カテゴリ:ラジオ
→関連記事:ラジオのサイマル配信ビジネスに対する分析 radikoの地域制限解除、3月31日から段階的に終了 -関東の放送は4月11日まで全国で聴取可能 被災者向けに地域限定を解除していたRadikoが、元通り地域限定サービスに戻る。 このことに対し、Radikoを非難する声も多いが、元々が、大災害という非常事態で、権利関係者との本来の契約を無視し、事後承諾で始めた地域限定解除だろうから、事態が落ち着いたら、権利関係者との契約通りの配信形態に戻すことは、まともな企業であれば、仕方のないことだろう。 しかし、せっかくなのだから、今回の地域制限解除の経験をしっかり分析した上で、ラジオの将来にとって、地域限定が是なのか非なのかを、しっかり見極めて欲しいのだ。 放送局にとって、Radikoの地域限定が、どの程度意味があるのか考えてみよう。 ラジオ放送には、県域免許というの制度があり、基本、免許がある県内に電波を飛ばし、地域に根付いた広告の収入により、経営を行っている。 電波なので、県境では他県の放送も入る場合はあるものの、この制度があるお陰で、県内の放送電波とそれに基づく広告収入を独占でき、安定した経営が成り立っていたのだ。 以前にも書いたが、この県域免許というのは、あくまで電波で飛ばす放送についての免許であり、これをCATVやインターネットでサイマル配信する場合に、別に県域免許のエリアを守らなければならない、という法律があるわけではない。 なので、Radikoに参加すべきかどうか? あるいは、地域制限をかけるかどうか?というのは、放送局にとってどっちが得か?という経営判断にしか過ぎない。 例えば、FM東京は、電波免許としては、東京都のみである。 しかし、実際のところ、関東一円に電波は届いており、都外のリスナーは多い。 従って、Radikoに参加するに当たって、関東全域に配信エリアを広げることは、何のデメリットも無いと判断するだろう。 では、全国に広げるメリットはどうかというと、これは微妙だ。全国にエリアを広げたからと言って、スポンサー収入が増えるとは思えないのに、配信コストの分担金は格段に増える。エリアを撤廃する代償として、関西などの局が対抗でエリア撤廃すれば、強力が競合相手が増える可能性も出てくる。 局の経営判断からすれば、関東のみの配信と言うのは、現時点では妥当なところなのだろう。FM横浜やbay fmも似たような状況で、ある程度内容に自信があるので、配信を県内に絞るより、他局と競合しても、南関東一円に配信したほうがメリットがあると判断したのだと思われる。 これが、今度参加する茨城放送だとどうだろう? 資金力も番組制作力も弱いし、配信エリアを関東全域に広げても、聴取率も広告収入も増える見込みが無い。 こうした局は、県内限定で配信する道を選ぶほうがメリットが高いため、県内限定でRadikoを開始したのだろう。 しかし、Radikoの配信局やエリアが増えて、そうしたエリア制限の意味がなくなりつつあるのも事実だ。 以前の実用化実験放送の段階だと、関東の広域局やFM東京は、北関東のローカル局に遠慮して、南関東のエリア内のみで配信していた。 しかし、現在は、関東全域で放送されており、茨城放送がRaikoで地域制限しようが、栃木放送がRadikoに不参加であろうが、北関東地域でも、RadikoでFM東京やTBSなどが聞けてしまうのだ。 栃木放送のように、Radikoに参加しない局は論外。負けの始まりでしかない。 しかし、地域制限付きで参加しても、他県の放送が完全にガードできるわけでもなく、既に聞ける他県の局は増えてしまっているのだから、Radiko上での地域制限の意味はどんどん薄くなっている。 この状況が進めば、少なくとも関東の局は、最終的に、関東内は少なくともエリア制限を撤廃する方向に動くのではないだろうか。 では、関東、関西、北海道などの地域間での制限解除についてはどうだろう? これについては、以前、私は、実験的に期間限定で制限解除を行ってみて、それが、自分たちの局の聴取率にどう影響するか、データを取って検証すべきだ、と書いた。 その結果、トータルでラジオを聴く人が増える方向に働き、地元の聴取率は下がらずに、エリア外の聴取者が増える局が多ければ、地域制限を解除した方がメリットが大きいことになるからだ。 何も検証もせず、頭の中であーだこーだ考えては守りに入るより、まずはやってみるべきなのに、動けないRadikoに歯がゆさも感じていた。 ところが、その機会は、東日本大震災という思わぬ形で、計らずも訪れてしまった。 今回行ったRadikoのエリア制限解除は、全国のリスナーのアクセス分布という貴重なデータを提供してくれるはずだ。 せっかくこの一月、地域制限を外したのだから、この間のアクセス統計情報をしっかり分析して、地域制限撤廃はありなのか、なしなのかを、しっかり検証して欲しい。 リスナーの立場から言えば、ほとんどの人は、地域制限撤廃に賛成だろう。 私も、故郷である、大阪の放送が聞きたい。 だから、あとは、放送局の発想の転換と決断ができるかどうかだ。 数%しかいないリスナーの聴取率を、各局で取り合うことに血眼を注ぐのか、それとも、数%しかいないラジオリスナーをもっと増やそうという大胆な発想が持てるのか。 ここ一年、Radikoを核として、ラジオ各局の真価が問われるだろうな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年04月10日 15時26分24秒
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