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カテゴリ:前世記憶
ヤマトタケル編に続き、かなり省略されていたギルガメッシュ編も原文を掲載することにします。
このお話、元はと言えばレムリア王国編からのスピンオフなのですが、神話で有名なギルガメッシュ王ではなく、レムリア編の主人公ミドことミチュエラ皇太子後のミトラス国王の娘でありながら不老不死の運命を持ったアスタルテ王女が主人公とも言えるお話になっています。 とは言え、レムリア編の登場人物?には天使たちの他にも何人か不老不死の者がいまして、ギルガメッシュと妻のニン・ウルクの他にもレムリア時代から輪廻転生を繰り返してきた者が登場しますので、このお話を呼んで興味を覚えた方は、レムリア編もご覧ください。 なお、レムリア本編は、書いた本人が、自分で書いたとは信じられないほどの長編ですので、お読みになる際は覚悟してくださいませ。 アスタルテは、レムリア国王ミドことミトラス・カンヘル・アーリアンと、王妃のトゥーラことトゥリトゥーラ・ククルカン・シャンバラの長女、レムリアの第一王女として生まれました。 しかし、彼女の夫となったのは、父ミドと天使アムルタートの間に生まれた異母兄と言うべき天使のイスラフェルだったのです。 二人は、18歳までの間レムリアの人間の社会で育ちましたが、18歳になった時に天使の街マガダに移って結婚し、永遠の時間を共に過ごすことになりました。 マガダは一種の異次元空間であり、そこに居続ける限りは人間であっても不老不死を保つことができましたから、元々不老不死の天使イスラフェルと人間であるアスタルテが、永遠に一緒に暮らすおとぎばなしのようなことが可能だったのです。 しかし、人間の世界で18年間育った彼等には、その後の年月は余りにも長いものでした。
二人の父ミドは、彼等が人間の年齢で32歳の時に51歳で亡くなりました。 その時二人は、マガダを出て、レムリアの都パレンケで行われた父の葬儀に出席しました。 ミドは、自分の死後一切天使との関係を絶つように厳命し、天使の長アールマティーもそれに応ずることを約束していましたから、二人には最後となるべきレムリア訪問だったのです。 アスタルテは、天使と人間を結ぶ存在でしたから、父も、母も、兄弟たちもやがては死んで行く中自分だけが生き続けることに一抹の寂しさと疑問を感じていました。 ミドは、娘である彼女には、人間は限られた人生を転生によって繰り返して学びながら更に上の存在である意識体に昇華していくのが宿命であると説明していたのです。 その宿命には反しますが、彼女には、天使たちとともに、人間の歴史と転生を見守って行くように頼んだのです。
レムリアの都パレンケでの父の葬儀に出席したアスタルテとイスラフェルは、人間が全て老いて行くことを実感しました。 母のトゥーラ王妃、父の後を継いで女帝となったサクヤ王妃、その姉でやはり王妃のツィンツン、弟マルドゥーク、タケル、ニヌルタ、ラーフ、妹のウズメ、それから帰りに立ち寄ったヒンダスで会った、ヒンダス皇太子妃となっていた妹のニンリル、皆14年間分の歳を取ってそれなりに老いていたのです。 ところが、アスタルテ自身は全く変わっていませんでした。 すると、自分は本当に父ミドの娘なのか、本当に人間なのかと言う疑問が湧きました。 いくら異次元マガダに住んでいるとは言え、天使の長アールマティーは、18年前に当時は普通の人間の女だったチーチェンをマガダに迎える時、ここに居る間は不老不死だが一歩でも外に出ればそれまでの年月を一瞬にして背負うことになると説明したと言うのです。 しかし、自分はこの14年の間、ちょこちょこ外出していましたし、マガダの外に出ても全く変わったようには思えませんでした。 つまり、全く老化していないのです。
