南風一の世界

　　紙一重　　　　南風一

墓に刻まれた文字は確かに長く残る
文字が残る間は確かにそこに入っている骨の主は？
と問えば刻まれた文字がそれだろうと推測がつく

役所に残る戸籍謄本の名前もしかり
確かに墓の名前の人物が誕生しその後死亡したことも
分かる

しかし戸籍謄本を知らない他人にとって
墓に刻まれた名前は文字以外の何物でもない
子孫にしたって同じ事情

墓に残る先祖の名前は
文字にしか過ぎない
名前の人物の顔も知なければ
声も知らない
毎日何を考え何を生業にして生きていたのかも知らない

墓の文字や戸籍にしか残っていない名前は
形がなくて何処か頼りない
死亡とともにこの世から消え去ったとこで
何の支障もないだろうにね

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