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January 28, 2023
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エピソード 45

 日付は少し戻って、藤森が美月に救出され、飲み明かした翌日。藤森は後輩の車で詩織の実家にやってきた。インターフォンを推すと、すぐに玄関の扉が開き、泣きはらした詩織が飛び出してきた。藤森は、そんな詩織をしっかりと抱きとめると、詩織の顔をしっかりと眺めた。

「すまない。随分心配をかけてしまった。」
「…」

 詩織は、止まらない涙をそのままに、自分のおでこを藤森の胸板に押し付けて頷いた。

「あのぉ。マンションまで送ろうか?それとも、僕は帰った方がいいかな?」
「あ、ごめんなさい。それと、先日はありがとうございました。すぐに準備してきます。」

 詩織が家の中に飛び込んでいくと、美月は「いい子だねぇ」とつぶやいた。

「気を落とすなよ。教授にもミスターKに連絡してくれるように頼んでいる。きっと大丈夫だ」
「ん、そうだね。」

 詩織が準備を整えて戻ってきたので、美月は二人をマンションまで送り届けて、自身の部屋に戻っていった。ゴーチエから連絡が来たのはそのすぐあとだった。

 
 二か月後、藤森は無事に結婚式を挙げ、新生活をスタートさせた。そして、1年が過ぎ、美月の結婚式当日になった。

「志保、ホントに大丈夫なの? あんたフランス料理なんて作れるの?」

 志保の母は、最期まで心配そうだ。

「お母さん、司さんは私の手料理がおいしいって言ってくれるのよ。そんな背伸びした料理は作らないわ」
「美月君、君の美貌ならきっとモテるだろうけど、どうか、娘を見捨てないでくれよ!」
「はい。大丈夫です。僕が、頭を下げて結婚してほしいとお願いした女性ですから。落ち着いたらうちにご招待します。彼女の手料理、一緒に堪能しましょう」

「しゃ、社長~、どうかお幸せに!三田村さん、わがままな社長だけど、よろしくね。だけど仕事にはすぐに復帰してね。待ってるよ」
「榊、もう少ししたら神谷君も戻ってくる。しばらくの辛抱だよ」
「ええー、それって、彼女を復帰させないつもりですか?」
「まあ、そこは、彼女次第かな」

 言いながら、そっと後ろ手に志保の手を握る美月を、榊は見逃さない。溺愛かよ、と心の中でつぶやいた。

 式場のスタッフが声を掛ける。

「そろそろお時間です。新郎新婦はこちらへ。他の皆さんは会場へどうぞ」

 厳かな音楽が響き渡る中、二人は祭壇へと上がっていく。そっと横を見れば、藤森夫妻がしあわせそうに見つめ合っている。自分たちの時のことを思い出しているんだろうか。その横には、おくるみに包まれた赤ん坊を抱いた冴子と奥平が微笑んでいた。

 誓いの言葉を告げ、教会を出てくると、参列者からのライスシャワーが待っていた。
そして…

 式場の上空に一台のヘリコプターがやってきた。屋上に降り立ったと思ったら、ものすごい勢いで誰かが走ってくる。
 美月は思わず志保を庇って身を固めた。

「つーかーさー!おめでとう~!」

 目の前に現れたのは、数年ぶりに顔を合した両親だった。その後ろから、ゴーチエが手を振っている。

「ゴーチエさんが、ヘリを飛ばしてくれたのよ。ここに居られるのはほんの10分程度だけど、会えてうれしいわ。」
「おい、司!可愛い嫁を紹介してくれないか」

 満面の笑みで迫る両親に、のけぞりながら美月は志保を紹介した。

「あの、よろしくお願いします」
「まあ、なんて愛らしいの。控えめでおしとやかで、司にはもったいないわ」
「うんうん。いい子じゃないか。司、よくやった!志保さん、これからは僕の事をダディって呼んでおくれ」
「あら、ずるいわ。じゃあ私はママンよ。なかなか日本には来られないけど、仲良くしてね」

 二人は志保をもみくちゃに抱きしめて喜んだ。

「美月君のお父さん、お母さん、娘をよろしくお願いします。」
「こちらこそ、私たちは外国暮らしが長く、めったに日本には帰れません。ぜひ、どんどん二人の家庭に顔を出してあげてくださいね」
「では、遠慮なく!」
「ほほほほ!」

 生活スタイルも、風貌も全く違う2組の夫婦だが、あっという間に意気投合している。

「では、そろそろお時間ですので。美月、おめでとう。お幸せにね!」
「ゴーチエさん、素敵なプレゼントをありがとうございます」

 ゴーチエはウインク一つ残して、颯爽と二人を連れて飛び立っていった。

*****

 地下のバーに、目つきの鋭い男が一人、水割りを楽しんでいた。静かに流れるジャズを古びたドアの開く音が遮る。

「おや、久しぶりだね。後輩たちはみんな結婚したというのに、こんなところでくすぶっていたのかい?」

 声を掛けられた男は、ちっと小さな舌打ちをしながらも、隣に座る金髪のイケおじを止めない。

「大きなお世話だ!それより、体調はもういいのか?」
「おや、心配してくれるとは、君も少しは成長したんだね」

 緑の瞳が探るように男を見つめる。その時、男の携帯が鳴りだした。

「失礼」

 そう言って通話ボタンを押すが、相手からはなにも言ってこない。

「もしもし?どなたですか?」
「う、うう。・・・ ふぅ、ふぃ」

 男は眉間にしわを寄せた。けが人か? それとも、異常者か?横で見ていたイケおじも表情を硬くしていた。

「もしもし、どなたですか?」
「あぅ~あ~」

 突然聞こえてきた聞き覚えのない幼い声に、固まってしまった男を見て、隣のイケおじが噴出した。

「これは、どこかの王子様の仕業だね。ふふ、冴子も大変だ」
「え? どういうことだ。赤ん坊に電話の操作など…」

 信じられないという顔を、イケおじは呆れた様子で眺めた。

「次の世代の能力を過小評価してはいけないな。彼らはきっと、我々よりもっと幼少の時代から、新たなる電子機器を使いこなす。時代はもう動いているんだよ。美月君の開発したUSBとやらも世に出るそうじゃないか。」
「そうか…若い世代は大事にということだな。老いぼれにも分かってもらわないとな」
「なんだね?先駆者を尊敬しないのは、若者の悪い癖だ。まったく、この坊やはいつまで経っても…」

 イケおじは手元の水割りを一気に飲み干すと、バーテンダーに2杯目をオーダーした。それにかぶせるように、男も同じものをオーダーする。

『ああ、また始まったな』

 バーテンダーは苦笑いを浮かべ、それぞれに水割りを渡すと、さっさと冴子に連絡を入れるのだった。


FIN





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最終更新日  January 28, 2023 10:55:29 AM
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