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カテゴリ:惚れ薬
緋毛氈が敷き詰められた幕の中には、出入り口から最も 遠い場所が少し高く仕立ててあります。 それが上座となるのか、そこに座った樋津の大殿さまは すこぶる上機嫌のようです。 きょうは娘の和枝とその子ども和之助を交えて十名ほど の従者たちを引き連れた花見、ゆったりとくつろぐ大殿 さまの機嫌が良いのも頷けます。 三年前、乾家老に第一子が誕生するとまもなく樋津家の 当主孝政の婚儀が執り行われました。 その次の年には世継ぎの男子が誕生し、次いで和枝の再 びの懐妊と、たて続けに吉事が続いたために大殿さまの 喜びようは大変なもので 「もう儂なぞ、いつ死のうとも良いのじゃ」 などと言ってはばからないのですが、その言葉とは裏腹 に顔の色艶や張りのある声などは生気に満ちています。 きょうの樋津家の花見の宴には自ら出向き、極上の酒を 角樽に入れたものを献上した桐屋丑蔵なども、 「これ桐屋、おぬしも中々に隅に置けぬ男じゃの。 聞いておるぞ フォ~ッフォッフォッホ~」 「いえ、決してそんな。手前は ベ、別に」 大殿さまにいいようにあしらわれてへどもどするばかり。 隅に置けぬと言われた丑蔵の盃に、折からの風にひらり と舞い落ちた桜の花びら一枚・・・ どうやら丑蔵にも春が訪れたのかもしれません。 ・・・・・・・惚れ薬(八十二) にほんブログ村ランキング参加中 このお話し、こちらが第一話めとなっております。 途切れることなく続けてご覧になれます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
丑蔵にも春が・・・おおっ、男と女って、どうなるか分からないものですね。まあ、丑蔵さんにもいいところがあるし、オッサンとしては、幸せな晩年を過ごして欲しい気もしますが、さて・・・
(2011年01月16日 12時41分13秒)
幸せな晩年というのは何よりですよね。
若い時に不遇でも晩年が穏やかな心境で過ごせたら良いですね。 それには心がけみたいなものも関係してくるのでしょうか。 ..... (2011年01月16日 20時36分38秒) |
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