妙に変わって、カッコ悪くなっている。
2009/12/19
リマ基地で補給を受けるホワイト・ベース。オデッサのマ・クベの下には、ガイア、オルテガ、マッシュの黒い三連星が、新型重モビルスーツ、ドム三機とともに到着した。マチルダと記念撮影に興じるアムロら。ジャブローの連邦軍総司令部では、レビル大将が陽動作戦を発令。この作戦は、実はジオンのスパイであるエルラン中将とジュダックによって、ジオンには筒抜けだった。ホワイト・ベースは、中立地帯のクスコへ降り立つ。そこには、黒い三連星のドムも居た。クスコの町で、黒い三連星と一悶着起こすハヤト。情報部のタチ中尉から木馬の情報を得て、ギャロップでランバ・ラルの仇討ちに出るハモン。ドムの慣熟訓練中にギャロップを目撃する、黒い三連星。クスコからジャブローへの飛行中、ホワイト・ベースはギャロップの攻撃を受ける。前回の戦闘でガンキャノンを大破させていたカイは、鹵獲したザクにガンキャノンの頭を付けた“キャノンザク”で出撃。ギャロップは爆薬を積んで、ホワイト・ベースに特攻。それを押しとどめようとするガンダムの背に、ハモンはマゼラ・トップで照準を定める。リュウのコア・ファイターがマゼラ・トップに体当たりして、ガンダムは絶体絶命の危機を脱したが、リュウは帰らぬ人となった。夜を徹してホワイト・ベースの修理に励むマチルダ。マチルダに死の影を見るミライ。黒い三連星が襲来。必殺のジェット・ストリーム・アタックを、ガイア機を踏み台にして破ったガンダムは、マッシュ機を撃破。ガンダムのピンチと見てミデアで出撃したマチルダは、オルテガ機に叩き潰された。リュウに続き、マチルダまでもが帰らぬ人に。だんだん、アニメにはない場面が増えてきた。クスコのエピソードは、丸ごとアニメにはないはず。“キャノンザク”は、ZZの「ザク頭ガンダム」または「モノアイ・ガンダム」の逆のパターンだが、これはいただけない。ふざけすぎ。
2009/12/16
砂漠にガンダムを隠し、町へ行くアムロ。単独でアムロ捜索に出るフラウ。店で食事をとるアムロは、ランバ・ラル隊に遭遇。その物言いをハモンとラルに気に入られる。表に停めてあるトレーラーのザクを見て、ラル隊の兵士に捕まったフラウ。連邦軍であることを知られたアムロ。二人がホワイト・ベースの所属であると見当をつけたランバ・ラルは、わざとフラウを開放して、ホワイト・ベースに戻るフラウの後をつけさす。執拗に捕虜に接触して、クルーの不審を招くセイラ。三度ホワイト・ベースを襲うランバ・ラル隊。艦内の混乱に乗じて脱走を図るコズン。それを阻止しようとするセイラ。錠を壊そうとしたオムルのバズーカに直撃されたコズンは、ホワイト・ベースの外に放り出された。気にすることはないわ。わたしたちだって、いつああなるか…。ガンダムでホワイト・ベースにかけつけるアムロ。グフとガンダムは死闘の最中、ともに操縦席が剥き出しになった。お互いのパイロットの素性を知る、ランバ・ラルとアムロ。ガンダムにグフを破壊されたラルは、脱出。見事だな!しかしぼうず!自分の力で勝ったのではないぞ!そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな!独房に入れられ、悪態の限りを尽くすアムロ。そんなアムロを、周囲は冷ややかな目で見る。ボクがいちばんうまくガンダムをつかえるんだ!スパイ容疑で拘束され、尋問されるセイラ。セイラを信じているミライは、古参士官に同調するブライトに失望する。兄、シャアの生存が確認でき、安堵するセイラ。グフを失ったランバ・ラルは、ドムの補給を受けようとするが、ジャブロー総攻撃に備えてモビルスーツは払底状態にあると、マ・クベに拒否される。白兵戦を仕掛けるつもりのラルを、「戦馬鹿」と揶揄するウラガン。カイ、ハヤト、マクシミリアン、ハワドの四名が、乗組員の意思がばらばらになったホワイト・ベースに嫌気が差し、脱走。怒り心頭で単身追いかけるリュウ。追いついたリュウは、カイらを叩きのめすが、ハヤトに「何のために戦って死ぬのか」と問われ、返答に窮す。ランバ・ラル隊の歩兵戦闘車キュイを目撃した彼らは、言い争っている場合ではなくなり、ホワイト・ベースに取って返す。ランバ・ラルがやって来ることを察知し、闘争心を燃やすアムロ。初めての、生身の人間による銃撃戦に大混乱をきたすホワイト・ベース。艦内に子供が居ることに衝撃を受けるクランプ少尉。アムロに、ガンダムでの出撃命令を出すブライト。ランバ・ラルとセイラの遭遇。かつて仕えたジオン・ズム・ダイクンの令嬢であるアルテイシアの姿を見て、呆然とするラル。隙の出来たラルはリュウに狙撃され、深手を負う。手榴弾を胸に抱き、ガンダムにアタックして果てるラル。セイラが執拗にコズンと接触を図る場面に筆を割いており、安彦良和にとっては、シャアとセイラの兄妹こそがこの物語の主人公なのだろう。
