南風一の世界

　　　きみの子ども　　　南風一

床屋の客席の端っこ

なぜお母さんらしき中年婦人がいるのだろうと思ったら

眼差しの向こうに

散髪して貰っている子どもの姿があった

なるほどそれで合点が行った

女性は伴侶を得る前こそ

恋だの愛だの夢みたいなことを想い描くけれど

結婚して子どもを儲けたら

子どもが一番

旦那は元気で留守がいいとなる

俺が若い頃に恋した女性と一緒になっていたところで

事情はたぶん同じだったろう

それが女性の幸福というのなら

きみは幸福な暮らしを手に入れた

俺の子どもだろうと

俺以外の男の子どもだろうと

きみが生んだ子どもに変わりない

きみは成長する子どもの姿に目を細めているのかな

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