テーマ:最近観た映画。(40124)
カテゴリ:映画(さ)
今回の一言 戦争がもたらしたものとは...。 2012 オーストラリア、ドイツ、イギリス 戦争、ドラマ 監督 ケイト・ショートランド Cast サスキア・ローゼンダール カイ・マリーナ ネレ・トゥレープス ミーカ・ザイデル アンドレ・フリート ストーリー バイエルン州の都心部に住む14歳のローレは、妹リーゼル、双子の弟ギュンターとユルゲン、そして生まれたばかりの赤ん坊ペーターと母と父と幸せに暮らしていた。 1945年、春。 ナチス将校であった父はある日、突然帰宅するとすぐに荷造りをする様家族に話す。 父は仕事の重要書類を全て燃やし、家族は少ない荷物でバイエルン州郊外の田舎町シュヴァルツヴァルトへと向かった。 そして一軒の小さな家に辿り着くと、父は仕事だと言って去っていった。 しばらくここで暮らしていたが、母はある日、様子を見に都心部へと向かった。 その夜、ボロボロの姿になって帰ってきた母は「総統は死んだ」とローレに話す。 そして母はまた身支度を整え、都心部へと向かっていった。 ローレは母も父ももう戻らない事を悟った。 今住む家の持ち主であり農家でもある隣人に金を払い食料を分けてもらいながら暮らす子供達だったが、やがて金が底を尽きてしまう。 そしてギュンターは腹が減りすぎてとうとう牛乳を盗んでしまい、子供達は借りていた小屋を追い出される事になる。 母が戻らない場合、ハンブルグにある祖母の家に迎えと言われていたローレは妹弟を連れ、ハンブルグを目指すのだった...。 感想 (がっつりネタバレします) 製作国はオーストラリア、ドイツ、イギリスと合作なんですが、ひじょーにヨーロッパ作品らしさがあります。 日本作品にも見受けられる「静」の描写で、セリフが少ないです。 とても詩的な作品で、叙情的です。 ドイツというとどーしてもユダヤ人の大量虐殺の事に目が行きがちで、日本と同じ敗戦国であるドイツのその後、ドイツ人達のその後についてはいまいちピンと来ませんが、こんな感じなんですかね~? 日本に置き換えて考えてみると「火垂るの墓」や「後ろの正面だあれ」の様に、末端の子供達まで戦争が浸透していたのに、ローレ達は父がナチスの将校だからかずいぶん裕福ですね。 それともあの当時のドイツ人は、あれが普通なのか? ほかの作品でも戦時中のアメリカも日本に比べてかなり裕福ですし、イマイチ戦争映画というのは、国によって描写が異なるのでピンと来ませんね。 ただローレがユダヤ人を差別するのはそう教育されたので仕方がない気がしますが、手縫いでなく買った綺麗な服を着て「飢えてます」と言われても、そりゃ助けてあげられないよ、とも思います。 周りの人々の方が貧しそうですからね。 また性的な描写も多く、これが女性監督らしい視点なので、とてもエロティックですが、男性が好む様なものとは違います。 そこはそこで高評価なんですが、そのせいでよく分からない部分も多々。 まず母が「総統は死んだ」と語った日、彼女の身に何が起きたかよく分からないです。 子供達の視点から描いた作品なので、それで良いっちゃ良いんですが、感じ的にはレイプされています。 一体都心部はどんな事になってるのか? そしてトーマスとの出会いですが、私が想像してたものとは全然違ったので、こいつ何で付いてきてるのか?と謎。 その前の描写でも出会ったあの家では女性が死んでいました。 レイプされたであろう痕跡もありました。 虫がたかっていたのでかなり時間が経ってるでしょうから、トーマスではなさそうですが、セリフがないのでよくわかりません。 そして重要なのは旅の途中の性的描写。 私が解釈するに、トーマスは初め単純に性的な気持ちで付いてきた。 しかし彼女が妹弟、赤ん坊を連れ、金品を支払いながらなんとか食いつないでるのを知る。 興味を持って付いてきて、やがて行動を共にするがまだ性的な気持ちもある。 そのうちにそれ以外の気持ちが芽生える。 なのでローレの方から真意を知る為に誘ってみたが、彼は拒否る。(でもローレも複雑な気持ち) お互い大切に思う頃に、彼は消える。 