南風一の世界

　　　小さな庭の春　　　南風一

庭の常緑樹が葉を落とし始めた

森ではなく

小さな庭に訪れた春

沈丁花の香りは残っているけれど

花弁が散り始めた

代わってサツキの花芽が膨らんで

ほんのり赤色に色づいてきた

散っても

春が巡ってくれば

また新しい花を咲かせる

木には何の罪もない

新しい花を咲かせたら

古い着物を脱ぎ捨てる

新緑に身を包む

古い花や葉っぱのことなど

何も憶えていない

いつも明日のために生きている

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