カテゴリ:ある女の話:カリナ
今日の日記1(期待を裏切る映画「ターミネーター4」「MW-ムウ-」感想☆)
今日の日記2(親として「特上カバチ!!」「龍馬伝」の感想☆) 「ある女の話:カリナ105(私の運命3)」 私は目を疑った。 コレは夢? 「赤木くん…?」 いや、そんなはずは無い。 似てるけど、違う。 それに、若い。 そして、隣にいるマッシーは、 確かにマッシーだけど、歳を取っていた。 みんな、やっぱり驚いた!って言って笑った。 「お母さん、 え~っと、この人はキジマさん。 何て言ったらいいんだろ…。」 ユウトにキジマって言われた若者は、 真っ直ぐに私を見てお辞儀をした。 その姿が、誰かを思い出させた。 「キジマさんは、俺のバンドと対バンして知り合ったんだよ。 でもって、初めて見た時にすぐ赤木さんソックリだと思って。 ほら、赤木さんのライブ録画してたやつ、 子供の頃見せてもらってたでしょ? 俺、アレで赤木さんに憧れて、ギターやってみたいってきっかけになったから。 それで、ねーちゃんがライブ見に来てさ、 そしたら、気付いたら二人が付き合っててさ。」 そこで、マナはユウトに余計なこと言わないでよ!って、 ユウトの肩を恥ずかしそうにペシっと叩いた。 痛っ!ってユウトが笑いながら言った。 マナが照れくさそうにキジマくんの隣に並んでいる。 私はノボルの顔を見た。 信じられる? 赤木くんが言ったことの未来が、 まるで実現したかのように、二人が並んでいるなんて。 ノボルが何を言いたいのか、 その表情を見てわかる。 キジマくんは、親の前でバツが悪いのか、話を元に戻すように言った。 「写真を見せてくれたんです。 結婚式の時の。 そしたら、それがホントに俺にそっくりだったから驚いちゃって…。」 その声が、 しゃべり方が、 赤木くんソックリだったので、 私の方が驚いている。 ノボルも多分、かなり驚いていると思う。 目がうるんでいるのがわかった。 「でも、それより驚いたのは、何て言うか… スギモトさんの若い頃が写ってたから。 どうみてもスギモトのオバちゃんだよな~って。」 オバちゃんって言ったことに、あ、すいません!って一応キジマくんは謝って続けた。 「それをマナ…マナさんに話したら、 スギモトさんに会いたいって言うから。 俺、事情聞いて、バイトしてたところまで二人を連れて行って…。 話したら、来てもらえて…」 そこまでキジマくんが説明している間、 マッシーはずっと私を見ていた。 そして、泣いていた。 「マッシー、来てよ…」 マッシーは頷いて、私の方へ来た。 私は手を差し出して、 おずおずと出されたマッシーの手を握った。 「今、スギモトさんなの…?」 泣きながら、マッシーは頷いた。 「イケダ先生に会ったよ…。」 その言葉に、マッシーの顔色が少し変わったような気がした。 私は大丈夫という意味も籠めて、手を握りしめた。 「偶然デパートでね。 この子が小さい頃に。3歳くらいだったかな… 先生ね、もう許すって言ってたよ。 幸せになっていいって…、言ってたよ…。」 マッシーは、更に涙を流して、ハンカチで抑えながら頷いた。 私も泣いていた。 「私に会えたら… イケダ先生が幸せだってこと、伝えて欲しいって… だからもう…いいって… だから、ずっと、私、マッシーに…会い…たくて、伝えたくて…」 私とマッシーはお互い抱き合っていた。 落ち着いたら、少し恥ずかしかったけど、 みんなもちょっと、もらい泣きしてるのが見えた。 たまたま同室の人たちが、 退院や一時外泊で、誰もいなくて良かったと思った。 それでも私は恥ずかしくなってきてしまった。 「何だか感動の御対面みたいになっちゃったね~」 私が言うと、 もらい泣きしていたみんなが、笑い出した。 「マッシー、話したいことが沢山あるの。 私、ここを出たら温泉に行きたいな。 マッシー、いっしょに行こうよ?」 行って、いい?って、ノボルの顔を見たら、 ノボルがうなずいていた。 「うん。カリナ。 行こう!絶対に! 約束だからね。 話したいことが沢山あるの。 キジマくん…赤木くんにソックリでしょ? 彼を見た時、すぐにカリナに話したいって思った… 思ってたよ… でも、もう会っちゃいけないって、 許されちゃいけないって…思ってたんだけどね…」 マッシーはまた泣き出してしまっていた。 私はマナとユウトを見た。 いつの間に、 こんなに二人は大きくなったんだろう。 私の代わりに、 私がしたかったことをする…。 保育園に預けてしまったせいで、 私はオムツはずしの大変さを知らない。 保育園の先生やユウがとても感動していたけど、 その感動を私は知らない。 きっと初めて言葉を話してくれた時のように、 感動するんだろう…と、 推測するしかなかった。 小学校に入った時には、 専業主婦のお母さんたちのように、 学校へお手伝いに行けることが無く、 そのせいで情報にも疎かった。 何度、マナやユウトのことを、 自分の子供なのに他の人から報告されただろう。 それらのことがどんなに悔しかったか。 それでも、私は育児で、いろんな人に助けられてるって、 ありがたく思いながら働いてきた。 会社で嫌なことが起こる度に、 マナとユウトの笑顔に疲れを癒されて、 この子たちを犠牲にしてまで働く意味って何だろう?って、 思うことも度々あった。 仕事にやりがいや楽しさを感じつつも、 いつも、頭の片隅にはマナとユウトへの心配があった。 子供を育てるにも生活のためにも、 働かなければならないって自分に言い聞かせても、 本当にこれで良かったのかな?って、 マナとユウトの気持ちがわからないと思った時には、 後悔してしまうことが何度もあった。 もっと他の道も選べたんじゃないか?って。 けど、 こんなにも、ちゃんと彼らは育っていて、 成長してくれていた。 少なくとも、 私が喜ぶようなことを、推し量って行動してくれる子供になっていてくれた。 こんなふうにしてもらえるようなことを、 私はしてこなかったかもしれないのに…。 「ありがとう…」 私はマナとユウト、 そしてキジマくんに、お礼をした。 恥ずかしいけど、泣きながら。 ノボルが、ティッシュを渡してくれた。 自分も泣きそうになっているくせに。 本当は、もっともっと、いろんな言葉を伝えたいけど、 これだけ言うのがやっとだった。 これから先にだって、 いろんなことを伝えたいのよ…。 こんな幸せな出来事が起こるなんて、 やっぱり人生何が起こるかわからない。 良かったと思った。 私は生きてきて本当に…良かったと思った。 前の話を読む 明日は最終回です 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年02月15日 22時37分40秒
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