マガダに帰った彼女は、義母の天使アムルタートに詰め寄りました。 「私は、本当は誰の子なの。天使のイスラフェルやサハーラと同じで、マガダを出ても全く歳をとらないじゃないの。人間じゃないのでしょう。」 アムルタートは、顔色一つ変えずに答えました。 「あなたはミドとトゥーラの娘よ。あなたの母親トゥーラが浮気するはずがないでしょう。」 確かに、母トゥーラは、父を命を懸けて愛していたように思えますし、浮気は考えられませんでした。 「じゃあ、何故私は歳をとらないの。こんな人間がいるわけないじゃないの。」 実は彼女、父ミドが、今の夫であるイスラフェルの前身である天使クシャスラと、人間の命運を賭けて戦った時、クシャスラがミドに変身してトゥーラを犯して生ませた娘だったのです。 ただ、クシャスラは遺伝子段階から変身していましたから、ミドの子と言っても間違いではありません。 ただ一つだけ違いがあったのは、天使の遺伝子には寿命を限定する部分が欠損しており、根本的に不老不死だったことで、変身してもその根本までは変わらなかったため、アスタルテには、人間のような寿命がなかったのです。 そのため、アスタルテは、ミドの形質を受け継ぎながらも不老不死となったのです。
しかし、他の天使と違って、彼女は人間の女であるトゥーラから生まれていましたし、トゥーラ自身、彼女がクシャスラの子であることは知らず、アスタルテも母がクシャスラに犯されたことは知りませんでしたから、そのことに気付くはずはなかったのです。 しかし、父のミドだけは気付いており、死の前にアールマティーに頼んでいました。 「アスタルテは、本当は私に変身したクシャスラさんの子供なのでしょう。でも、本人にもトゥーラにも黙っておいてくださいね。」 アールマティーも、アスタルテはミドの子供と言っても間違いはありませんでしたから、秘密はばらさないことを約束しました。 永遠の少女天使アムルタートも、ミドとアールマティーとの約束を守って、アスタルテにはとぼけとおしました。 「あなたの父ミドは、天使の私達が惚れたぐらいの超人だったのよ。だから、たまたまあなたには、その能力が不老不死の形で受け継がれたのよ。」 そんな都合のよいことがあるものかと素直には信じられませんでしたが、アムルタートに「じゃあ父親は誰なのよ。あなたの容姿は、明らかにミドにも似ているし、母のトゥーラが浮気をするはずないでしょう。」と言われると反論しようがありませんでした。 確かに自分は他の兄妹たち同様、父ミド、母トゥーラに似た容姿でしたし、母は、本当に父一筋だったのですから。 そして、人間の中にもヴァルナやオオモノヌシのような、永遠の老人、永遠の若者もいると言われると、余計に反論できませんでした。 そして、アスタルテの永遠への挑戦が始まりました。
アスタルテは、マガダで暮らしている存在の中では、第一世代とでも言うべき、アールマティー、アムルタート、ヤシャ(アシャ)、サハーラ(ハルワタート)、アシューラ(ウォフ・マナフ)、夫イスラフェル(クシャスラ)、それからイュンの四神のゲンブ、ビャッコ、真の女神と言うべきセイシの肉体を得たスザク、そしてスザクの元の肉体を得て不老不死となったヤシャの妻で元は人間のチーチェン、四神の部下の十二神将を除くと、他の天使達は皆年下と言ってよい存在だったのです。 そのため、彼女は年下の第二世代以下の天使たちのボスのような存在となって、異質な存在である寂しさを放埓な行動で紛らわしていました。
天使たちと、人間であるアスタルテの一番大きな違いは、生理的なものから来ると思われる気分の振幅の大きさでした。 異次元空間であるマガダにいる間は、人間の女性につきものの生理的周期も現れないのですが、マガダから出て生理を迎え、そのまま戻ってくると、ずっとそれが続いてしまうのです。 この時の荒れ方は凄まじく、他の天使たちに当たり散らすだけでは飽き足らず、弟アシューラの試作した気象制御兵器を勝手に動かして世界中に大洪水を起こし、多くの人間の命を奪ったり、他の天使に迫ってみたり、とんでもないことを繰り返したので、皆呆れていました。
