女神たち

アイドルが好きで　読書が好きですから　当然の帰結として本書に辿り着きました

高山一美さんの『トラペジウム』　阿部若菜さんの『アイドル失格』に続いての第三段は

松井玲奈さんの『カモフラージュ』です

松井玲奈さんは　交換留学生として　乃木坂46に参加してくださった時からのファンで

SKE48を卒業してからも　女優さんとしてのご活躍から目が離せませんでした

バラエティ番組でもしっかりとした発言をされているので　本書も期待して手に取りました


しかし　巻頭の『ハンドメイド』を読んで　ちょっと保留かなと

彼女がいる男性との関係を続ける女性の物語ですが

そんな女性の心理を理解できない私には　それほど興味を持てなかったのです

しかし２番目の『ジャム』を読んで　ぶっ飛びましたし

その後の４作品を読んで　ストーリーテラーとしての　松井玲奈さんの才能に

すっかり驚かされました　どうしてこんなこと考えられるのかと・・・

芸能人の余技としての作家活動にはとどまらない　可能性を感じてしまいました

第２作も評判のようですから　ほんとこれからの活動が楽しみです


​『カモフラージュ』​

　著　者　松井玲奈

　発行所　集英社

　初　版　2019年4月10日

　収録作品

　　『ハンドメイド』
　　　　彼女がいる男性と関係を続ける主人公　理解や共感はできませんでしたが
　　　　結末は意外でした

　　『ジャム』
　　　　なんだこれ！　仕事から帰ってきたお父さんの後ろに3人のお父さんが・・・
　　　　この怪異に大人になることへの戸惑いが表されているのかとも思いますが
　　　　ダストボックスのおぞましさったら･･･

　　『いとうちゃん』
　　　　憧れのメイド喫茶に就職したものの　体型で悩むいとうちゃん
　　　　業種は違いますが　アイドルさんたちの葛藤にも通じているようで　せつなかったです

　　『完熟』
　　　　少年時代に出会った桃を食べていた女性の官能に囚われている主人公
　　　　それも　人間の心の奥底を提示されているようで　心がざわつきましたが
　　　　そのことに気付きながらも　それに寄り添おうとする奥さんの視点がさらに染みます
　　
　　『リアルタイム・インテンション』
　　　　最近　子供達のなりたい職業の上位にユーチューバーがランクされていることに
　　　　到底納得できない私は　時代遅れの人間かもしれません
　　　　アイドル好きのため　いま流行の「配信」もよく見るのですが
　　　　配信者さんと　無記名の視聴者との関係に　ある種の危うさも感じてしまいます
　　　　松井玲奈さんも　アイドル時代に配信していたと思いますが
　　　　そこに何を感じていたのでしょうか

　　『拭っても、拭っても』
　　　　潔癖性の男性とつきあったために　その世界に巻き込まれてしまった主人公
　　　　他人に合わすことにより　自分を失ってしまう恐ろしさは
　　　　恋愛だけでなく　社会一般のいろんなシーンに存在するのではないでしょうか
　　　　私はそれが苦手です　だから孤独になるのですが・・・