テーマ:映画館で観た映画(8561)
カテゴリ:日本映画
たいしたものじゃないですけど。
どうか、おかまいなく。 何かお手伝いしましょうか。 遠慮しないで、召し上がれ。 若い頃のようにチヤホヤされなくなって、 もともとチヤホヤされるような美貌もなかったりして。 天賦の才も権力もなかったりする。 でも、それなりに自分の人生があって、 それなりに経験もある女性たちがこの作品の中に集う。 こういう女性たちを私はとても良く知っている。 かもめ食堂の店主はサチエさん。 ガッチャマンの歌詞を完璧に知ってるミドリさん。 自分の荷物が行方不明のマサコさん。 こういう女性たちはスゴイ能力を持っている。 「人をもてなす能力」 「人を気遣う能力」 個人差はもちろんあるのだけどもね、 ただその二つの能力は人生によって培われるのだ。 たぶん。きっと。 ruokale lokki かもめ食堂、フィンランドのヘンシンキにある、 おにぎりがメインメニューの小さな食堂である。 店主のサチエさんは小さな女性で、 お客のこない店でセッセとガラスコップを磨いている。 「いらっしゃい」 お客さんをもてなすその言葉を、 しばらくは彼女、一度も言えないでいた。 最初のお客は、 ニャロメのTシャツを着た 日本かぶれ、なヘンな青年である。 漢字で書くと「豚身・昼斗念」 最も、その当て字はミドリさんによる即興で、 カタカナならトンミ・ヒルトネン にこやかで可愛らしいが友達がいないようある。 ご近所らしきフィンランド女性三人が、 焼きたてシナモン・ロールに引かれてやってきた。 コピ・ルアック、 コーヒーがおいしくなるおまじない、と コーヒーがおいしくなる方法を教えてくれたのは、 以前その場所にコーヒー店を出していた、 中年の男性である。 夫が帰ってこないと憤る中年女性は、 コワイ顔をしてかもめ食堂を睨んでいたが、 それは彼女のワンちゃんとサチエさんが、 とても似ているから、ということだったらしい。 ガッチャマンの歌詞を知っている人に、 悪い人はいないとミドリさんを世話するサチエさん。 ミドリさんは少々乱暴だが 一生懸命かもめ食堂のテーブルを吹いている。 マサコさんはとても介抱が上手くて、 行方不明の荷物の中に、 本物の「自分」の荷物を探そうとしている。 サチエさんはサチエさんの信念を持って、 かもめ食堂を日々キリモリしていて、 マジメにマジメにがんばっていたりして、 それでも上手くいかない可能性はあるんだろうけど、 そしたらそれで止めればいい。 大丈夫、 大丈夫、 そこのところはきっと ミドリさんもマサコさんも同じだろう。 そんな彼女たちが道を開いていくのは、 彼女たちが持つ二つのスゴイ能力なのだ、きっと。 「人をもてなす能力」 「人を気遣う能力」 若い頃はあんまり必要なかったけれど、 それなりに経験値が高くなると必要になって 自然と備わっていく能力なのだ、きっと。 エプロンをして水をトレーに置いて お客さんのテーブルへ。 最初は馴染みが薄かった「おにぎり」も 少しずつお客さんのテーブルにのるようになったきた。 彼女たち手のひらに乗せて握ったおにぎり。 おにぎりは、コーヒーと一緒で、 人ににぎってもらった方がおいしい。 「人をもてなし」「人を気遣う」 そんな心が込められているおにぎりは確かにおいしい。 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、 息のあった女優陣が醸し出す空気感が素晴らしい。 フィンランドの方々の好演も見逃せない。 特に料理をする小林聡美の姿は秀逸。 荻上直子監督が撮るのは、 凛と人生と生きる登場人物と その場所その場所にある自然な空気感。 時折ジンとくる台詞が心にしみる。 「いらっしゃいませ」 お客さんを迎える言葉がかもめ食堂に飛び交っている。 サチエさん、ミドリさん、マサコさん、 それぞれの「いらっしゃいませ」がある。 かもめ食堂の店主はサチエさん。 彼女は太った人がおいしそうに食べる姿に弱いらしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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