歴史の爪痕
ビラセカは音楽学校があり毎週通った町だが、お世辞にも面白い街とは言えない。他の町とは離れて野原の中に孤立しているという印象だ。しかし、周辺のリゾートや石油化学コンビナートのおかげで財政的には潤っている。だから市立音楽学校に立派なホールが併設されているのだろう。今回見た教会は元は要塞だった。中世、イスラムがイベリア半島を支配していた頃ここはちょうど支配地域の境界線で、誰もいない空白地だった。頻繁に衝突や紛争が起こる土地には危なくて住みたくないだろう。さらにサラセン人の海賊の略奪なども多く、再植民化が困難だった。勝手な想像だが、この一帯が何か寂しげなのはそのせいではないか。5百年前のことではあるが。