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彼女の身体はそこに在るのに、彼女じゃない存在になっている。
ゆらりと彼女の右手が上がり、手の先にエネルギーが渦を巻いて集められているのを感じた。 ばりばりばり! その手から、黒い閃光がアタシに向かって放出された! とっさにかわすが、ものすごい波動が肩をかすめるように流れていった。裕那の身体はいまや連中の人形だった。しかも、彼女の能力を媒体に自分達の力を増幅させてきている。彼女の力+連中の力で、アタシを攻撃してきているのだ。 ばりばりばり! 第2陣が襲ってきた。今度はかわさない。アタシは今までより大きなエネルギーで光を放出した。 ドン! 空間を揺るがし、2人の中間で互いの光はぶつかり合い、キラキラと輝く砂塵のように散っていった。 ! 大きな気配を感じて、反射的に門の方を見た。少し開いているその闇の中から様子を覗っている存在を感じた。肌全体で感じるその気配は、かなりの大物らしい。だが、幸いなことにこれ以上黒い影が出てくる気配は感じない。だとすれば、勝機はまだある。裕那の身体から連中を追い出せばいいのだ。 アタシは気持ちを決めた。利き手を挙げて、思い切り大きなエネルギーを撃った。 と、同時に力いっぱい光を追うように飛び、裕那の身体めがけて飛び蹴りを入れた。 ばしん! お互いの能力がMAXだと知っているからこそ、思い切りがついた。それでも、裕那の身体は音を立てて、肉が弾けるように蹴りの力を緩和し、勢いで後ろへ吹っ飛んで行った。 「はぁーあッ!」 さらにその身体を追って飛び、その身体に蹴りを連打する。 肉人形のように力を抜いた裕那の身体は、蹴りの力で左右に揺れた。一瞬、相棒をこんなにしていいの?という思いが浮かんだが、少しでも相棒を助けるためだと割り切った。 ゆらり。蹴りを一旦止めたら、裕那の身体は小刻みに揺れながらその場に立っていた。 そしてゆんやりとした動きで両手をアタシに向けた。 ドン! 両手から黒の閃光に細く青白い光をまとわりつかせながら、大きなエネルギーを放った。 「鏡円!」 叫んで、エネルギー波を跳ね返すバリヤーを張る。アタシの手の長さ分の距離をあけて、跳ね返った力は相手にその力そのままに返っていく。 ばん! 裕那の身体全体でその力は受け止められ、その身体はノックアウトされたボクサーの如く後ろへ弓なりに飛んでいく。 「あッ!」 思わず叫んでしまった。飛んでいく裕那の身体の先に、大きな黒い穴が開いている! 裕那の身体はその開いた空間の中へ、ゆっくりと吸い込まれるように落ちて行った。 「裕那!」 アタシは思わず手を伸ばしてその姿を追った。 空間への入り口で追いつこうとした瞬間、すうっと空間が閉じてしまった! なんてこと!空間が開いた時、後ろの大きな存在を感じた。嗤った悪意を感じた。 アタシは瞬間睨んで振り向くと、開いた門の中でその存在が嗤ったまますうっと後ろへ下がっていくのを感じた。門はその動きにつれて、ゆっくりと閉まっていく。 なんてこと。こんなこと、今までなかった。もう、門が閉まってしまうなんて。まだ、満月の力があるのに。 それより。裕那はどこに翔ばされたのだろう? なにか、奇妙な音がした。どう言えばいいのだろう…と思った瞬間、ばりばりばり!ドシーン!とすごい音がした。雷が落ちた?いや、雨さえ降っていない。 俺は道具室からドアを開けて、練習場の部室に入った。 「なん…だぁ?」 白い壁が裂け、床まで大きな亀裂が入っていた。しかも。 「おいっ!」 壁と床の境目から、人間の脚が視えた。叫んで近寄る。 裂けた厚い壁の所に、女の子が挟まるように倒れていた。カーキ色のブレザーの制服姿…どこの学校だろう?いや、そんなことより。 「大丈夫かっつ?」 俺は瓦礫の中からその女の子を抱き起した。人形のようにくったりしている。あちこち怪我している。あざもある。血が…。 「きゅっ、救急車…」 慌てて携帯を取りに行き、119番に連絡した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月11日 20時59分23秒
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