女神たち

まだ　それほど韓国ＳＦを読んでいるわけではありませんが

同じ東アジアの中国ＳＦとも日本ＳＦとも　かなり異なった印象があります

どこがどう違うのと聞かれても困るのですが･･･


本書は　「ダスト」によって多くの人命が失われ文明が崩壊し

人類だけでなく　全地球的に動植物にも甚大な被害を出した厄災から

なんとか抜け出した世界からはじまります

その世界で繁茂している「モスバナ」という謎の植物を調べ始めた主人公アヨンは

その起源が　厄災のさなか　マレーシアの奥地にあった　ひとつの温室にあったことを知ります


その「モスバナ」の秘密と　人類がどのように「ダスト」を克服したかが語られますが

著者が主題とするのは　いかにもＳＦという科学の物語ではなく

その厄災のなかで苦闘した女性達の人生の物語だったのではないでしょうか

極限の状況のなかで　彼女達がぶつかり合いながらも戦い抜いた歴史

それらが　ラストの思いがけなかった感動に繋がりました

女性作家らしい　しっとりしたエモーショナルなＳＦの　好作品でした


『地球の果ての温室で』

　著　者　キム・チョヨプ

　訳　者　カン・バンファ

　発行所　早川書房

　初　版　2023年1月25日

　目　次

　　プロローグ

　　第一章　モスバナ

　　第二章　フリムビレッジ

　　第三章　地球の果ての温室で