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テーマ:怪談(68)
カテゴリ:聞いたコト
梅雨はもうじき明けて夏が来る。そして夏は怪談の季節でもある。
今日は、知り合いの骨董商が昨年の夏に体験した怪異を紹介しよう。 とある夏の真夜中、知り合い(仮にAさんとする)は愛犬を連れて近所の公園を散歩していた。地方都市のその又地方にある公園なので、面積だけはやたらと広い。そして公園には地下トンネルがあり、住宅地と公園とを連絡している。 怪異の発生地 posted by (C)どす恋 住宅地から公園へ向かって歩いている途中、トンネルの手前で犬が突如吠え始めた。 長年、Aさんと生活を共にしてきた犬である。齢十数歳の老犬はめったなことでは吠えないことを知っているだけに、Aさんはとても驚いた。 とても老犬とは思えない勢いで吠えている犬をなだめつつ、Aさんは辺りに素早く見回した。広い公園なので、野犬や野良猫、そして変質者が来たのかも知れない。ただならぬ気配を察して愛犬が吠えているのかも知れぬ。 しかし、いくら闇に目を凝らしてみても、生き物が動く気配はない。 歩道の両面は膝丈まで芒が生い茂る斜面になっているが、風も吹かぬ叢からはカサリとも音がしない。 トンネル内のほの暗い蛍光灯に照らされた路面の端には、工事現場によくある真っ赤なカラーコーンがぽつんと置かれているだけだ。 じっと立ち尽くして待っていても何も起こらない。しかし、犬は何ものかに向かって依然として吠え続けている。困ったAさんは、とりあえず犬の引き綱を引っ張ってトンネルの中に入ることにした。 すると、どうしたことだろうか。あれほど吠えていた犬はピタリと吠えるのをやめた。やれやれとAさんは胸をなで下ろし、ふと、やってきたトンネルの方を見、そして凍り付いた。 カラーコーンが移動している! わずか2、3秒の内に、トンネル入口にあったカラーコーンは音もなく数メートルも移動していたのだ。誰かがカラーコーンを動かしたにしても、音もなく高速で移動させるのは難しい。一番合理的な説明は、カラーコーンが自ら移動したということだ。そうすれば、犬がトンネル付近で吠えていた理由もわかる。きっと犬はカラーコーンに向かって吠えていたのだろう。しかし、それは人間業ではない。 考えている内に震え上がったAさんは、愛犬を抱えて逃げ出した。 その後、Aさんは同じ怪異には遭遇していないそうだが、公園では狸や鼬が度々目撃されているという。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.09.17 20:29:59
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