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ブログ版 南堀江法律事務所

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Bar UKからのお知ら… うらんかんろさん

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2007/03/30
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カテゴリ:判例、事件
昨日の記事から。
栃木のリンチ殺人で、県の賠償額が高裁で大幅に減らされたと見出しに。

平成11年に起きた事件で、被害者(19歳、男性)は複数の少年に約2か月に渡り連れまわされリンチを受け続け、最後に殺害された。
両親が、警察の捜査の怠慢を理由に県を訴えて、1審・宇都宮地裁は1億円近い賠償額を認めていたのが、2審・東京高裁では1000万円強の賠償額しか認めなかった。

こういう事件で被害弁償を誰に請求するかは難しい問題です。加害者である少年は当然、民事上の賠償義務を負うけど、少年に賠償できるだけの財力があるはずがない。
その親の責任を問えるかというと、子供が12歳くらいまでなら「子の責任は親がとる」ということになりますが、それ以上の年齢となると親の責任を問うのは難しい(民法の不法行為の勉強をしている方はご存じですね)。

さてこういうときに警察に責任を問えるか。もちろん、殺人事件のたびに警察の責任が問われるとなると警察もやってられない。本件のように、捜査の怠慢が法的なレベルで「過失」といえる場合に限って、その責任が問われることになります。

根拠となる法律は「国家賠償法」で、公務員の故意・過失により損害を受けた国民は、国または都道府県・市町村に賠償請求できる(公務員の個人責任は問えない)。

近年は、国会が必要な立法をしないとか、警察が求められた捜査をしないとかいう、「不作為」(ふさくい)の責任が広く問われるようになってきています。

本件の判決の認定によると、両親が県警に銀行の防犯カメラの取り寄せを依頼したのだけど(加害者に脅されてお金をおろす被害者少年の様子が写されており、犯行の証拠になるはずだった)、それをころっと「忘れていた」のだそうです。その不作為が過失だ、とのこと。

ただ判決は、警察が適正な捜査をしたとしても被害者を救命でした確率は3割程度だと認定し、賠償額を下げた。加害者グループが被害者少年を連れまわしており、捜査していても所在をつかむ前に殺された可能性が高かったということです。
つまり、警察の不作為と被害者死亡の間に因果関係は認めがたい(平たくいうと、警察がサボってたせいで被害者が殺されたとは言いにくい)、ということ。

そうすると、賠償責任自体が否定されそうなのですけど、高裁は1000万円強の賠償額を認めているのですね。これは何に対する賠償なんでしょうか。私の見た限りの新聞には書かれていませんでした。弁護士としては、賠償金の内容(算定根拠)に興味があるところです。

それにしてもおぞましい事件ではあります。被害者のご冥福を祈ります。





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Last updated  2007/03/30 12:52:28 PM



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