私の考えた変則囲碁
邪道という人もいるかも知れないが、ココセ、二手連打、オセロ碁など、囲碁にはさまざまな変則ルールのバリエーションがあり、時には試してみるのも一興である。ココセは1局に1回、相手の着点を指示できるというルールで、これは眼が2つの石も死ぬから恐ろしい(自ら眼をつぶす点を指示される)。また、二手連打は、文字通り二手連打を、これも1局に1回できるというもので、こちらはコウでもないのにタケフも切られてしまうというものである。オセロ碁は、1局に1回、オセロの要領ではさんだ石を自分の色に変えられるもので、これがどうやら最強らしい。いずれも、上手側は早めに変則ルールを発動させてしまうようにするのが対策法で、逆にした手側は最後の最後まで温存するのが戦略である。これらとは別に、私がかつて考案した「変則囲碁」をいくつか紹介しよう。新囲碁ネーミングは「新体操」をヒントにしたものだが、そんなに華麗なものではない。何しろ、ルールは単純、「手筋を使ったら反則とし、反則攻撃を5回続けたら負け」というものである。1回でなく5回なのは、プロレスのルールに由来している。俗筋の力強さで戦うことを旨としたゲームである。その後、なかなか手筋を5回も続けることはないということで、3回で反則負けとルールを改めた。力比べに屈し、石を取られて負けるよりはと、あえて手筋攻撃を連発し、反則負けをめざすという「タイトロープ戦法」などという珍戦法も生まれた。しかし、「手筋」の定義が難しい、あまりこれをやりすぎると本当の囲碁が弱くなるという欠点があり、失敗作となった…。囲碁将棋高校ならともかく、中学以下で「囲碁部」というものはなかなか存在しなかった。小学生までは、圧倒的に将棋が人気だった。あったとしても「囲碁将棋部」であろう。この名前にヒントを得て、実際に囲碁と将棋を同時に戦う「囲碁将棋」という種目を考えた。実戦例はない。ルールは単純、対局者は碁盤と将棋盤をはさんで向かい合い、囲碁か将棋のいずれか一方を着手する。囲碁・将棋いずれを打つ/指すかは自由である。将棋で相手の王将を詰ませたら囲碁の地に20目を加える。いずれかが勝ち目なしと判断したら、もう一方の盤に着手を集中させるという戦略もとれる。ただし、「王手」には逃げないと反則負けになる。将棋に勝てばかなり決定的なアドバンテージを得るが、相手は将棋で勝ち目なしと判断した瞬間、囲碁の盤面を連打してくるわけである。また、「王手」が絶対のコウダテになるので、将棋を捨てて、一発逆転の大コウを狙うこともできる。コウダテにさえなればよいのだから、王手はどんな悪手でもよい。理論的には、将棋で負けても出入り20目以上のコウに勝てばもとをとれるわけだ。囲碁・将棋とも拮抗している対局者どうしであるならば、将棋の詰みを5目などに換算してもよい。これは一度試してみたかった。オリンピックでいう「複合」にも似たノリだがそれともちょっと違う。戦略の組み立て次第で、囲碁・将棋とも劣る棋力の方が勝ちをおさめることもできるのだ。不死身の石ひとつの石を「不死身」とするルール。この石は周囲のダメを全部つめられても死なないとするものである。他の石と区別するために、石に眼を2つ書いておく。不死身石は、どこに打ってもよい。これはかなり強力である。活きている石というのは、厚みと同じことだから、初手で天元に不死身石があると、かなりの脅威である。また、不死身石につながった石もまた不死身になる。一眼もない石も、この「不死身石」をくっつければたちまち活き石になる。なお、決めの問題だが、「不死身石」の眼は、地に数えないとするのが妥当であろう。バトルロイヤル碁これは3人以上で囲碁を打つというもので、黒・白のほかに、赤・青などさまざまな色の石をもった対局者が、互いに地を争うのである。「黒、R-16、右上隅小目。白、D-4、左下星。赤、R-4、右下隅小目。青、D-17、左上星…」という具合に続く。一見面白そうだが、これは失敗作に終わった。集中攻撃を喰らうと、その対局者はまったくゲームに参加できないのだ。例えば、黒以外が組むと、5人プレイでは次の手番までにポン抜かれてしまい、3人プレイであっても、1巡で相当不利になり、数巡するといずれは取られてしまう。よほど棋力差がある人を加えた座興にするくらいのものであろう。変形碁盤その他、変則ルールではないが、碁盤の形が変わっている、という変則囲碁もある。多路盤などはその代表的な例で、ほかに「トーラス碁」というものもある。これは、頭の中で仮想する必要があるのでちょっと複雑だが、要するに、盤端どうしをつながっているとするものである。つまり、1路と19路、国際表示でいうA路とT路を同一とみなして打つ。頭の中で考えると、なるほど、あたかもトーラス(円環面)の上で碁を打つようなものである。このルールだと、私のような隅・辺をはいずりまわる棋風の者には不利である。なぜなら、隅・辺の概念が存在しないのだ。盤面すべてが中央ということになる。シチョウも、平面碁盤を端まで追って、さらに対角線上からまた続くわけで、思わぬ位置にある石がシチョウアタリになったりする。私が考えたのは、必ずしも対称形の盤でなくてもよいのではないか、ということである。十字型(ダイヤモンドゲームの四角形版のようなイメージ)だとか、凸字・凹字・4分の3面盤などもあってもよいのではないだろうか。また、「囲碁将棋」と同じ発想だが、2面独立盤(碁盤を2つ別々に打つ。どっちを打つかは自由。一方の面を他方のコウダテに使うこともできる)などもどうだろうか。19路と9路、あるいは19路と13路と9路を同時使用した3面独立盤なども面白いのではないか。