南風一の世界

　「平和」と「金（かね）感情（勘定）」　　南風一

ある前首相は「世界平和」を希求する宗教集団の思想に
共鳴してビデオメッセージを贈っただけで
特に政治献金を前首相へ贈ったかどうかは何も言わないままに
ある宗教団体幹部は記者会見を終えた

ある前首相を銃撃した男は
母親が祖父から相続した奈良の土地を売却して
その宗教団体へ寄付して
家族は塗炭の苦しみのどん底に突き落とされたと言った

他方宗教団体幹部は
以前のことなのでその男の母親が幾らの献金をしたか
記録が残っていないと言った
驚くべき非対称性！
多額の献金をした家族は生活苦のどん底に突き落とされたにもかかわらず
宗教団体からすれば数ある信者からの献金の一例に過ぎない
家族のその後のことなど知ったことではない

これでは前首相を銃撃した男は浮かばれない
ましてや襲撃されて死亡したある前首相は
なぜ襲撃されなければならなかったのか
全く意味不明であり
とばっちりを受けた前首相こそ気の毒であるとも思う

しかし宗教団体幹部を襲撃できなかったことの代替措置として
ある前首相を襲撃して死亡させることで
宗教団体への恨みが晴れるものだろうか？

この点は前首相を銃撃した男に現在の心境を訊ねてみるしかない

以上は「平和」の悲劇の方の話
他方「平和」のいい方の話もある
今日は彼女が夏季休暇を取っていたから
会社で伸び伸びと仕事ができた
なぜなら彼女の姿がないから
彼女の存在に気を使う必要がなかったから。

彼女がいなければこれほど「平和」でいられたなんて
とても彼女に言えるようなことではない
でも「全然考えないこと」が即ち「空（くう）」であり
「空（くう）」ほど平和な境地はないだろう

そういう意味で「平和」であるためには
打算的な感情も恋愛感情も
無い方がいいに決まっている
「金（かね）感情（勘定）」など一番無い事が「平和」状態であることは
言を俟たない
その宗教団体は「献金」して貰うことが好きなのに
なぜ「平和」を希求できるのか？
全く意味が分からない

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