テーマ:ワイン大好き!(30915)
カテゴリ:ワインプローベ
友人宅で何本かワインを開けた。
トリーアの町外れにある古いアパートの屋根裏部屋で、磨り減った木製の階段を5階にある彼らの部屋まで上る途中の窓ガラスに淡いブルーやピンクの色ガラスがパッチワークのように使われていて、柔らかい光が差し込んでいた。それは昔懐かしいような、時間の流れが数十年停まったままのような趣があった。 「とりあえず、これでも飲んでいて。今リゾットを作るから」と、玄関脇のキッチンでオリバーはみじん切りのたまねぎをバターで炒めながら言った。彼は料理が得意らしく、奥さんのニーナのハートも手料理で射止めたという。 2010 ジルヴァーナー・ヴァイスブルグンダー トロッケン(Schloss Sommerhausen/Franken) 控えめな酸味、たっぷりした口当たり、軽くクリーミィなテクスチャーに乳酸発酵のヒント、フレッシュな洋ナシのすっきりした果実味、スパイシーなミネラルの刺激。ほどほどに飲み応えもあり、デイリーワインとしては申し分なし。 「アルディで買ったんだけど、悪くないよね」とオリバー。大手ディスカウンターのアルディは時々著名醸造所とコラボしてワインをリリースすることがある。数年前、バーデンのフリッツ・ケラーとコラボを始めた時は話題になったが、これはフランケンのシュロス・ゾンマーハウゼンとコラボしてリリースした辛口白で、確か7ユーロ。妥当な価格だろう。 2010 ブラウネベルガー・リースリング・トロッケン (Weingut Martin Pr?m/Mosel) プリュム醸造所はJ.J.プリュムとS.A.プリュムが有名だが、このプリュムは聞いたことがなかった。ゼルバッハ・オースター醸造所の栽培責任者が実家で醸造しているのだという。 非常にフレッシュで細かな気泡が立っている。ステンレスタンクから直接試飲しているような未完成のワインで、もぎたての洋ナシ、フレッシュな青リンゴの溌剌としたアロマに、軽く青臭い苦味の混じる酸味とミネラル感。酸はアタックには目立たないが余韻に残る。半年くらいして落ち着いたころにはかなり良くなっていそうな予感。 2006 カーゼラー・ニーッシェン 、リースリング・グローセスゲヴェクス(Weingut von Beulwitz/Ruwer) VDPと異なりこの生産者の加盟するベルンカステラー・リングではハルプトロッケンでもグローセスゲヴェクスになる。グローセスゲヴェクスは醸造団体の独自基準による格付け畑からの高品質な辛口系ワインの格付けなのだが、どうもややこしい。 このワインにしても完熟から過熟ぎみのアロマにマイルドな酸味の2006年産らしい味わい。アプリコットに桃の甘みがあり、華やかで香り高くミネラル感も上々なのだが、やや深みに欠ける気がする。もっとも、それは私の部屋という室温20度を越す熟成環境に恵まれなかった影響もあるかもしれない。辛口ではとくに、繊細なニュアンスが失われる傾向があるように思う。 2008 ピースポーター・ゴルトトロプヒェン、リースリング・カビネット(Weingut Reucher-Haart/Mosel) ロイシャー・ハート醸造所にはここ数年ご無沙汰しているが、オリヴァー達が先日行った時も相変わらず親切な醸造家親子だったという。そういえば、息子のマリオ・シュヴァングは醸造家達が結成したサッカーチーム、ヴァインエルフのメンバーだとか。 快適な飲み口の甘口で軽く繊細、熟したリンゴや西洋すぐりの綺麗な甘みと調和するフレッシュでほどよい酸味。 2000 シャルツホーフベルガー・リースリング・シュペートレーゼ (Weingut Van Volxem/Saar) 私の思い出の一本。ファン・フォルクセン醸造所を現オーナーのローマン・ニエヴォドニツァンスキーが1999年末に購入して、初代セラーマスターのゲルノート・コルマンと一緒に初めてリリースした2000年産。 ファン・フォルクセンは今はシャルツホーフベルガーからは辛口しかリリースしていないが、当時はシュペートレーゼの甘口もあった。確か一本9Euroだったと思う。6本注文したら、オーナーが自ら配達に来たので驚いた。アパートの玄関まで受け取りに出たが姿がない。「ニツァンスキーさん?」と呼ぶと階段の上の方から「あ、下でしたか」と大またで飛ぶように降りてきた。部屋番号が3から始まるので3階だと思ったという。そそっかしいが、当時のエネルギッシュさは、あれから10年過ぎた今も変わっていない。 このボトルも部屋に置いておいたのだが綺麗に熟成していた。まだ若さの残る魅力的なフルーツの甘み(アプリコット、桃)と角のとれたチャーミングな酸味、繊細な白い花の香りが漂い、少しも色あせていない。甘口だからというだけではなく、シャルツホーフベルガーという葡萄畑のポテンシャルも寄与している。そして初めての収穫に対する醸造家の熱意も作用していたに違いない。 1977 ユルツィガー・ヴュルツガルテン、リースリング・カビネット(Weingut Karl Erbes/Mosel) カール・エルベス醸造所もロイシャー・ハート醸造所と同じくらいとても親切な醸造所だ。オリヴァーが先日醸造所を訪問した際、自分の誕生年のワインを売ってくれないかと聞いたら、これなら、と売ってくれたという。 コルクは既に乾いてオープナーを刺そうとしたらストンと首の奥に沈んでしまった。ソムリエナイフのコイルの先を慎重にひっかけて、なんとか抜き出し事なきを得たものの、残念ながらブショネだった。ほっそりとした果実味に乾燥したグレープフルーツのヒント、甘みはやや枯れて、湿って黴臭いコルクの臭いも明瞭だが、飲めないこともない。 炒めたアンズ茸とマッシュルームにパセリとパルミジャーノをたっぷり混ぜたオリヴァーのリゾットは大変美味であった。奥さんのニーナはこの秋から博士論文を書くために母国アメリカに帰り、冬にはオリヴァーもグリーンカードを取得して移住するという。 二人に幸多からん事を祈る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/07/22 08:17:32 AM
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