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マックス爺のエッセイ風日記

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2008.08.27
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カテゴリ:生活雑記
 先だっての日曜日は東京へ行く予定だった。目覚ましは5時半にセットしていたのだが、目覚めたのはいつも通りの4時半だった。居間に明かりが点いている。不思議に思って覗くと妻が手紙を書いていた。これを次男に渡してくれと言って手紙とお金が入った封筒を私によこした。

 東京へは友人の個展を観るために行くのだが、折角だから一人で東京暮らしをしている次男にも会おう。そう思って妻に話すと、携帯電話から何度かメールで連絡をしてくれていた。封筒を手渡す妻の顔は涙で汚れ、言葉は泣き声で震えていた。つい最近転職したばかりの次男。18歳で東京へ出てから、どれだけ親に心配を掛け続けたか。

 東京へはバスで行った。車窓から見えるのは雨の淋しい風景だけだ。この日、私は1冊の本を持ってバスに乗った。暫く前に偶然買った「OKバジ」こと、垣見一雅氏の著書だ。氏はもう十数年来ネパールの貧しい農村で支援活動を続けている奇特な人だ。日本での英語教師の職を捨て、ほとんど手探り状態でのボランティア活動を開始した氏の考え方とこれまでの活動が、手に取るように理解できた。

 東京駅前の八重洲通りには予定の45分ほど前に着いた。JRで有楽町まで行き、駅前の「交通会館」地下の画廊へ急ぐと、中に一人の若い女性が居た。友人F田氏のお嬢さんで、北茨城市でガラス工芸の修行中とのこと。F田氏は筑波時代の後輩で、今でも年に1回麻雀大会を開く悪友の一人。現在はある私学で教鞭を執っている。

 暫くしてF田氏が戻った。私を見つけ「わざわざ遠くから来てくれて有難う」と近寄る。その顔がかなりやつれている。この個展に力を注いだ疲れが出たのだろう。パネルに和紙を張った独特の画材。そこに墨と胡粉で描いた日本画調の絵。描いたのは滝。仙台郊外に在る「秋保大滝」と聞いた。雄渾な筆遣い。ほとばしる水の勢い。彼にしか描けない独特の世界だろう。還暦を迎えたこれからは、毎年1度は個展を開きたいとのこと。夜は筑波時代の仲間と夕食の予定だそうだ。その仲間によろしくと言って別れた。

 次男と待ち合わせるため再び有楽町駅へ。ところが待てど暮らせど次男は来ない。仕方なく妻から借りた携帯電話で連絡するも留守電のまま。何度か駅の周囲を廻った頃、後ろから声。バスが早く着き過ぎたため、私が待ち合わせの時間を間違えていたのだ。画廊に引き返し、F田氏に次男を紹介。次男にも絵を見せたかったこともある。

 そこから銀座、新橋、汐留と歩いた。どこも地理は良く知らない。次男は最近まで銀座で働いていたため、裏通りまで良く知っている。汐留の新しい高層ビルは見上げると余りにも鋭角的でクラクラする。結局新橋駅近くの喫茶店で話をした。30過ぎてもなおフラフラしている我が息子。妻が心配するのも無理はないが、彼なりに考えていることだけは分かった。彼の貧乏は何時まで続くのか。そして私達夫婦の心配は何時になったら霧散するのか。

 帰りの新幹線で再び「OKバジ」の本を読んだ。ネパールの片田舎で貧しい農民のために骨を折り続ける日本人のOKバジ。忙しい生活の中で趣味の絵を描き、今回個展を開いた悪友。そして当分不安定な生活が続きそうな我が次男。どんな人生でも良いさ。それが満足できるものであれば。一人の人間として、一人の友人として、一人の親として何かを感じ、何かを考えた雨の日だった。

<参考> 垣見一雅著「OKバジ」サンパティック・カフェ発行 1800円+税
ISBN4-7952-1386-0           





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Last updated  2008.08.27 17:38:03
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