カテゴリ:河合奈保子さん
「相倉久人にきく昭和歌謡史/相倉久人(著)・松村洋(編著)/アルテスパブリッシング/2016年9月20日初版第一刷発行」を持っています。
相倉久人(あいくらひさと)さんはジャズ、ロック、ポップスの評論家で、日本レコード大賞の委員も務められました。松村洋(まつむらひろし)さんは音楽評論家です。 この本のp245~248では「無意識過剰の奈保子」として、河合奈保子さんの事や、奈保子さんのアルバム「デイドリーム コースト:DAYDREAM COAST」が紹介されており、一部を抜粋して紹介します。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 相倉「さらに、その二人(松田聖子、中森明菜)と全然違うパターンのもう一人の人が、やっぱり自己表現に成功しちゃうんですよ」 松村「そのもう一人が、河合奈保子ですか」 相倉「この人ね、音楽的な要素がすごくあるんです。子どものときからピアノを習ってて、自分でピアノ弾きますしね。それで、あるとき、これは音楽業界全体の人がそういうことを信じていなかった時代なんですが、あるアルバムを聴いて、びっくりしました。なんでこんなに歌えるんだろうって。 それは、彼女がロスアンジェルスへ行って録音したアルバムだったんです。アルバムの全曲をTOTOのメンバーが作詞・作曲してます。でも、英語ですからね。そのまま歌ったんじゃアイドル歌謡にならないですよね。それで、竜真知子に頼んで、日本語の訳詞をつけてもらったんです。それをロスアンジェルスのスタジオで、アメリカのスタジオ・ミュージシャンを使って録音したんです。これがね、全然違和感ないんですよ。不思議なほど歌いこなしちゃってる。 だから、これをね、レコ大(レコード大賞)でアルバム賞の候補に推薦したんですよ。すると作曲家協会の先生たちが『ええーっ、奈保子が?』ていってね、信用してくれないんですよ」 「とにかく、見事に歌いこなしています。これは(山口)百恵のロンドン録音ていうのを聴くと分かるんですけどね。百恵の場合、やっぱり違和感があるんです。ちょっとバックと合いませんねえというところがあるんだけど、河合奈保子は平気で歌いこなしている。じつはこのアルバム、途中からアルバム・プロデュースにも彼女、かかわってるんですよ。そういう力の持ち主なんです。 松村「じゃあ、そのⅬA録音アルバム『DAYDREAM COAST』の中から、デイビッド・フォースターとのデュエットを聴いてみます」 河合奈保子/David Foster 「LIVE INSIDE YOUR LOVE ~あの夏をもう一度~」 詩・曲=David Bryant/Tony Haynes/(日本語詞=竜真知子)1984(昭和59)年 松村「えー、これは山口百恵にも松田聖子にも歌えないですねぇ」 相倉「歌えない。この歌いこなしはすごいですよ」 松村「これって、自己表現の時の”自己”っていう意識が、やっぱり松田聖子なんかは濃いと言うか強いけど、河合奈保子はそれが薄いからできるんじゃないでしょうかね」 相倉「だから無意識過剰そのままなんだよ(笑)。自然に自分を表現できちゃう。別の言い方をすれば、要するに歌唱力のすごさでもって、どんな曲をどんなコンディションでも歌いこなせてしまう」 相倉「明菜の場合は、書くほうが明菜の世界に合わせて書くんだけど、今度はこれをやらせてみようっていう気にならなくなっちゃうんですね。それで作家がくるくる変わっていく。それなのに、どんどん明菜自体が出てきてしまう。作家人が意図するしないにかかわらず、引きずり込まれて明菜の世界をつくってしまうようなところがあるわけですね」 松村「それに対して河合奈保子は?」 相倉「河合奈保子は、何にも作らない。ふっと、意識しないで自分の世界を歌えてしまう。ちょうど松田聖子の裏返しですよ。何も計算しないで歌えてしまうというね。だから極端に言うと、なぜ歌えちゃうのか、自分でもわかってないんじゃないかという感じすらしますよね」 相倉「このまったく違う三人、頭のいい聖子と難しい性格の明菜と無意識の河合奈保子で三角形を作ると、その後に登場してきたアイドルっていうのは全部その三角形の中のどこかに収まるんですよ。例えば、小泉今日子は、この三角形の上の方のちょっと聖子寄りのこのへんかな、とかっていうふうに位置づけられる」 松村「ちょっと河合奈保子とは遠いかなとか」 ーーーーーーーーーーーーーー 第26回日本レコード大賞(1984年12月31日)ですが、河合奈保子さんはアルバム「デイドリーム コースト:DAYDREAM COAST」で優秀アルバム賞を受賞しました。 同時に奈保子さんは、シングル曲「唇のプライバシー」でも金賞を受賞しています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ↓「相倉久人にきく昭和歌謡史/相倉久人(著)・松村洋(編著)/アルテスパブリッシング/2016年9月20日初版第一刷発行」 ![]() ![]() ↓ P8 「無意識過剰の奈保子」 ![]() ![]() ![]() ↑ P247。河合奈保子/David Foster 「LIVE INSIDE YOUR LOVE ~あの夏をもう一度~」を収めたアルバム『Daydream Coast』(コロムビア) ![]() ↑ 河合奈保子さんのアルバム「デイドリーム コースト:Daydream Coast」。 ↓ リブ インサイド ユア ラブ : LIVE INSIDE YOUR LOVE. ![]() 詩・曲:デビッド・ブライアント / トニー・ハイネス 編集 ババ・ジョネス・ブル。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() (ドラムス)ジェフ・ポーカロ、(バス)マイク・ポーカロ、(ギター)マイケル・ランドウ、(アコースティックギター)エリック ブリング、(キーボード)デビッド・フォースター、(パーカッションズ)パウリーニョ・ダ・コスタ、(バックグラウンドボーカルス)フィリーズ・セント・ジェームス、マクシー・アンダーソン、リサ・F・ロバーツ、(ストリングス)ジ・アッサー・ドロリ・ストリング・アンサンブル、(ミュージックコントラクター)ジョン・ローゼンバーグ。 【訳詞:竜真知子】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.10.13 05:49:19
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