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2006年09月16日
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カテゴリ:最近読んだ本
私が尊敬できる数少ない国会議員のひとりに、佐藤道夫さんという方がおられる。
もともとは検察畑の方で、検察官として永く活躍された後に二院クラブ(当時)から参議院議員に立候補、
当選を果たしてもう10年以上になる(現在は民主党所属)。

私が佐藤さんのことを知ることになったきっかけに、こんな出来事がある。
もう何年前のことになるか定かではないが、あれは元スケート選手の橋本聖子議員が妊娠したことが呼び水となって、
国会議員の育児休暇(産休だったかな?)を認める法案が国会に提出されたときだったと思う。

衆議院であっさりと可決され、参議院でもおそらく党派を超えて全会一致で可決されるものと見られていた。
というのもこの時期を前後して、確か『男女雇用機会均等法』が施行されて、
ただでさえ男女差別ということに対して、世の中全体がピリピリしていた時代だったからだ。

結果的には参議院でもあっさり可決されたのだが、全会一致ではなく、ただひとり反対した議員がいた。
それが佐藤さんだった。
彼はひとり反対した理由をマスコミに尋ねられ、その時にこのような趣旨の回答をされたのだ。

「もしも将来、女性が総理大臣になるようなことにでもなった場合、何か国家の一大事が起こったとき、
総理は育児休暇中です、などという理屈が通るでしょうか?
こういうことひとつとっても国会議員というのは、一般の職業と比べても極めて特殊な位置づけにあるべきで、
世間一般の『男女平等』という理念を安易に持ち込むべきではないでしょう。」

私の記憶もあいまいなので、文言が大きく違っている部分は有るかもしれないが、
だいたいこういう内容だったと思う。

法案の中身から見ても、これに反対するということは、フェミニストたちや女性問題に関する活動家、
そして世の中の女性全員を敵に回すようなものじゃないかと思っていたが、彼の主張は実に単純明快で、
尚且つ素直に納得できるものだった。
しかもそれは、『男女平等』という“錦の御旗”の陰に隠れて誰もが見過ごしてしまうか、
よしんば気が付いていても、世間の大きな流れの中であえて反論をするだけの正当性を見出すのが
難しく思えるようなことだった。

そこを彼はきちっと押さえていたのだ。

この談話を聴いて、私は目からウロコが落ちるような気がした。
何があっても決してぶれない軸と、確かな目を持った方だと感じた。

佐藤さんが以前から週刊誌に連載していたエッセイをまとめたものが、単行本として刊行されている。
これを読むと、彼の人となりがよく見えてくるような気がする。


検事調書の余白 検事調書の余白  検事調書の余白(2) 検事調書の余白(2)


文体は非常にドライで、さすがに法律を司る人らしい冷徹さがまず感じられるが、その行間の一つ一つには
溢れんばかりの正義感と、彼のそこはかとない愛情を感じることができる。
ただ愛情と言っても、いわゆる「包み込む」様な愛情では決して無く、ある程度突き放しながらも、
遠くに居て見守っているような類の愛情である。

そしてそこにはさすがに法律家らしく、真実を見極める目が曇らないように、
彼なりの「けじめ」を設けているように思える。
その「けじめ」のラインが実に絶妙、というか、誰にも納得できるようなものなのだ。
それこそが、前段にも書いた「決してぶれない軸」というものなのだろう。

そんな「決してぶれない軸」や「誰もが納得できるけじめ」というものを持った国会議員が、
今の永田町に何人いることだろうか?









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最終更新日  2006年09月16日 18時31分07秒
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