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その日、私は路上に車を停めて用事を足していました。
両手いっぱいに、雑多な荷物を抱えて。 ”すみません。” 声をかけられ振り返ると、そこには杖をついた70歳代でしょうか、品のよいお年寄りがが立っていました。 ちょっと途方にくれたように、 ”キャッツシアターはどこでしょうか?” キャッツシアター?それは、歩いていくことは考えられないちょっと離れた場所のように思いました。 記憶をかき集めながら、 ”キャッツシアターは確か大崎では?ここからだと地下鉄にお乗りになったほうが・・・それとも、歩いて品川まで出てそこからJR で一駅?” ”五反田から歩けると聞いて、ここまで歩いてきたのですが・・・” やっと私に記憶がよみがえりました。 その時、私がいたのは、五反田駅からまっすぐ坂を登ってきた道で、 確かに、五反田から大崎方面への違う道を歩けば、キャッツシアターの方面につくのでした。 ただ、今いる地点からその道への近道は細かったり曲がりくねっていて、私にはとても説明できそうにないのです。 ”それなら、一度五反田まで戻られないと、なかなか道が難しいです。 そこから、一本違う道を歩けば着くはずです。 歩くと30分以上はかかりますよ。” すると、その男性は、がっくり気落ちして、 ”そうなんですか。では、私は道を間違えて歩いたのですね。 近道がないんですか。 車をひろわないといけませんね。” と、丁寧にお礼を言って、でも、気落ちしたように歩き出しました。 一度は私も背を向けて車の方に歩き出した。 しかし、杖をついて長い坂道を、あの方は地下鉄一駅分もここまで歩いてきたのかと思うと、とっさに後を追っていました。 ”すみません!” 何事かと振り返る男性。 ”実は私、今車をあそこに停めていますが、よろしかったらお乗りになりま せんか? 車なら、あっという間に着きますよ。” とまどい、言葉を失う男性。 そりゃあそうだ。 世の中、お年寄りを狙った犯罪が、俺俺詐欺はじめ、悪徳リフォームだ、介護士が預金狙うわ、流行といっていいほど、転がっている。 誰が、見ず知らぬの女の車になど乗ろうか・・・ 思わず、 ”怪しいものではありません。” あー、なに言ってんだ。私は。 少しの躊躇のあと、男性は、 ”では、お言葉に甘えてよろしいでしょうか。” 無事に開演前にキャッツシアターまで送り届け、一安心。 しかし、生まれて初めて逆ナンパが、お年寄りとは、私もなかなかやるわ。 次はも少し若い人を狙うか? でも、夫にはさんざん、 ”今日、私逆ナン!” と自慢してしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 25, 2005 09:17:17 PM
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