歩く
歩く 南風一悲しいときは一日眠ってから歩こうただ歩くこと青空に暗雲が広がって雨が降ってくる電線に並んだ椋鳥がいっせいに飛び立つ山並みは何も変わりがない小川にはいつものように大きな鮒が泳いでいる冷たい風は今日も吹いている畑の花キャベツはすでに収穫を終え次の種蒔きを待つばかり春はそこまでやってきた何も考えずに歩くことただ歩くことが頭を空っぽにする心も身体も溶け出して自分が歩いていることすら忘れてしまう私は昔から何も持たなかった今も何も持たずに歩いている私は雲あるいは風私は何処にでもいる私は何処にもいない