胆道閉鎖の娘(その10)
早速、ステロイドの投与が始まった。翌日、非番のはずのドクターの姿がナースステーションに・・・「ウンチ出た?」と、私服のドクター。「まだ、出てません・・・」「そう・・・きょうは、ちょっと他に用事があったのでね」本当は、娘のことを心配して、わざわざ来てくれたんだな・・・そう思った。今後の治療方法や、だんだん現実味を帯びてきた「生体肝移植」についての質問をする。移植には、同じ血液型の、親か兄弟(18歳以上)か祖父母(60歳以下)からが望ましいということだが、該当するのは夫しかいない。しかし、夫は健康診断で、「脂肪肝」と言われていて、移植するには適さない。「今すぐに、というわけではありませんが、もし移植をすることになってもいいように、お父さんがダイエットを始めるのは、お父さんの健康のためにもいいかもしれませんね」ドクターの説明を聞きながら、”私の肝臓を移植できるなら、何も問題ないのに・・・”血液型の違いを恨めしく思う。ドクターがナースステーションに戻って、何気なくオムツを触ってみると、”で、出てる・・・”でも、もし白いウンチだったら・・・考える間にも、体はナースステーションに向かっていた「あの、ウンチが出たんですけど、見る勇気が・・・」「よし!じゃあ、ボクが見ましょう!」ドクターの手元を凝視するだけの私・・・オムツを開いたドクターが「あっ、この色なら胆汁が出てるようですね」またひとつ、ハードルを越えた。