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テーマ:サッカーあれこれ(19851)
カテゴリ:イラン代表
![]() 23名の最終メンバーを発表した後、ブランコ・イバンコヴィッチはメディアのインタビューに答え本大会でのプランについて言及した。まずシステムについては本来の4-1-3-2に加え4-2-3-1、さらには4-4-2を使い分ける事が可能だと明言した。これは本大会初戦でぶつかる破壊的な攻撃力を誇るメキシコ戦に2ボランチで挑む事を意味しているが、その裏にはスイスキャンプで得た手応えがあったためだろう。それは滅多に個人を評価しないクロアチア人指揮官がキャンプで最も印象に残った選手にアンドラニク・テイモリアンの名を挙げた事からうかがい知る事が出来る。彼によればテイモリアンは既にチームの重要な駒であり、その才能に驚かされたと述べている。これは彼がメキシコ戦でネコーナムの横に並ぶ可能性があるという事だ。 そしてもう一人、彼と共に印象に残ったプレイヤーとしてブランコに「私達にはドイツでライバル達にとって未知の驚きになるであろう選手がいる」と評されたのが「漆黒のドリブラー」マスード・ショジャイーである。この両者が最終メンバーに残った裏にはU-23代表監督のレネ・シモンエスの進言があった事は確かだが、ブランコは自らの目でアルメニアとクルドという血筋を持ちながらイランの国旗に忠誠を誓う2人の若者の実力を再認識したという事だろう。彼らについては何度も過去ログ(1、2、3、4、5)で触れているが、ここではあえてショジャイーの可能性について考えてみたいと思う。 まず彼のポジションだがラオス戦で初キャップを刻んだ試合においてはアリ・バダヴィとの交代で左サイドに入り、イランB代表やU-23代表では右のウインガーに入っているが、所属するサイパでは攻撃を指揮するトップ下を任されている。プレーの特徴はスピードとアイディアを兼ね備えたドリブルと、広い視野から放たれる正確なフィードやパスである。さらにはベビーフェイスからは想像しがたいファウルの多さ(ワースト2位イエロー11枚)があげられるが、これは彼の守備を厭わない献身性を顕したものだ。ここまで書けば彼が若き日のアリ・キャリミを彷彿させるタレントである事はお分かりだろう。現在彼は21歳。本大会開幕直前に22歳になるわけだが、同じ頃のアリ・キャリミといえば私の知る限り20歳で参加したアジア大会において、98年フランス大会のメンバーを主体としたチームの左サイドバックとして狂気に満ちたドリブルを見せていたことが思い出される。ただ、イランにおいては既に19歳でファトフ・テヘランの一員としてモハマド・レザ・ヘイダリアン率いるエステグラルをラマダン杯決勝で7-3と蹂躙した事で有名であった。若干19歳の若者がアジア最強イランの、フットサル界の英雄であるヘイダリアン率いるチームを、信じられないようなテクニックで翻弄した試合は今でも語り草である。その活躍から名門ピルーズィへと移籍し、イランサッカー協会が98年のW杯メンバーに入れることをトミスラヴ・イヴィッチに強要したのだが、このクロアチアの名将はそれを拒んだという。チーム事情こそ違えど8年前にイヴィッチによって拒まれたアリ・キャリミと、ブランコによって受け入れられたショジャイーという構図は図らずも彼らを比較の対象に据えたくなるファンの心理をかきたてる。その後アリ・キャリミは審判の暴行による1年間の出場停止、2002年日韓W杯最終予選での敗退、さらにはUAEでの生活へと身を堕としながらも26歳にしてバイエルンの一員になったわけだが果たしてショジャイーにはどのような未来があるのだろう。 前述したショジャイーとのプレースタイルと比較すれば、20歳前後のアリ・キャリミは少なくとも5人以上を軽く抜き去るスピードと、ドリブルテクニックを有していたが、ヴィジョンやパス能力には何一つ非凡さは持ち合わせてはいなかった。彼がそれらに磨きをかけたのはキングとして振舞ったUAEでのプレーの中での事だ。一方ショジャイーのドリブルはスピードという点でキャリミのそれを凌ぎ、さらにゲームメイカーとしての才能も既に開花していると言える。ただ両者に共通しているのは、その創造性であり魔術で観客を魅了する才能である。そして2006年、19歳からW杯出場が叶わなかったキャリミは27歳にして、ショジャイーは22歳にして共に初のワールドカップを戦うという事になる。いくつかのメディアはショジャイーの事を怪我で外れたナヴィドキア、もしくはジャッバリの代役と見ているが、それは視点がまったくずれた見方だ。マスード・ショジャイーがアリ・キャリミを超えるマジシャンになりうるか、それとも初の舞台で桁外れのマジックをキャリミが披露し、世界を魅了するのかがイランファンにとっては重要な事である。実際にピッチに二人の魔術師が同居する可能性は低いだろう。むしろショジャイーに出場時間が与えられるかどうかさえ分からないがキャリミが万全でなければ代役に抜擢されるに違いない。ただファンとしての本音はキャリミがドイツで最高のパフォーマンスを披露する事と、ショジャイーが彼の後継者としての経験を積み、いずれはキャリミを超える魔術師になって欲しいという事だ。ドイツでは是非この2人のマジックに注目してもらいたい。 ショジャイー動画 画像館 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.05.18 23:43:10
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