天上台風
今年2回目となる大山登山、前回の参加者から1名脱落したものの新規希望者が増えて6名で挙行した。気になる天気予報は「曇りときどき雨」、晴れ男の隊長のおかげか晴れ間ものぞく大山麓の登山口に到着して、さあ出発。前回の教訓から杖と登山靴の必要性を学習しているので、この日のメンバーはすこぶる調子がよい。最初の休憩をしていた二合目あたりで、軽快な足取りで通り過ぎようとしたベテラン風の熟年男性に尋ねてみた。「雲のかかる頂上のお天気はどうですかね」「昨日の頂上は荒れていましたね」「・・・?・・・!」昨日も登っていたみたいだ。聞けば一年間に186回も登った記録があるそうだ。いつ仕事をしているんだろう。八合目あたりから急に寒くなり、風も出てきた。下る人たちに頂上の様子を聞くと、「もの凄い風に飛ばされそう」「めちゃくちゃ寒い」、半数近くの人は諦めて引き返している。恐る恐る頂上をめざし九合目を越えると、なるほどこれはすごい。まさしく台風のときの暴風雨並みである。「止める勇気」が頭を過ぎったが、隊長の中止命令もなく決行した。辿り着いた山頂の山小屋の扉を開けると、中は満員の登山者で溢れていてほっとした心地になった。強風もあって8度の外気温はかなり肌寒く感じる。頂上で記念撮影をし、小屋で温かい鍋料理を囲む若者のパーティを横目に、おにぎりの昼食を済ませて下山の準備にかかる。ご馳走になった一杯300円のインスタントコーヒーがとても暖かく思えた。暴風圏を脱出した下り道では、色づき始めた紅葉を楽しむ余裕も生まれて、晴れ渡った下界を見晴らせば弓ヶ浜がくっきりと現れている。なんで山に登るのか、「そこに山があるからだ」の名言が分かるような分からないような、良寛さんなら答えてくれるだろうか。