体を動かす活動を行なっている時、人は、時の流れがスローダウンしたように感じる
運動中は「時間の感覚がゆがむ」ことが明らかに、最新研究5/25(土) 2024年4月、学術誌Brain and Behaviorに掲載された研究英国およびオランダの科学者からなる研究チームが行なったもの。体を動かす活動を行なっている時、人は、時の流れがスローダウンしたように感じる。この研究は、33人の活動的な成人を対象にして行なわれた。これらの人々は、バーチャル環境を背景にしてリアルな自転車に乗り、1回につき4キロメートルの距離を漕ぐという対照実験に参加した。このバーチャル環境は、参加者が熱心に取り組み、挑戦心をかきたてるように設定されていて、一部には、バーチャルな競争相手が表示される環境もあった。これは、他者の存在を意識することが、時間感覚に影響を与えるかどうかを確かめるためだ。参加者は、エクサイズの前、中、後という3つの異なるタイミングで、時間感覚を尋ねるタスクに回答した。その結果、エクササイズ中には、参加者の時間感覚に有意のゆがみが生じていることが明らかになった。具体的には、時間が伸びるように思える現象が起き、体を動かしているあいだの時間が、実際より長く感じられていたという。さらにこの現象は、バーチャルな競争相手のあるなしに関わらず発生していた。ここから、この時間が伸びる感覚の原因は、他の人の存在よりも、エクササイズという行為そのものにあることが示唆されている。研究論文の主著者の1人で、英国ケント州に拠点を置くカンタベリー・クライスト・チャーチ大学のアンドリュー・エドワーズ教授は、プレスリリースでこう述べている。「我々の研究結果は、健康に良いエクササイズの選択や、楽しさのレベル、さらには、運動のパフォーマンスを最適化するためにはこの知見をどう用いるべきかということに関して、いくつかの重要な含意を持っている」この論文が示唆しているのは、仮に人の時間感覚が人為的に操作可能で、それによって、エクササイズの心理的な負担感や、「運動している時間が長い」という感覚を軽減できるのであれば、定期的に体を動かす活動をしようという人が増え、全体的な心身の健康レベルが改善する、ということだ。例えば、実際より時間が長く感じられるような高負荷の運動については、短時間だけフィットネスのルーティンに組み込むことで、時間の長さを感じずに、長時間のエクササイズの利益を得ることが可能になるかもしれない。加えて研究チームは、エクササイズの最中に時間感覚が変わる過程を解明することで、体を動かす活動をより楽しめるようにするための、新たな戦略を策定するのにも役立つ可能性があると示唆している。これには、エクササイズの習慣を長続きさせる効能も期待できる。「この研究の主眼は、運動に取り組むよう人々を動機づけし、『時間が進むのが遅く感じられる』というマイナスのイメージを、回避あるいは緩和する方法を調査する点にある。時間の流れが遅くなる感覚を、うまく活用することもできるかもしれない」と、エドワーズ教授は述べている。「この研究結果が広く一般に当てはまるかは、まだわからない。33人というサンプルの大きさから言っても、『人間の時間感覚が変化する様子を垣間見る機会が、初めて得られた』というところだろう。また、エクササイズをしているあいだに、さらなるレベルアップを図るための手がかりも得られたかもしれない」