なぜなら正体がトーマスではないから、と解釈しました。 しか~~し!! ここで問題なのはラストシーン!! ローレの着替えで太ももまで足を覗かせるシーンがあるのですが、彼女の足はまるで道中散々男達に乱暴されたかの様にアザだらけなのです。 明らかに沢山歩いたからという感じではないのです!! しかも映し方が冒頭の母の足の映し方に似ているのです。 母にも何が起きたかは描かれてませんが。 はて?このアザはどこで? もちろん描写はありません。 このアザの描写のおかげで、これまでの解釈が崩れてしまったのです。 どこからかわからないが、もしやトーマスにヤられていたのではないか? しかし彼なしでは目的地にたどり着けず、みんな飢えて死ぬかもしれない。 もしくはドイツ人の現状を見て、妹のリーゼルも酷い目に合うかもしれないと考える。 弟達はトーマスに懐いている。 無垢な子供達に真実を話せない。 やがてローレに歪んだ愛が芽生えてしまうと。 ちなみにローレから誘って拒否ったのは、トーマスがドSで暴力的なのが好きだから。笑 それを象徴するかの様に、ローレはストーリーと共に傷が増えています。 トーマスはトーマスで何か目的があって、それを達成したので汽車を降りローレ達は解放。 汽車を降りる際、何か耳元で打ち明けてる様にも見えましたしね。 そもそも身分証ないのになぜローレ達は汽車を降ろされなかったのかもわからんし。 話が全然変わっちゃいました!! ( ̄□ ̄) とにもかくもとりあえずトーマスはユダヤ人、そしてドイツ人がしてきた事を知り、ドイツ人達への風当たりの強さを知り、ドイツがソ連やアメリカの領土として分けられてるのを知り、戦火を逃れたドイツ人達が未だにヒトラーを盲信しているのを知り、ローレの価値観も世界観も全て変わってしまいます。 あのバンビはとても印象的で、力なきか弱い者つまり自分達を表してると考えます。 しかしそんなものは旅の間に全て壊れてしまったのです。 戦火を逃れた現実を知らない祖母の言うことなど聞いてられるか!!と。 ご飯を食べられるかどうかも分からず、飢えかけた事もある子供達にとって、食前のマナーやらお祈りなんかどうでも良い事なのです。 ラストシーンはよく伝わってとても良かったと思います。 しかしユダヤ人とドイツ人の心の交流を描き、それまでの価値観が変わる話だと考えていた私にとって、実際はだいぶ理解に苦しむ作品だったと思います。 この女性的な性的表現はつまり男性の好むものより、想像を膨らませる必要があるわけです。 直接的なものがない。 だからわからなくなってしまったのです。 ちなみに風評では私の様な解釈は見受けられず、ってゆーかあのシーンは話題にも上がってないので、さっぱり分からないです。 いずれにせよ、ドイツ人達の戦後の状況を知るには良かったと思います。 世界観が変わる過酷な旅だったと思います。 解釈の正解は分かりませんが、これは決して綺麗なだけの話ではないと感じます。 目を見開いて観るべし! my評価6点(10点満点中) 概要 原作はイギリス人作家レイチェル・シーファーの小説「暗闇の中で」。 「暗闇の中で」は三部作で構成されており、戦前の「ヘルムート」、戦後の「ローレ」、現代の「ミヒャ」と分かれている。 今作はその中の第2部「ローレ」を原作としている。 またローレの生まれ育った家はバイエルン州内としか分からないが、都心部ミュンヘンだと思われる。 また引越し先のシュヴァルツヴァルトから祖母の住むハンブルグへは約900kmもあり、ドイツの端から端へと横断するほどの距離である。 第85回アカデミー賞外国語映画賞に出品されている。 さよなら、アドルフ [ サスキア・ローゼンダール ] さよなら、アドルフ さよなら、アドルフ■監督:ケイト・ショートランド//ザスキア・ローゼンダール/カイ・マリーナ■(2012) キノフィルムズ■【DVD】【中古】【ポイント10倍】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画(さ)] カテゴリの最新記事
|
|