2009/12/15
ガルマの戦死を国威発揚に利用しようとするギレンと、老いて愛息の死を嘆くばかりのデギン。肝心なときにガルマを守れなかったシャアを除隊処分にしたと息巻くドズルと、それを聞いてなにやら画策する風のキシリア。マチルダへの憧憬を隠そうともしないアムロと、アムロが自分から遠い存在になっていくのを悲しむフラウ。ドズル中将直々の命により、ガルマの仇討ちに地球へ降り立つランバ・ラル大尉。その脇には、常にクラウレ・ハモンの姿がある。大気圏を突破した、ジオンの新造戦艦ザンジバルは、“木馬”を発見。ランバ・ラルは新型モビルスーツ、グフに搭乗し、アコーズとコズンのザク二機を従えて木馬を急襲。ザクの性能を大きく上回るグフに翻弄されるガンダム。アムロは自らの未熟さを思い知らされる。ガルマの国葬におけるギレンの演説は、全世界に放送されていた。シャアはカラカスの酒場でそれを聞いていたが、そこにキシリア配下の親衛隊が接触してくる。ジャブロー攻撃軍司令官、ガルシア・ロメオ少将の下に、キシリアが視察に赴く。地球侵攻軍総司令、オデッサのマ・クベ中将に対する愚痴をこぼすロメオと、いまだにジャブローの開口部を見つけられないロメオを皮肉るキシリア。キシリアの尋問を受けるシャア。シャアはキシリアに拘束されるまで、ジャブロー近辺を独自に探索しており、すでに開口部を見つけていた。ランバ・ラルからザンジバルを受領する、マ・クベ腹心のウラガン中尉。ランバ・ラルはギャロップ一台で、木馬を追うことになる。北宋の壺を愛でるマ・クベ。彼は、ランバ・ラルとの補給の約束を守るつもりなどない。ランバ・ラル隊が再び木馬を襲う。ランバ・ラルのグフにいいようにあしらわれ、彼我の実力の差に打ちのめされるアムロ。アコーズのザクはガンキャノンにやられた。グフに左脚を破壊されたガンダムを鹵獲しようとし、深追いしたコズンのザクは、カイのキャノンにモノアイを破壊され、逆に鹵獲される。捕虜としてホワイト・ベースに収容されたコズン。コズンからシャアの安否を得ようとするセイラ。アムロをガンダムから降ろす相談をするブライトとミライ。それを偶然耳にしたアムロはショックを受け、ガンダムで脱走する。マ・クベは大佐ではなく、中将。キシリアはアニメと同じく少将なので、軍の階級ではマ・クベの方が上になるが、マ・クベはキシリアにはへりくだった態度を取っているようだ。どうやら、連邦のモビルスーツはコア・システムをとっていないようで、上下に分離する場面はない。そうなると、かなり先の話になるが、アムロがア・バオア・クーからコ・アファイターで脱出する最後のシーンは、どうするつもりだろう。
2009/12/14
最終巻。遂に未完のまま終了した。残された原稿は、通常の分量の半分である二百枚であったため、本の厚さも普段の半分。正編では初となる、「作者あとがき」ではない解説が付き、何から何まで異例の体裁となった。解説を書いているのは作者の夫君であり、最初の担当編集者でもあった、今岡清。思えば、第1巻の「豹頭の仮面」が上梓されたのが、30年前のこと。福家書店で加藤直之の手になる表紙を一目見て、迷わずレジに持って行った、高校1年のあの日が懐かしく思い出される。グイン一行がケス河に飛び込んで第1巻が終わった時の感動は、いまだに忘れられない。それが九大病院の待合室での出来事だったことまで、はっきり覚えている。作者がミュージカルの演出を手がけるようになった影響からか、内容があらぬ方向に変わったり、原稿が手書きからワープロになって文章が雑になったりと、いろいろ紆余曲折はあったが、こうして本当に終わってしまうと、やはり寂寥感に苛まれる。
2009/12/13
