ミッドランド　こんのふみをブログ

　大学2年生となったのだが、怠惰な生活ぶりは相変わらずであった。1年間で取った単位数は20そこそこで、卒業までには130ぐらい単位を取らないといけないから大幅に足りない。たぶん学科内でビリ争いを演じてたはずだ。
　それもそのはず、大学には毎日顔を出してはいたけれど、真面目にやるのは厚木にある実習場での授業だけで、世田谷にある校舎で行われていた授業はほとんどサボっていた。登校は早くても昼前後、悪友どもが教室後ろにたむろしていて、ある程度の人数に達すると教室を抜け出してボーリング三昧という不良ぶり。
　ちなみにボーリングはお遊びではなく相当に本気。2対2や3対3に分かれてチーム戦が基本。負けたチームは1回終了ごとに相手チームにジュースをおごっていた。平均スコアが180ぐらいになる時もあって白熱。隣のレーンなどで男女混合で和気あいあいでダラダラと投球している奴らとは違う、男達の熱いドラマがそこにはあった。

　夏になって今年もリゾートバイトに行こうと当たり前のように計画を立て、給料が去年よりも上がっていた蓼科仙境都市へ再び。いつものサカイに加えて今年は同じ農大で初参加のノリを連れていった。今年の蓼科仙境都市は昨年よりアルバイトの総数が増えておりカオスの様相であった。そしてこの年の蓼科仙境都市で、初代ミッドランドのメンバーがそろう事になるのだ。

　ふみをは昨年もやっていたということで不老苑に配属された。そこには前日から働いているアルバイト達がうようよといたのだが、昨年働いていた人が厨房を入れても誰もいなくて、ホールはすっちゃかめっちゃかの状態であった。お客さんが座る卓に最初にお皿を並べておくのだが、その位置がえらく適当だったので、近くに居たいかにも軟派風男子大学生にホールのやり方を教えた。彼はこいつ誰だよ？的な態度を隠さなかったけれど、一応従ってくれた。その彼とは後のミッドランドのギタリストである、三輪幸平であったのだ！！
　不老苑は夜だけの営業でほとんどのアルバイトは昼間に他の場所で仕事をしてから夕方不老苑に移動して来て働く。ふみをは2年目の特別待遇で昼2時ぐらいに出勤して掃除機掛けをしてから、予約人数を確認して卓に食器並べるという仕事を夕方の開店までにやっておけばOK。今考えればこんな楽な仕事はない。一緒に早く働いているのは去年ふみをがやっていた炭焼きの仕事で、ここで出会った男子大学生テツが担当。彼は後に三輪幸平と一緒にミッドランドのツインギタリストの片割れとなる人物でもあった。
　それにしても不老苑という職場はいい加減であった。一応社員で上司にあたる人はいたんだけれど、基本的にホールはバイトに任せっきり。遊びたい盛りの大学生どもに任せたらどうなることやら、である。
　
　まず冷蔵庫のソフトドリンク類はフリードリンク制を採用。つまり客に出す飲物ををバイトが勝手に飲んでいたいのだ。ふみをは当時コーラ好きで毎日大量に冷蔵庫から出して飲んでいた。さすがにお酒の管理はソフトドリンクよりは厳しかったので一考となる。
　日本酒は一升瓶を逆さにセットして自動的に熱燗にしてくれるという機械が置いてあり、毎日わざと多く熱燗を製造しては余らせて、燗冷ましはお客に出せませんという理由で次の日に仕事中に飲んでいた。さすがに瓶ビールはお客さんの飲み残しを飲む程度だったけれど。
　で、ふだんほとんど飲まない女子に無理くり燗冷まし飲ませて酔わせ、フラフラの状態で接客させる！？というパワーハラスメントの日常を繰り返していた。みんなごめん。

　ふみをは例のモーリスのアコギを持っていっており、毎夜下手くそなギターをかき鳴らしていたのだがある時、例の軟派で気の合わない三輪幸平が、ふみをのギターを横取りして弾き始めた。するとそれが何と上手かったのだ！！今までただの軟派を絵に描いたような大学生だと思っていたのだが、能ある鷹は爪を完全に隠していたわけだ。だけれど三輪幸平は納得がいかなかったようだ。弾きにくいモーリスでは女子を惚れさせるほどのテクが披露出来ないと思ったのか、一度下山してわざわざ自分のレスポールを持ってきたのだ。
　この三輪幸平の大胆な行動からバイト仲間でバンドをやろうぜ！！という気運が高まっていく。そこに他のレストランで働いていて音楽好きのイタルが合流。イタルはギタリストであったけれどドラムをかじったことがある、ということでドラムに決定。

　バンド名はアルバイト全員が従業員宿舎として利用していた元蓼科仙境都市のホテルであった｢ミッドランド｣に異論なくすぐに決定。それぐらいミッドランドという名はこのバイト先ではメジャーな存在であった。

＜初代ミッドランド＞
Vo.ふみを　Gt.三輪、テツ　B.サカイ　Dr.イタル