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テーマ:サッカーあれこれ(19851)
カテゴリ:イラン代表
いよいよ28日にクロアチア戦を控えたチーム・メッリだが、この試合はイランにとって数少ない本番に近いレベルでの親善試合となるだろう。31日に行われるボスニア・ヘルツェゴビナ戦も最終マッチとしての重要度は高いが、果たしてW杯に出場しない、しかも2月に招かれたばかりのボスニア・ヘルツェゴビナ代表が高いモチベーションで試合に挑むとは思えないからだ。またアジア杯予選などの公式試合を除いてはコスタリカ、トーゴくらいしかW杯出場国との試合をこなしていない明らかな準備不足の中ではクロアチア戦は唯一の、現在のイランの実力を知る機会になるだろう。おもえば98年のW杯の直前にもイランはクロアチアと対戦している。この試合をコーディネイトしたトミスラヴ・イヴィッチはASローマとの親善試合での大敗を理由に更迭されイランのベンチには既に居なかったが、ユーゴスラヴィア対策としてクロアチアのリエカで行われた試合はシュケルとプロシネツキのゴールによってクロアチアが勝利している。勿論この時クロアチアのベンチには後のイラン代表監督になる2人のクロアチア人が居たわけだ。
98年のチーム・メッリはダエイと対立したマイェリ・コハンの更迭、イランのW杯出場を決めた事でブラジル人ヴラディミール・ヴィエラに集まった国民からの人気に対するIFF会長サファニー・ファラハニーの嫉妬による彼の更迭の後、イランサッカー史上2人目のクロアチア人監督となる名将イヴィッチを招き、前述したように彼をも追放。また当時はイラン人監督の下でアメリカに勝利する事が望まれた風潮も手伝い、結局コーチから昇格したジャラル・タレヴィがW杯でチームを率いる事となったようにドタバタ劇が繰り広げられたのだが、準備という点においてはチリやジャマイカを招いたLG杯、インターミラノ、ASローマらセリエAのクラブとの練習試合、さらにはフランス入りしてからのリーグアンの数チームとの練習試合をこなすなど万全を期したものであった。これを鑑みれば、如何に今回のイラン代表が絶対的な準備不足であるか分かるというものだ。では、この状況が好転する為に重要な一戦であるクロアチア戦で何が起こることが必要だろうか。 私の理想ではイランの守備が崩壊する事である。いや、これは望まなくても起こるかも知れない。先日3-4-2-1というシステムでオーストリアを蹂躙したクロアチアの攻撃力にイランの脆弱な守備が耐えられる保証は無い。だが、この試合のオーストリアはイファンシュイッツやアウフハウザー、途中から投入されたロラント・リンツ、フェルトホファー以外はマルク・ヤンコを始めとしたほとんどが若手で構成されており同列で語る事はできないが、イランの守備もそれと大差がある訳ではない。ブレーメンから好調を維持するクラスニッチ一人のプレーを見てもイランの守備も同様に破壊される事は想像に難くない。彼の他にも守備が本職でない小柄なカービィが元レヴァークーゼンの大柄なバビッチと対峙する事は絶望的で、クラスニッチの巧さに稚拙なゴルモハンマディ、プルショにつくのもアイアンマンと呼ばれながら一度もイブラヒモビッチやヴィエリ、トレゼゲらの大型FWを打ち負かしたことの無いレザイーでは心許ないのは当然であろう。しかし本当の問題は最終ラインにはない。 ![]() イランの問題について私が何度も語ってきたのが左サイドの守備とネクナームのワンボランチシステムである。特に後述の問題を放置してきたつけが、このハイレベルな試合で暴かれる可能性が高いのではないだろうか。普通に考えて、ポルトガルやメキシコといった格上のチームと戦う場合、守備からチームを作ることは鉄則である。これを実践したのが98年の3バックに2人のボランチと2人のウイングバックを敷いた3-5-2である。このシステムでイランはユーゴをセットプレー以外でほぼ完封し、宿敵アメリカを見事なカウンターで葬ったのだ。もしイヴァンコビッチが本番同様に格上であるクロアチアに対し、両サイドが攻撃に参加する4バックの前をネクーナム一人に任せたら正気の沙汰では無いだろう。勿論この場合両サイドも前線も守備を全力でサポートする事になるが、今までの試合でネクナームの飛び出した穴をボランチ以外の彼らが見事に埋めた試合がいったい何試合あっただろうか。またネクナームは明らかにボランチの選手ではない。守備を放棄し最前線まで飛び出すものの、相手のカウンターの際にはスプリント能力の欠如も手伝い最終ラインまで守備に戻る責務を怠る事がよくある。彼のやっているプレーは明らかに2ボランチシステムでの攻撃的ボランチの動きに他ならない。時折彼を見ていてバゲリの後継者としての重責に耐えられず、気がふれたのかと思ってしまうほどだ。そうでなければ両サイドが攻撃に上がったと同時に前線に顔を出す彼のプレーは説明がつかない。現在のイランのキーマンの一人として、攻撃面での正確なフィード、状況判断、得点力の高さをもってネクナームの名を挙げるとすれば、何一つイランの抱える憂慮を理解していないと思う。むしろ彼はイラン最大の欠点になりかけている。 ただ一つ、彼の助けとなるのがUAEでキングとして振舞っていたキャリミがドイツでその守備力に磨きをかけた事だろうか。これはワンボランチシステムの際に多くの危機を回避させるだろう。だがイランが強豪を倒すためには彼が守備に追われる事無くエゴイスティックなドリブルに専念する事が必要でもあり、このジレンマを解決するにはアンドラニク・テイモリアンでもソーラブ・バフティアリザデでもネクナームの横に据える以外に無いのではないだろうか。要はイラン本来の4-2-3-1もしくは4-4-2という2ボランチシステムへの回帰である。ネクーナムはブランコサッカーの具現者であると言われているが、私からは気のふれたクロアチア人をそのまま表しているようにさえ見えてしまう。 果たしてこの狂ったシステムのまま何事も無くクロアチア戦を乗り越えるのか、それとも全てが私のとりこし苦労でクロアチアを逆に蹂躙するのか、はたまた正気に返り2ボランチシステムに戻し守備を立て直すのか。この試合如何でメキシコ戦での戦い方が見えてくる事は間違いないだろう。イヴィッチは若干5試合でクビを切られたが、長期政権となったブランコはどのような結果であってもクビを切られる事は想像できないだけに、彼の元でチームの状況が好転する事がなによりである。確かに時間は無い、だが本番前に一度崩壊を味わうべきではないだろうか。その惨劇がイランの弱点を浮き彫りにするに違いない。それがシステムの正常化、そしてメキシコ戦の勝利につながるのなら、無難な勝利よりも今のイランにとって有益である。 ![]() 追加情報:イラン代表は既にクロアチア入りしたようです。何よりも一人も怪我する事無く、無事に帰ってきて欲しいですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.05.26 05:43:45
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