ビーチで日光浴に勤しむミライとセイラ。セイラの肢体を舐めるように見るカイ。母親が残って居るはずの故郷、ロサリトへ赴くアムロ。家には母親の姿はなく、連邦軍の兵士たちが勝手に入り込んでどんちゃん騒ぎをしていた。昔馴染みの近所の小母さんから、母親がキャンプに居ることを聞いて、急行するアムロ。母親と感動の再会を果たす。しかしそのキャンプは、ジオンの占領下にあった。アムロはジオンの見回りに見つかり、思わず狙撃する。すさんだとアムロを詰るカマリア。戦時下にあれば当然の行為であると意に介さないアムロ。アムロはキャンプから脱出し、迎えに来たセイラ、カイと合流するも、ジオンの追跡に遭う。あわやというところにホワイト・ベースが現れ、危地を脱する三名。アムロ、母との別れ。“お子様をお預かり”するブライト。振り返ってカマリアを見るフラウの目が悲しい。ロス市長、エッシェンバッハのパーティー会場。連邦派の市長は、対ジオンのゲリラ戦を画策。また、娘、イセリナとガルマの交際を認めない。ゲリラ戦に乗じてロス奪回を図る連邦の作戦に参加するホワイト・ベースは、コンベンション・ホールのドームに隠れて待機。木馬の情報を得たガルマは、自らガウで出撃。ガウに同乗していたシャアは、ザク三機で索敵に出る。シャアの陽動により、まんまとホワイト・ベースの正面に誘き出されたガルマのガウは、ホワイト・ベースの一斉射撃で轟沈。キミの生まれの不幸を呪うがいい。きみはいい友人だったが、きみの父上がいけないのだよ。謀ったな、シャア。エッシェンバッハはジオン軍に射殺された。ガルマ戦死の報を聞いたデギンは、思わず杖を取り落としたという。ほぼアニメに忠実だが、カイがセイラを性的な対象としている等、そこここに見られる微妙な性描写は、アニメにはなかったもの。あと、ホワイト・ベースが身を隠すドームは、アニメでは野球場だったはず。
2009/12/12
大気圏を突破したシャアのカプセルは、ガルマのガウに収容される。ガウはホワイト・ベースを急襲。アムロは駄々をこねて出撃拒否し、ブライトにぶたれる。親父にだってぶたれたことないのに!フラウが戦闘に参加しようとする姿を見て、出撃する覚悟を決めたアムロ。くやしいけど、ボクは男なんだよ、な。シャワーを浴びるシャアと、お坊ちゃん気質丸出しで、姉、キシリアのことを話すガルマ。イセリナとの逢瀬を楽しむガルマと、それを、如何にも腹に一物ある眼差しで見るシャア。サイド7でホワイト・ベースに収容された避難民たちが、離艦を求めて反乱。やむなくホワイト・ベースは、ガルマに休戦を申し入れて、ガンペリーで避難民を地上に降ろそうとする。双方の軍は休戦中に暗躍、休戦期限が切れると同時に戦闘に入る。セントアンジュに向かう避難民母子と、ジオン軍兵士の交流。シャアのザク隊の猛攻を受け、罠とわかっていながら湖の対岸に逃げるホワイト・ベース。そこに現れたのは、マチルダのミデア。ホワイト・ベースに回頭するよう警告する。対岸で待ち構えていたガルマのマゼラ隊は、ホワイト・ベースを取り逃がした。マチルダにエスパーと云われ、顔を赤らめるアムロと、それを面白くないと思うフラウ。避難民の大半とお荷物のリード大尉は、ミデアに移った。ガンダムがドップ相手に、地上で空中戦を仕掛ける場面では、ショルダーキャノンを装備。アニメでは出てこない武器のはず。「だったら、こんな所で食べさせるな!」の、あのシーンは、胸に迫る。
2009/12/03
ガデムの補給を受けるシャアと、その隙を狙って攻撃をしかけるホワイト・ベース。ただし、アムロのガンダムは出撃せず、ガンキャノンとガンタンクがそれぞれ3機ずつ出る。ホワイト・ベースは7機のモビルスーツを格納していることになる。カイとジョブ・ジョンはキャノン、リュウとハヤトはタンクに搭乗。ジョブ・ジョンはこの時点で伍長。自身の艦を破壊されたガデムは、旧ザクで連邦のモビルスーツ隊に格闘戦を挑むが、リュウとハヤトのガンタンクに至近距離から撃たれて敗れ去る。補給を終えたシャアのムサイを撃墜する寸前で、ホワイト・ベースはルナツーのマゼランに拘引される。ルナツーを歩兵部隊で襲撃したシャアは、マゼランを破壊。ガンダムのデータ収集中、シャアはセイラと出会う。パオロ艦長は逝き、そのパオロ予備役大佐の教え子であるルナツー司令、ワッケイン少将は、パオロの意志を継ぎ、ホワイト・ベースをジャブローへ送り出す。大気圏突入寸前でモビルスーツ戦をしかけてきたシャアに応戦する、アムロのガンダム。着艦のタイミングを逸したガンダムは、ホワイト・ベースの影に隠れて大気圏を突破する。シャアの攻撃により進路をずらされたホワイト・ベースは、南米ジャブローではなく、ジオンの勢力範囲である北米に降り立った。迎え撃つは、シャアから情報をもたらされたガルマ大佐。この巻は、シャアの存在感が圧倒的。