不思議なもので、この放埓な行動は、夫イスラフェルとともにマガダから出て2年間暮らした時に、双子の男女の天使、シャムシェルとレリエルを授かると嘘のようにおさまりました。 しかし、やはり人間であることが寂しかったのか、母トゥーラ、サクヤ、ツィンツン、そして兄弟姉妹たちも皆死んでしまった後は、時々こっそりレムリアやヒンダス、スメルなどに出かけて一人でぼーっと過ごしていることも多くなりました。
彼女は、不老不死でしたが、他の天使のようなテレポート能力は持っていませんでしたから、ヒンダス出身で母トゥーラと同じくレムリア王妃であったツィンツンが、天空の女神アーディティーの血により受け継いだ、大いなる神々の遺産である空飛ぶ戦艦ヴィマーナ・ウシャスのレプリカを弟のアシューラに作ってもらって、母の名前をとってヴィマーナ・トゥーラと名付け、愛用していました。 そして彼女は、時々訪れる人間世界では、空を飛んでくることとその不変の美貌から「天の貴婦人」と呼ばれていたのです。
夫イスラフェルを始めとした天使たちは、一人で出歩く彼女を心配し、護衛のためにシユウ、フワワ、ニドヘグ、ヴリトラの4体の怪物を作って付き従わせていました。 時として荒野で一人で眠る彼女に、その美しさゆえ襲いかかって思いを遂げようとする男達もいましたが、4体の怪物たちは容赦なく鉄槌を振るい、アスタルテを襲おうとした男たちを、誰一人生きて帰すことはありませんでした。 そのために彼女は、「天の貴婦人」とともに、「残忍で淫蕩な女神」とも呼ばれることになってしまいました。
彼女の行動自体は、義母ツィンツンが、父ミドの死後、ヴィマーナ・ウシャスで世界を巡ったのと似ていました。 夫ミドが死ぬ時、無敵の戦艦ヴィマーナ・ウシャスの主人である彼女にだけは、気に入った相手が居れば再婚すればよいと勧めていたのですが、結局ミド以外の人間と再婚する気は愚か抱かれる気にもなりませんでしたから、彼女は世界中の英雄たちの良き友人、良き理解者として余生を送り、最後は故郷インドラに戻って、ヒンダス王妃となった娘ニンリルに看取られてひっそりとこの世を去ったのです。 主人を失ったヴィマーナ・ウシャスは、自らの意志でヒンダス北部の山村クジャラートにあったシェルターに戻り、再び主人となる人間が現れるまでの長い眠りについたままでしたが、天使アシューラは、太古の天空の女神アーディティーの遺産と言われるそのシェルターとウシャスを研究し、姉である彼女のためにレプリカを作ったのです。 しかし、天使の持つ超越的な科学力を持ってしても、宇宙から来たと言われる神ミケーラが、妻ウシャスの心をコピーしたと言われるヴィマーナ・ウシャスの複雑怪奇な感情思考回路を純粋に機械で再現することだけはできませんでした。 その代わりにアシューラは、脳細胞に似た働きをする細胞を創造して機械の代用とし、生きた機械を作りあげたのです。 彼女の護衛役の4体の怪物たちにも同種の細胞が使われていましたが、大きさの制約とアシューラの妻ビャッコの機能デザインにより、個性的な反面知能的にはかなり劣るものになっていました。 その点、アスタルテが母の名を付けたヴィマーナ・トゥーラの思考回路は、本当に超越的なものであり、最初は幼児程度からスタートしたものの、学習能力を発揮して製作者のアシューラに匹敵する思考能力にまで進化していました。 これには製作に当たったアシューラ夫妻も驚いたのですが、もっと驚くべきは使用者となったアスタルテの教育で、母の面影を求め、彼女の言動や感情の表現方法の模倣まで要求したため、モデルとなったヴィマーナ・ウシャスのように、大変人間的な、奇妙な自律思考機械ができあがりました。 何しろその日の気分まで思考に反映させるのですから、アスタルテ自身の激しい性格と衝突して、親子喧嘩を再現しているようなこともありました。 夫イスラフェルやアシューラ夫妻は、そんな彼女とヴィマーナ・トゥーラのやりとりを、呆れながらも微笑ましく見守っていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 5, 2019 06:42:42 PM
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