2009/12/01
初版は2002年で、2009年のこの版は第21刷。TV版にほぼ忠実に進行するが、アムロが搭乗したガンダムは連邦初のモビルスーツではなく、新型モビルスーツの2号機となっている。型式はRX78-02。ガンタンクやジムらしき機体は旧型に属し、ガンダムの性能収集のための模擬戦で標的にされていたらしい。連邦の新造艦“木馬”の情報を察知したシャアのムサイから、偵察に出てコロニーに侵入したザクは5機。アニメでは3機だった。ガンダム1号機は侵入したザクを2機、撃破したものの、破れた隔壁から宙域に放り出された。スレンダーのザクは待機。デニムは功を焦るジーンを抑えられず、2機のザクは偵察任務の域を越えてコロニー内で戦闘に入る。アニメ通り。ブライトは士官候補生ではなく、当初から中尉。リュウもパイロット候補生ではなく、はじめから軍曹。セイラは新入りの医療ボランティア。アムロ、フラウ、ハヤトはアニメ通りの設定。セイラがカイをビンタして「軟弱者」と詰るシーンは再現されているが、その折、フラウとカイは面識があるような描き方をされている。安彦キャラが紙上で動く。こりゃたまらん。
2009/11/30
訳は杉山好。前半でバッハの生涯を詳述し、後半は作品解説に費やす。写真や譜面をふんだんに用いて、また、細かく注釈をつけて実に丁寧に書いてあるが、内容があまりに高尚すぎてついていけない。「ウィーン」を「ヴィーン」と表記するあたりは、「クリムゾン」を「クリムズン」と表記する某音楽誌が思い浮かぶ。
2009/11/27
ミス・マープル最後の事件。章題に採用されている「回想の中の殺人」とするよりも、原題のままのこのタイトルの方が、むしろインパクトがある。なんでも訳せばいいというもんでもないのか。翻訳とは難しいものよ。初めて訪れたはずの家に見覚えがあると感じる冒頭部分は、なるほどホラーの趣き。ヒチコックの「レベッカ」を思い起こした。その冒頭部分に引っ張られて、すんなり作品世界に没入。あとは最後までどっぷり浸るのみ。マープルものでは、これまでで一番。これで手持ちのクリスティーが尽きた。買出しに行かねば?
2009/11/24
長らく絶版になっていた傑作が、新訳で登場。前半はありふれた群像劇。その群像が、殺されたベストセラー作家が実は記憶喪失患者だったと分かるところから、有機的に絡み合っていく。そして、最後に明かされる、ベストセラー作家の秘中の秘。それは記憶喪失どころの話ではないのだ。タイトルとの符合。正に傑作。殺害のトリックなど、ほんの付け足しに過ぎない。「なぜ殺されたのか」こそが醍醐味であり、「どうやって殺されたのか」は問題ではない。巧妙に張られた伏線には、舌を巻くばかり。
2009/11/23
ホット・パンツ再登場。彼女、今まで何してたんだっけ?そのホット・パンツとタッグを組んだディオは、大統領に敗れ去った。次巻ではいよいよ、ジャイロとジョニィが大統領に挑むのだろうか。
2009/11/17
少女漫画を活字にしたようなもので、なるほど、腐女子の間で密かにリバイバルとなっているわけだ。といっても、昨今のケータイ小説のような軽佻浮薄な代物ではなく、独特のリリカルな文体で少女の心理を濃密に描写しており、ヤオイとは一線を画す。それでも、壮嗣はじめ男性キャラたちは、少女の思い描く理想化された男性像でしかなく、その意味では限りなくヤオイに近い。どうやら「館」シリーズの方がミステリーらしく、こちらは「孤児」シリーズか?斉藤由貴主演で相米慎二が映画化した「雪の断章」とは、姉妹編の関係になるらしい。壮嗣を巡って、姉妹、従姉妹間で恋の鞘当が演じられるのはともかく、よくわからないのが、企業間の争い。シリーズ第1作となる「雪の断章」を読めば、それがわかるのだろうか。いずれにしても、企業の派閥争いに少女の人生が人身御供とされるのは、いくらなんでも現実離れしている。平安王朝ものの時代を現代に置き換えただけの印象。そもそも、壮嗣と本岡四姉妹は叔父姪の間柄で法的に婚姻は不可能なはずなのだが、それなのになぜ、骨肉相食む恋愛劇が演じられるのだろう。末娘の織に至っては、叔父が孤児の昭菜といい仲だったとわかった瞬間、発狂してしまう。自分が壮嗣と結婚できないのははじめからわかっていたはずなのに。
2009/11/16